養育費を払ってもらえないときに、最初にやるべきことは、入金されるのを待ち続けるのではなく、相手本人へ連絡することです。
連絡の目的は、ただ催促することではありません。相手に支払う意思があるのか、なぜ支払われていないのか、いつなら支払えるのかを確かめることが最初の行動です。
振り込みを忘れていただけなら、支払日を決めることで解決することがあります。一時的にお金を用意できないのであれば、今払える金額と残りの支払日を話し合えます。一方で、「養育費は払わない」と拒まれた場合や、連絡しても返事がない場合は、同じ催促を続けるのではなく、書面による請求へ切り替える必要があります。
相手の返事によって、次に取るべき行動は変わります。そのため、最初の連絡では理由と支払予定を具体的に聞き、LINEやメールなど、やり取りが残る方法を使うことが大切です。支払日や金額の約束ができたときは、後から内容を示せる証拠として保存してください。
最初の連絡から書面による請求、手元にある書面に応じた裁判所の手続、給与や銀行口座からの回収まで、実際に行動を起こす順番に沿って説明します。
1.支払日を過ぎたら、相手に支払う意思があるかを確かめてください

養育費が入金されていないからといって、最初から相手が支払いを拒んでいるとは限りません。支払日を勘違いしていることもあれば、振込手続を忘れていることもあります。収入が急に減り、約束した金額を一度に用意できなくなった可能性もあります。
最初の連絡で事情を尋ねるのは、相手を責めるためではありません。支払う意思があるのかを確かめ、話し合いで解決できる状況なのか、次の請求へ移るべき状況なのかを判断するためです。
最初の連絡では、未入金の事実と支払予定を聞いてください
相手へ連絡するときは、「払ってください」だけで終わらせず、次の4点が分かるように質問してください。
- 養育費が支払われていない理由
- 今後も養育費を支払う意思があるのか
- 未払い分をいつまでに、いくら支払えるのか
- 一括で支払えない場合は、毎月いくらずつ支払えるのか
電話で話した場合も、通話だけで終わらせないことが大切です。通話後に「今日の話では、○月○日に○月分の養育費○円を支払うという約束でした。内容に違いがあれば返信してください」と送り、合意した支払日と金額をLINEやメールに残してください。
振り込みを忘れていた場合は、いつ支払えるのか具体的な日付を聞いてください
相手が振込忘れを認めて支払うと答えた場合は、「今日中」「来週」ではなく、「○月○日に○月分の養育費○円を振り込む」と日付と金額を具体的に決めてください。
約束どおり入金されたときは、入金日、金額、対象月が分かる通帳や入出金明細を保存します。約束した日を過ぎても入金されなければ、同じ口約束を繰り返さず、次の書面請求へ移ります。
「今は払えない」と言われた場合は、今払える金額と残りの支払日を話し合ってください
「今は払えない」という返事は、「今後も養育費を払わない」という拒否とは違います。まず、一時的に全額を用意できないのか、今後も現在の月額を支払えないのかを聞いてください。
一括で支払えない場合は、今支払える金額、残りを支払う日、翌月以後の通常分をどう支払うのかまで具体的に決めます。たとえば、通常分が月5万円、未払いが10万円ある場合は、通常分5万円に加えて未払い分を毎月いくら支払うのか、最初の支払日はいつかを明らかにします。
分割払いに合意したときは、未払いの対象月、毎回の支払額、各支払日、最後の支払日をLINEやメールに残し、相手の返事とともに保存してください。
「養育費は払わない」と言われた場合は、書面による請求へ移ります
「今は払えない」と「養育費は払わない」では、その後の対応が違います。支払いそのものを拒否された場合は、支払日を決める話し合いを続けても解決しにくくなります。
相手が支払いを拒んだメッセージは削除せず、そのまま保存してください。言い争いを続けるのではなく、未払い月、合計額、支払期限を明記した書面で請求する段階へ移ります。
返事がない場合は、返事を待つ期限を伝えて、もう一度連絡してみてください
最初の連絡に返事がないときは、送信日時、送った内容、既読の有無を保存してください。そのうえで、未払い月、合計額と「○月○日までに返事がほしい」という期限を添えて、もう一度連絡してみてください。
期限を過ぎても返事も入金もなければ、同じメッセージを何度も送る段階ではありません。請求内容と支払期限を明記した書面を送ります。
2.話し合っても支払われないときは、期限を決めて書面で請求してください

相手が支払いを拒んでいる、返事がない、支払うと言いながら日付を示さない、約束した日を過ぎても入金がない。このいずれかに当てはまるときは、口頭やメッセージで催促を繰り返すのではなく、請求内容を明記した書面を送ります。
書面で請求する目的は、相手を驚かせることではありません。何月分が、いくら未払いになっているのか、いつまでに支払う必要があるのかを明確にし、その請求を証拠として残すためです。
書面を作る前に、通帳や入出金明細と養育費を決めた書面を照らし合わせ、次の4点を書き出してください。
- 支払われていない養育費の対象月
- その月に支払われるはずだった金額
- 一部入金がある月は、その入金額と不足額
- すべての月を合計した未払い額
請求書には、未払いの対象月、合計額、支払期限、振込先を記載します。「早急に支払ってください」ではなく、「○月○日までに」と具体的な日付を書いてください。相手が何を、いつまでに支払えばよいのかが明確になります。
内容証明郵便を利用すると、いつ、どのような内容の書面を、誰へ送ったのかを郵便局の記録に残せます。後から相手が「請求を受けていない」と主張した場合にも、送った事実と内容を示しやすくなります。
ただし、内容証明郵便を送っただけで、相手の給与や銀行口座から自動的にお金が支払われるわけではありません。書面に記載した期限までに支払いがなければ、次は手元にある書面に応じて裁判所の手続へ移ります。
3.書面で請求しても支払いがないときは、手元にある書面によって次の手続が変わります

