養育費について相手と話しても金額がまとまらない、連絡しても話合いに応じてもらえない。そのようなときに利用できるのが、家庭裁判所の養育費請求調停です。
養育費請求調停では、調停委員が父母の間に入り、子どもの生活、父母双方の収入、希望する金額などをそれぞれから聞きます。その内容をもとに、毎月の金額や支払方法について話し合いが進みます。相手と同じ席で直接交渉を続ける手続ではなく、父母は原則として別々の時間に調停委員へ事情を話します。
養育費請求調停では、毎月の金額だけでなく、いつの分から支払うか、毎月の支払日、振込先、いつまで支払うか、進学費用や高額な医療費をどう扱うかまで話し合えます。
弁護士に依頼せず、自分で申し立てることもできます。初めて手続をする方が迷いやすいのは、どの裁判所へ何を提出し、その後どのように進むのかという点です。
養育費請求調停を利用する主なケース
- 離婚時に養育費を決めていない
- 金額や支払期間について話し合いがまとまらない
- 相手が話し合いに応じない、連絡が取れない
- 婚姻していない父母の間で、認知後の養育費を決めたい
- 私的な合意はあるが、未払い分や今後の支払条件に争いがある
すでに調停調書や審判書などがあり、その内容どおりに支払われていない場合は、同じ内容を調停で決め直す必要はありません。履行勧告や強制執行を利用して、決めた養育費の支払いを求める方法があります。
| 現在の状況 |
次に利用する手続 |
| 養育費をまだ決めていない |
養育費請求調停で金額・開始月・支払日などを決める |
| 口約束、LINE、離婚協議書はあるが、内容や未払い額に争いがある |
合意内容と支払履歴を調停委員へ伝え、未払い分と今後の支払条件を話し合う |
| 調停調書・審判書などがあり、決めた内容が支払われない |
履行勧告や強制執行で支払いを求める |
申立書を書く前に考えておきたいこと
申立書には、相手にどのような支払いを求めるのかを書く欄があります。細かな条件をすべて決めておく必要はありませんが、次の点について希望を考えておくと、申立書を書きやすくなります。
- 希望する養育費の月額
- いつの分から支払いを求めるか
- 毎月の支払日と振込先
- いつまで支払いを求めるか
- すでに未払いがある場合は、対象月と合計額
- 学費や継続的な医療費など、毎月の養育費とは別に話し合いたい費用
希望額が決まらない場合は、父母双方の年収、子どもの人数と年齢から養育費算定表で確認できる金額が一つの目安になります。相手の正確な収入が分からなくても申立てはできます。調停では相手にも収入資料の提出を求め、双方の収入をもとに金額を話し合います。
養育費請求調停の流れ
申立てから調停が終わるまでは、主に次の順番で進みます。
1.相手の住所地を管轄する家庭裁判所を調べる
原則として、相手の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。父母が別の家庭裁判所を利用することに合意している場合は、その家庭裁判所へ申し立てることもできます。
自分の住所に近い家庭裁判所へ申し立てるとは限りません。申立書を書く前に、相手の現在の住所と、その住所を管轄する家庭裁判所を調べます。相手の住所が分からない場合は、裁判所から相手へ書類を送れないため、住民票や戸籍の附票などで住所を調べる必要があります。
2.申立書と必要書類をそろえる
標準的な必要書類は次のとおりです。申立先の家庭裁判所や個別の事情によっては、ほかの書類も必要になります。
| 必要書類 |
何のために提出するか |
| 養育費請求調停申立書と写し1通 |
希望する月額、支払開始月、申立てに至った事情などを裁判所と相手へ伝える |
| 対象となる子どもの戸籍謄本 |
子どもと父母の身分関係を確かめる |
| 申立人の収入資料 |
現在の収入を示し、養育費の金額を話し合う資料にする |
| 事情説明書 |
子どもの生活、父母の仕事、これまでの話合いを裁判所へ伝える |
| 進行に関する照会回答書 |
相手との連絡状況や安全面など、期日の進め方に関わる事情を裁判所へ伝える |
| 送達場所等届出書 |
裁判所からの書類を受け取る住所を届け出る |
以前に養育費を話し合っている場合は、離婚協議書、公正証書、LINEやメールのやり取りがあると、当時どのような条件を決めたのかを伝えられます。未払いがある場合は、通帳や取引明細に加え、支払われていない月と金額をまとめた一覧があると、未払いの状況が分かりやすくなります。
裁判所へ提出した書面は、相手が閲覧・コピーする可能性があります。住所や勤務先など、相手に知られたくない情報がある場合は、提出前に家庭裁判所へ非開示希望や秘匿制度の取扱いを相談してください。
3.申立費用は、子ども1人につき1,200円です
申立手数料は、子ども1人につき収入印紙1,200円です。子どもが2人なら2,400円、3人なら3,600円になります。このほかに、裁判所が書類を送るための郵便料が必要です。
郵便料の金額と納め方は、家庭裁判所ごとに異なります。申立先の家庭裁判所の案内で確認できます。戸籍謄本の取得費用や、書類を郵送する場合の送料も別にかかります。
4.家庭裁判所へ申立書を提出する
