養育費が未払いのまま、「相手に連絡しても返事がない」「勤務先も預金口座も分からない」「裁判所の手続は難しそうだ」と、泣き寝入りしている方もいるのではないでしょうか。
未払い養育費には、給与や預貯金の差押え、住所・勤務先・財産を調べる制度、家庭裁判所から支払いを促してもらう制度、養育費の取り決めを作る調停など、請求・回収につなげる方法があります。
相手の住所や勤務先、預金口座、差押えに使える書面がすべて分かっていなくても、今分かっている情報から始められる方法があります。泣き寝入りしないために、まず9つの方法を知っておいてください。
1.相手の住所が分からないときはどうする?
裁判所から相手へ書類を送るには、原則として現在の住所が必要です。以前の住所が分かる場合は住民票や除票、本籍地が分かる場合は戸籍の附票を取得し、現在の住所をたどれる場合があります。
電話番号などしか分からない場合は、弁護士会照会で住所につながる情報を得られる場合があります。それでも住所が判明しないときは、調査した経過を裁判所へ示し、公示送達で手続を進められる場合があります。
2.相手の勤務先が分かるときは、給与差押えで未払い分を受け取れます
相手の勤務先と、差押えの根拠にできる調停調書・審判書・判決書・強制執行認諾文言付き公正証書などがある場合は、給与差押えを申し立てる方法があります。これらは、誰が誰にいくら支払う義務があるかを公的に示し、差押えの根拠となる書面です。
地方裁判所が勤務先へ差押命令を送り、その命令が届くと、勤務先は差し押さえられた範囲の給与を相手本人へ支払えなくなります。養育費では、税金や社会保険料などを引いた手取り額の原則2分の1までが対象です。手取り額が月66万円を超える場合は、33万円を除いた額まで差し押さえられます。
給与差押えは、未払い分だけでなく、条件を満たせば将来の養育費も給与から継続して受け取れる場合があります。相手が退職した後は、新しい勤務先を調べ、改めて給与差押えを申し立てる方法があります。
3.相手の銀行と支店が分かるときは、預貯金を差し押さえられます
相手が利用している銀行と支店が分かる場合は、その金融機関にある相手名義の預貯金を対象として、地方裁判所へ差押えを申し立てる方法があります。
預貯金差押えで受け取れるのは、差押命令が金融機関へ届いた時点の口座残高です。残高が未払い額に足りないときは、給与差押えや別の口座の差押えを組み合わせて回収を進めます。
給与差押えは継続的な回収につながる場合があり、預貯金差押えはその時点の残高から回収する方法です。勤務先が分かる場合は給与、銀行と支店が分かる場合は預貯金が差押えの候補になります。
4.勤務先や預貯金が分からないときはどうする?
勤務先も預貯金も分からないからといって、相手が自分から教えるのを待つ必要はありません。差押えの根拠となる公的な書面、または養育費の先取特権を証明する書面があり、法律上の条件を満たす場合は、地方裁判所を通じて財産や勤務先の情報を得る方法があります。
財産開示は、相手本人に財産を明らかにさせる制度です
財産開示では、相手を地方裁判所の非公開の期日へ呼び出し、差押えに必要な範囲で給与・預貯金・不動産などを陳述させます。
正当な理由なく出頭しない、宣誓を拒む、財産について事実と違う説明をした場合には、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となることがあります。
財産開示で勤務先や口座が分かった後は、その情報を基に給与・預貯金の差押えを申し立て、回収へつなげます。
第三者からの情報取得では、勤務先・預貯金・不動産などを調べられます
第三者からの情報取得は、裁判所を通じて、市区町村や日本年金機構などから勤務先情報を得たり、指定した金融機関から預貯金情報を得たりする制度です。不動産や株式等の情報を得られる場合もあります。
勤務先情報と不動産情報を求めるには、原則として、その前の3年以内に財産開示の期日が実施されている必要があります。預貯金情報を求める場合は、調べたい金融機関を指定します。得た情報を使い、対象となる給与・預貯金・不動産などの差押えを申し立てます。
5.勤務先の調査から給与差押えまで進めたいときは、ワンストップ執行があります
2026年4月から始まった養育費等のワンストップ執行では、財産開示または給与情報の取得と、判明した給与の差押えを一つの申立てで進められる場合があります。