書面で期限を示しても支払いがないときは、養育費を決めたときの書面を用意してください。家庭裁判所が作成した書面なのか、公証人が作成した公正証書なのか、父母だけで作成した離婚協議書や合意書なのかによって、次に利用できる手続が違います。
この違いが生じる理由は、給与や銀行口座から回収するには、養育費を支払う義務と金額が法的に確定していることを裁判所へ示す必要があるためです。書面の名前が分からないときは、作成した場所と書面の表題から自分に当てはまる項目を選んでください。
家庭裁判所で養育費を決めた場合
調停調書、審判書、判決書が手元にある方は、養育費を決めた家庭裁判所へ履行勧告を申し出ることができます。履行勧告とは、家庭裁判所から相手へ、決められた養育費を支払うよう促してもらう制度です。申出に費用はかかりません。
履行勧告だけでは、相手の給与や預金から直接お金を移すことはできません。履行勧告を受けても支払わない場合は、調停調書などを使い、地方裁判所へ給与や銀行口座の差押えを申し立てる方法があります。
公正証書で養育費を決めた場合
公正証書の中に、「支払いがなければ直ちに差押えを受けても異議はない」という内容が記載されていれば、家庭裁判所で養育費を決め直さずに、給与や銀行口座の差押えを申し立てられる場合があります。
申立てには、公正証書の正本だけでなく、執行文や送達証明書などが必要です。申立ての前に、未払いの対象月と合計額も計算してください。給与から回収する場合は相手の勤務先、銀行口座から回収する場合は利用している銀行名と支店名を申立書に記載します。
離婚協議書・合意書で養育費を決めた場合
養育費の月額と支払日が書かれていても、父母だけで作成した離婚協議書や合意書では、すぐに給与や銀行口座を差し押さえられない場合があります。
ただし、2026年4月1日以後に支払期日が来る養育費については、金額や支払日などが書面で合意されていれば、一定の範囲で差押えを申し立てられる制度があります。利用できる金額には上限があり、書面の内容や対象となる支払日などの条件を満たす必要があります。
4.差押えに必要な書面がない場合は、養育費請求調停を申し立てます

養育費の金額や支払日を記載した書面がなく、差押えに使える調停調書や公正証書などもない場合は、まず家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てるのが基本です。
調停では、これまで支払われていない養育費をどうするのかに加え、これからの月額や支払日についても話し合います。
家庭裁判所を利用するのは、もう一度同じ話し合いを繰り返すためではありません。養育費を支払う義務、月額、支払日を裁判所の手続で明確にするためです。調停調書や審判書は、その後も支払いがないときに差押えを申し立てる際の書面になります。
調停で合意した内容は、家庭裁判所が調停調書に記載します。話し合いがまとまらない場合は、裁判官が父母の収入や子どもの状況などを踏まえ、審判で養育費を決めます。
5.差押えに使える書面がある場合は、給与または銀行口座の差押えを申し立てる方法があります

調停調書、審判書、判決書、差押えを認める記載のある公正証書などがあり、それでも相手が支払わないときは、地方裁判所へ申し立て、相手の給与や銀行口座から未払い分を回収する方法があります。
このように、裁判所を通じて相手の財産を差し押さえる手続を、法律上は「強制執行」といいます。いきなり選ぶ手続ではなく、支払義務を示せる書面があり、話し合いや書面請求でも支払われないときに利用する回収方法です。
給与と銀行口座では、差押えの対象になる範囲と支払いを受けるまでの流れが違います。相手の勤務先が分かっているのか、銀行名と支店名が分かっているのか、毎月継続して受け取りたいのかを踏まえて対象を選びます。
給与を差し押さえるには、相手の勤務先の情報が必要です
給与を差し押さえると、地方裁判所から相手の勤務先へ命令が届きます。勤務先は、法律で差押えが認められる範囲の給料を相手へ支払わず、養育費を受け取る側へ支払います。
養育費の場合は、すでに支払日を過ぎた未払い分だけでなく、条件を満たせば、これから毎月支払日が来る養育費も給与から継続して受け取れる場合があります。
銀行口座を差し押さえるには、銀行名と支店名が必要です
銀行口座を差し押さえると、裁判所の命令が銀行へ届いた時点の預金が対象になります。その時点の残高から支払いを受けるため、残高が少なければ未払い分の全額を受け取れないこともあります。
申立てには、金融機関名だけでなく支店名も必要です。過去に相手から振込みを受けていた口座の履歴などから、銀行と支店を特定できる場合に利用しやすい方法です。
養育費を払ってもらえず困っている方は、弁護士へ無料で相談できます
相手に連絡しても返事がない、「養育費は払わない」と拒まれた、書面で期限を示しても支払われない。そのようなときは、同じ催促を続けるより、手元の書面と未払い状況に合った請求方法を選ぶことが大切です。
養育費請求の無料相談窓口では、未払い養育費について弁護士へ無料で相談できます。相手とのやり取り、通帳や入出金明細、養育費について書かれた書面をもとに、今の段階でどの請求方法を利用できるのかを相談できます。
養育費を払ってもらえずお困りの場合は、お気軽にご相談ください。