提出方法は、家庭裁判所の窓口へ持参するか、郵送するかの2通りです。郵送する場合は、送付先、必要な部数、郵便料の納め方を事前に家庭裁判所へ尋ねておくと、書類不足による追加提出を避けやすくなります。
申立書の書式と記入例は、裁判所のウェブサイトから入手できます。家庭裁判所の手続案内では、記入欄の意味や書き方を尋ねられます。ただし、いくらを請求するべきか、どのように主張するべきかといった個別の法律相談は受けられません。
5.裁判所から第1回期日の通知が届く
申立てが受理されると、家庭裁判所が第1回調停期日を決め、申立人と相手方へ日時・場所を知らせる期日通知書を送ります。申立てから第1回期日までの期間は、裁判所の混雑、書類の不足、相手への送達状況などによって異なります。
指定された日に出席できない事情が分かったら、担当書記官へ早めに連絡する必要があります。無断で欠席すると、自分の事情や希望を伝える機会を失ってしまいます。
6.第1回調停では、原則として別々に事情を話す
当日は裁判所で受付を済ませ、指定された待合室で待ちます。一般的な家事調停では、申立人と相手方が別々に調停室へ入り、調停委員が交互に話を聞きます。裁判所によって異なりますが、1回の調停に2時間ほどかかることがあります。
申立人には、申立てに至った経緯、子どもの生活、希望する月額と開始月、父母の収入、以前の合意や支払いなどが尋ねられます。相手を非難することより、何が決まっておらず、子どもの生活のために何を決めたいのかを具体的に伝えることが大切です。
7.1回で決まらなければ、次の期日へ続く
双方の希望額や支払開始月に差がある場合は、1回の期日で結論が出ないこともあります。その場合は、次回までに提出する収入資料や確認事項を調停委員から案内され、次の期日が決まります。
期日の間に新しい資料を出すときは、提出期限と必要部数を守ります。相手の意見を調停委員から聞いたら、受け入れられる点と難しい点、その理由を分けて考えておくと、次回の話し合いが進みやすくなります。
8.合意できた場合は調停調書が作成される
月額、開始月、支払日、終期などについて合意できると、調停が成立します。合意内容は調停調書に記載され、確定判決と同じ効力を持ちます。
合意する前に、金額、支払開始月、毎月の支払期限、振込先、終期、未払い分の支払方法が自分の認識と一致しているか、一つずつ確かめることが大切です。
9.合意できない場合は審判へ移る
養育費請求調停で合意に至らない場合は、調停不成立となり、審判手続が始まります。審判では、裁判官が父母双方の収入、子どもの人数・年齢、提出資料などを踏まえて養育費の内容を定めます。
調停が不成立になった場合、養育費の審判を改めて申し立てる必要はありません。そのまま審判手続へ移ります。審判の詳しい流れや、審判書が届いた後の手続は別の記事で説明しています。
相手が調停に来なかった場合はどうなりますか?
相手が第1回期日に欠席しても、申立人の希望どおりに自動的に決まるわけではありません。裁判所が相手の欠席理由を確かめ、改めて期日を設けたり、書面の提出を求めたりする場合があります。
相手が繰り返し欠席し、話し合いによる解決が見込めなければ、調停は不成立となり、審判へ移ることがあります。相手が来ないから手続がすべて止まるわけではないため、申立人は指定された期日に出席し、自分の希望と資料を伝えることが大切です。
過去の未払い分も調停で話し合えますか?
以前に養育費を決めている場合は、合意した書面やメッセージ、実際の入金履歴をもとに、未払いになっている月・金額・支払方法を調停で話し合えます。
養育費を一度も決めていない場合は、離婚時まで当然にさかのぼって全期間分を受け取れるとは限りません。いつの分から支払いを求めるかは、これまで相手へ請求した経過、申立ての時期、父母双方の事情などが関係します。過去分を含めたい場合は、申立書へ希望する開始時期を書き、相手へ請求したLINEやメールなどがあれば残しておきます。
すでに調停調書や審判書があり、その内容どおりに支払われていない場合は、履行勧告や強制執行を利用して支払いを求める方法があります。
申立書を書くときと調停当日に役立つ資料
申立書へ事情を書くときや、調停委員へこれまでの経緯・収入・未払い状況を伝えるときは、次の資料が役立ちます。
| 資料 |
何を伝えるために使うか |
| 子どもの戸籍謄本 |
子どもと父母の関係を示す |
| 源泉徴収票、給与明細、確定申告書など |
自分の現在の収入を示す |
| 相手の住所が分かる資料 |
申立先を決め、裁判所から相手へ書類を送るために住所を示す |
| 離婚協議書、公正証書、LINEやメール |
以前に養育費について何を決めたのかを示す |
| 通帳や取引明細 |
いつ、いくら支払われ、どの月から未払いになったのかを示す |
| 学費、保育料、継続的な医療費が分かる資料 |
子どもの生活に実際にかかっている費用を伝える |
戸籍謄本と申立人の収入資料は、裁判所が案内している標準的な必要書類です。そのほかの資料は、手元にある範囲で整理しておくと、これまでの経緯と希望する内容を調停委員へ伝えやすくなります。
資料を集める目的は、裁判所へ事情を伝え、調停で何を決めたいのかを明確にすることです。申立先、希望額、未払い分の扱い、提出する資料に迷う場合は、申立て前に弁護士へ相談する方法もあります。