養育費に関する調停にはどんな種類がある?状況別に利用する手続を解説

弁護士
木村 和弘
養育費について家庭裁判所の調停を調べるときは、いま離婚後なのか、離婚するかどうかを話し合っている段階なのか、すでに決めた金額を見直したいのかによって、申し立てる手続が変わります。
まず、離婚がすでに成立しているのか、離婚と一緒に子どものことを決めたいのか、すでに決めた養育費を見直したいのかを分けて考えてください。
養育費に関する調停は、主に、離婚後に養育費を決める養育費請求調停、離婚と一緒に養育費などを決める夫婦関係調整調停(離婚)、決めた後の金額を見直す増額・減額の調停の3つに分けて考えます。
一方、別居中の生活費を求める婚姻費用分担請求調停は、養育費そのものを決めるための3つの調停とは別の手続です。子どもの生活費も含めて、別居中の生活を支えるために利用します。本文の後半では、この婚姻費用分担請求調停についても説明します。
離婚した後に、これからの養育費を決めたい場合|養育費請求調停

離婚はしたものの、養育費について何も決めていない。相手に「子どものために毎月いくら払えるのか」と聞いても返事がない。このように、離婚後の養育費について話合いがまとまらない、又は話合いができないときに利用するのが養育費請求調停です。
たとえば、協議離婚を急いで、養育費の話は「後で決めよう」としたまま離婚届を出した場合があります。また、「毎月3万円は出す」と口頭やメッセージで話しただけで、いつの分から、毎月何日に、どの口座へ振り込むのかまでは決めていない場合もあります。どちらも、子どもの生活を支えるための約束が、実際に受け取れる形まで決まっていません。
結婚していない父母の場合でも、父親が子どもを認知していれば、養育費について話し合うことができます。父母の間に婚姻関係があったかではなく、離婚後又は認知後の子どもの養育費を決めたいのかが大切です。
月額だけでなく、支払開始月・支払日・振込先・支払期間を決めてください
養育費請求調停では、月額だけで終わらせず、いつの分から支払うのか、毎月何日までに、どの口座へ振り込むのか、いつまで支払うのかを決めてください。
たとえば、月額だけを決めても、「今月分からなのか」「毎月末なのか」「進学したらどうするのか」が曖昧なままだと、後になって同じことで困ることがあります。入学金、私立学校の学費、継続的な医療費のように、通常の月額とは別に負担を求めたい費用がある場合は、その費用を誰がどの割合で負担するのかも、具体的に決めてください。
相手の収入資料を自分だけでそろえられないからといって、何もしないまま待つ必要はありません。まずは、自分の収入資料、子どもにかかっている費用、相手とのやり取り、これまでの入金が分かるものを用意します。調停では、父母双方の収入や子どもに必要な費用を確認しながら、金額と支払方法を話し合います。
すでに条件を決めていて、相手が払わない場合は回収の問題です
すでに調停調書や公正証書などで月額と支払日が決まっているのに、相手が支払わない場合は、新しく同じ養育費を決めるための調停とは、まず考え方が異なります。どの書面で決めたのかを確認した上で、未払い分を回収するには、履行勧告を申し出る方法や給与・預貯金の差押えを申し立てる方法があります。
一方で、以前は口約束だけで、金額や支払日が具体的に決まっていない場合は、養育費請求調停でこれからの条件を決めることになります。手元にある書面を最初に確認すると、同じ「払われない」という悩みでも、進め方を選び間違えにくくなります。
養育費請求調停の申立て方は、次の解説記事で一つずつ紹介しているので確認してみてください。
離婚するかどうかと、離婚後の養育費を一緒に決めたい場合|夫婦関係調整調停(離婚)

一方は離婚を求めているのに相手が離婚に応じない場合があります。また、離婚すること自体には同意していても、子どもの親権、面会交流、養育費のどれかが決まらず、離婚届を出せないままになっている場合もあります。このように、離婚そのものと離婚後の条件をまとめて話し合いたいときは、夫婦関係調整調停(離婚)を利用します。一般に「離婚調停」と呼ばれる手続です。
養育費だけを先に決めたいように見えても、まだ離婚が成立していないなら、離婚をするのか、子どものことをどうするのかも一緒に考える必要があります。この場面で養育費請求調停だけを申し立てても、離婚をするのか、子どもに関するほかの条件をどうするのかまでは決まりません。
離婚調停で、養育費と一緒に決めておきたいこと
離婚調停では、離婚するかどうかだけを話すわけではありません。子どもがいる場合は、親権、離れて暮らす親との面会交流、養育費をどうするのかを話し合います。財産分与、年金分割、慰謝料についても、必要があれば一緒に話し合えます。
養育費については、「毎月5万円」のように金額だけで終わらせず、支払開始月、支払日、振込先、支払期間を決めてください。離婚が成立した後に、養育費の条件だけを改めて話し合う負担を減らすためです。学校の費用や医療費など、毎月の養育費とは別に扱いたいものがあれば、この段階で、事情と希望を具体的に示します。
前に決めた養育費を見直したい場合|養育費の増額・減額を求める調停