これまでは、勤務先を調べた後に、改めて給与差押えを申し立てる必要がありました。ワンストップ執行では、勤務先と給与債権を特定できれば、そのまま差押命令の審査へ進みます。
相手の勤務先が分からない場合でも、勤務先の調査から給与差押えまでを一つの申立てで進められる可能性があります。預金や不動産を対象にする場合は、情報取得とそれぞれの差押えを別に申し立てます。
6.父母間の合意書があるときは、養育費の先取特権で差押えを申し立てられる場合があります
2026年4月1日以後に発生する取り決め済みの養育費は、月額や支払日などを明記した父母間の合意書を根拠に、給与や預貯金を差し押さえられる場合があります。これが養育費の先取特権です。
合意書には、父母、対象となる子、子ごとの養育費額、支払期間、支払時期などが明確に書かれ、本人の意思で作られたことを示せる必要があります。
一般の債権者より優先して回収できる範囲は、子ども1人につき月額8万円までです。月額8万円を超える分の回収方法は、合意書の内容と手元の書面に応じて選びます。
2026年4月1日以後に養育費を決めないまま離婚した場合の法定養育費にも、先取特権に基づいて差押えを申し立てる別の方法があります。
7.家庭裁判所で養育費を決めているときは、履行勧告・履行命令で支払いを促せます
履行勧告を申し出られるのは、家庭裁判所の調停・審判や離婚訴訟などで養育費を決めている場合です。養育費を決めた家庭裁判所へ申し出ると、家庭裁判所が未払い状況を調べ、相手へ支払いを促します。
条件を満たす父母間の合意書や法定養育費では先取特権、公正証書では強制執行認諾文言があれば給与・預貯金の差押えへ進めます。これらは履行勧告ではなく、手元の書面に合う回収方法を使います。
履行勧告の申出に費用はかかりません。さらに、家庭裁判所が相当と認める場合には、未払い分を期限までに支払うよう命じる履行命令を申し立てる方法もあります。正当な理由なく履行命令に従わない場合は、10万円以下の過料となることがあります。
履行勧告や履行命令を受けても相手が支払わない場合は、給与・預貯金の差押えを申し立て、相手の財産から未払い分を取り立てる方法があります。
8.相手に支払える収入や財産があるときは、間接強制で支払いを促せます
間接強制では、裁判所が「定めた期間内に養育費を支払わなければ、養育費とは別に間接強制金を支払う」と決定し、自発的な支払いを促します。
調停調書・審判書・判決書などの執行力ある書面が必要です。相手に支払えるだけの収入や財産があり、自発的な支払いを促したい場合に向いています。
間接強制の決定後も相手が支払わない場合は、給与・預貯金の差押えを申し立て、財産から直接取り立てる方法もあります。
9.養育費の取り決めがないときは、家庭裁判所の調停・審判で支払条件を定められます
離婚後に養育費の取り決めがなく、父母の話し合いで月額・支払日・期間を決められない場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てる方法があります。
調停では、裁判官と調停委員が双方の収入や子どもの事情を踏まえて合意を目指します。合意できず調停が不成立になれば、審判で裁判官が養育費を定めます。
離婚調停中であれば、その調停の中で離婚後の養育費を話し合います。まだ婚姻中で別居している場合に子どもの生活費を含む支払いを求めるときは、婚姻費用分担調停が基本です。
成立した調停調書や確定した審判書は、月額・支払日・期間を明確にし、その後も支払われない場合の履行勧告や給与・預貯金差押えに使えます。
相手が話し合いに応じないことだけを理由に、養育費の取り決めを諦める必要はありません。月額・支払日・支払期間を調停調書や審判書に残し、支払われない場合の履行勧告や差押えに備えられます。
泣き寝入りする前に、まずは弁護士へ相談してください
養育費の未払いが続いていても、勤務先や口座が分からない、差押えに使える書面があるか判断できない、相手が無職だと言っているなど、止まってしまう理由は人によって違います。
何もできないと決めつける前に、手元の書面と入金履歴を持って相談してください。給与・預貯金差押えをすぐに申し立てられるのか、財産調査から始めるのか、家庭裁判所の制度を使うのかを、現在の状況に合わせて選べます。
弁護士法人ワンピース法律事務所では、未払い養育費についてLINEで無料相談を受け付けています。分かっている資料だけでも構いません。泣き寝入りする前に、ご相談ください。