養育費の履行勧告とは、家庭裁判所の調停・審判・裁判で決まった養育費が支払われないとき、養育費を決めた家庭裁判所から相手へ支払いを促してもらう手続です。
申出に費用はかかりません。書面だけでなく、口頭や電話で申し出ることもできます。裁判所からの連絡で支払いが再開する場合もあるため、家庭裁判所で養育費を決めたのに支払いがない場合、差押えの前に利用しやすい手続です。
養育費の履行勧告とは、家庭裁判所から相手へ支払いを促してもらう手続です
履行勧告を申し出ると、家庭裁判所は調停調書や審判書などで決めた内容と、現在の支払状況を確かめます。未払いがあれば相手へ連絡し、決められた養育費を支払うよう促します。
相手への連絡方法は、電話や書面などです。裁判所は未払いの理由や支払予定を相手から聞き、支払いを促します。申出人には、相手の回答や勧告の結果が伝えられます。
履行勧告の大きな特徴は次の4点です
- 申出に手数料はかからない
- 書面・口頭・電話で申し出られる
- 裁判所から相手へ支払いを促してもらえる
- 相手の回答や勧告の結果を裁判所から伝えてもらえる
自分で何度も支払いを催促しなくても、家庭裁判所から相手へ支払いを促してもらえる点が、履行勧告の大きな利点です。
履行勧告を利用できるのは、家庭裁判所の手続で養育費が決まっている場合です
履行勧告は、家庭裁判所の手続で決まった養育費の支払いを促す制度です。次のような書面で養育費が決まっている場合に申し出られます。
- 養育費の調停で作成された調停調書
- 審判で養育費が決まり、確定した審判書
- 離婚訴訟などの判決書・和解調書
- 家庭裁判所の手続で成立した合意内容を示す書面
履行勧告の申出先は、養育費を決めた家庭裁判所です
現在住んでいる地域の家庭裁判所とは限りません。養育費を決めた調停・審判・裁判を扱った家庭裁判所が申出先です。
事件番号は、調停調書や審判書の上部に記載されています。電話や書面で申し出る前に書き留めておいてください。
申出前に、支払われていない月と金額を書き出してください
どの月にいくら支払われていないか、次の3点を月ごとに書き出してください。
- 本来の支払日と、その月に支払われるはずだった金額
- 実際に入金された日と金額
- 本来の金額から入金額を差し引いた、その月の未払い額
たとえば月額5万円で、6月分は入金なし、7月分は2万円だけ入金、8月分は入金なしの場合、未払い額は6月分5万円、7月分3万円、8月分5万円です。履行勧告で支払いを求める未払い額は、合計13万円です。
履行勧告を申し出るとき、家庭裁判所へ伝える6つの内容
- 調停・審判・裁判の事件番号
- 申出をする方と相手の氏名
- 養育費の月額と毎月の支払期限
- 支払われていない月、各月の未払い額、合計額
- 一部入金があれば、その日付と金額
- 相手の現在の住所・電話番号・勤務先など、分かっている連絡先
勤務先が分からなくても申出はできます。住所や電話番号など、現在分かっている連絡先を伝えてください。
電話・書面・口頭のいずれでも申し出られ、費用はかかりません
履行勧告は、書面だけでなく、家庭裁判所の窓口や電話でも申し出られます。電話で申し出る場合は、事件番号を伝えると、養育費を決めた事件の担当部署へ案内してもらえます。
電話では、最初に次のように伝えてください。
申出そのものに手数料はかかりません。弁護士へ依頼せず、自分で申し出ることもできます。
履行勧告を申し出ると、家庭裁判所は未払い状況を調べて相手へ支払いを促します
家庭裁判所が行うのは、未払い状況の確認と、支払う側への働きかけです。申出を受けると、主に次の対応が行われます。
- 調停調書や審判書を見て、決められた月額と支払期限を確かめる
- 申出人が伝えた未払い月と金額をもとに、支払いが滞っている状況を調べる
- 相手へ電話や書面で連絡し、支払っていない理由、支払う意思、支払える時期を尋ねる
- 決められた養育費を支払うよう促し、相手の回答や勧告の結果を申出人へ伝える
相手から「○月○日に支払う」「未払い分を分割で支払いたい」などの回答があれば、その内容が申出人へ伝えられます。相手が支払予定日を回答した場合は、その日までに入金があるか確かめてください。
履行勧告は、申出をすれば裁判所が代わりに養育費を回収してくれる手続ではありません。家庭裁判所から相手へ連絡し、自ら支払うよう促す手続です。
履行勧告が役立つのは、裁判所からの連絡で支払いが再開する可能性がある場合です
履行勧告が向いているのは、相手が支払いを忘れている場合や、一時的に支払えず支払日の延期を希望している場合です。本人からの催促には返事をしなくても、裁判所から連絡があれば応じる相手もいます。
一方、相手が支払いをはっきり拒んでいる場合や、すでに履行勧告を受けても支払わなかった場合は、同じ勧告を待ち続けても入金につながらないおそれがあります。この場合は、履行命令または差押えが次の手続となります。
履行勧告と履行命令の違いは?
履行勧告は、家庭裁判所から相手へ支払いを促す働きかけです。これに対して履行命令は、申立てを受けた家庭裁判所が相手に支払期限を示し、その期限までに養育費を支払うよう命じるものです。
大きな違いは、正当な理由なく履行命令に従わない場合、10万円以下の過料となることがある点です。履行勧告に応じなかっただけでは、この過料は科されません。
履行命令が出たら、未払い養育費は自動的に入金されるの?
いいえ。履行命令は相手に支払いを命じるものですが、相手の給与や預金から未払い分を自動的に回収する効力はありません。相手が命令後も支払わない場合、給与や預金から回収するには、履行命令とは別に差押えの手続が必要です。
未払い分を回収する方法として、給与や銀行口座の差押えがあります
調停調書、審判書、判決書などがあれば、地方裁判所へ給与や銀行口座の差押えを申し立てる方法があります。差押えの前に履行勧告を利用する必要はありません。
相手が任意に支払う可能性があるなら、費用のかからない履行勧告を先に利用する選択があります。一方、支払いを明確に拒んでいる、勧告後も入金がない、給与や銀行口座が分かっているという場合は、履行勧告を経ずに差押えを申し立てる方法もあります。
養育費の履行勧告を申し出られるか、勧告後にどの手続を選べばよいか分からない場合は、調停調書や審判書と入金履歴を用意して、弁護士へご相談ください。