養育費を決めた当時より子どもの進学費用が増え、今の月額では足りなくなった場合があります。反対に、支払う側が病気や失業などで収入を大きく減らし、約束どおりに払い続けることが難しくなる場合もあります。すでに養育費を決めていて金額を変えたい場合は、最初から養育費を決め直すのではなく、増額又は減額を求める調停を申し立てます。
事情が変わっても、養育費が自動的に変わるわけではありません。以前に養育費を決めたときから、何が変わったのかを具体的に示す必要があります。子どもの進学、継続的な医療費、父母の収入の大きな変化、再婚や扶養する家族の変化などは、以前に決めた金額を変えたい理由になります。
養育費を増額・減額したいときは、以前と今で何が変わったのかを確認してください
金額を変えたいときほど、最初に調停調書、公正証書、離婚協議書を確認してください。月額だけではなく、いつまで支払うことになっているのか、特別費用について何と書かれているのか、以前の話合いで何を前提に決めたのかを確かめます。
次に、以前と今を比べられる資料を集めます。収入が変わったなら収入資料、学費や医療費が増えたなら領収書や請求書など、変化を説明できるものです。一つの事情だけで、すぐに金額が変わるわけではありません。父母の収入、子どもの人数や生活に必要な費用を踏まえて、養育費の金額を変えるかどうかを話し合います。
養育費を見直せる事情や進め方は、次の解説記事で紹介しているので確認してみてください。
別居中の生活費を求める場合|婚姻費用分担請求調停

離婚がまだ成立していない別居中に、相手から生活費を受け取れず、子どもとの生活を自分の収入だけで支えているときは、婚姻費用分担請求調停を利用します。婚姻費用分担請求調停は、別居中の夫婦と未成熟の子どもの生活を維持するために必要な費用について、家庭裁判所で話し合う手続です。
たとえば、子どもを連れて別居した後、相手からの生活費が止まり、家賃、食費、保育料を自分の収入だけで払っている場合があります。また、離婚するかどうかをまだ決められず、別居中の生活費だけを先に決めたい場合もあります。このようなときは、婚姻費用分担請求調停で、別居中に必要な生活費について話し合います。
申し立てるときは、別居を始めた時期、父母それぞれの収入、家賃・食費・保育料など現在の生活にかかっている費用、相手から受け取っている金額が分かるものを準備します。子どもの生活費だけではなく、別居中に必要な生活全体をどう支えるかが話合いの対象になります。
離婚調停を申し立てている場合でも、離婚が成立するまでは婚姻費用分担請求調停を利用できます。離婚後の養育費を決めることとは区別しますが、離婚調停と同時に申し立てることもあります。
別居中の生活費と離婚後の養育費の違いは、次の解説記事で紹介しているので確認してみてください。
調停を申し立てた後の流れ
どの調停を選ぶ場合でも、申立書には「家庭裁判所に何を決めてほしいのか」を書きます。養育費なら希望する月額と支払方法、婚姻費用なら別居中の生活費、離婚調停なら離婚と子どもに関する条件です。申立書を提出する前に、希望があいまいな部分を一つずつ決めておくと、調停で伝える内容がぶれにくくなります。
期日では、父母それぞれが希望する内容、収入、子どもにかかる費用、現在の生活の状況を調停委員に話します。調停委員は、父母の話と資料を見ながら、どの条件で意見が違っているのかを確かめます。自分の希望だけを述べるのではなく、その金額が必要な理由、いつから必要なのか、資料で示せることは何かを順に話せるようにしておくと、話し合いが進めやすくなります。
父母が合意すれば、決まった内容は調停調書に残ります。養育費請求調停や婚姻費用分担請求調停では、話合いがまとまらない場合に審判手続が始まり、裁判官が事情を踏まえて判断することがあります。離婚調停で離婚自体に合意できなかった場合は、離婚は成立しません。離婚を求める場合は、離婚訴訟を提起することになります。
調停の申立てを具体的に進める前に、裁判所の案内を確認してください
調停の申立てを具体的に進める前に、申立書や必要書類、申立先の取扱いを裁判所の案内で確認してください。養育費請求調停、夫婦関係調整調停(離婚)、婚姻費用分担請求調停、養育費の増額・減額では、申し立てる手続によって書式や確認する内容が異なります。
下のリンクを開くと、申し立てたい手続ごとの裁判所案内を確認できます。裁判所ごとに必要書類や提出方法が異なる場合があるため、申立先の案内もあわせて確認してください。
養育費に関する調停について、弁護士に無料で相談できます
離婚後の養育費を決めたい、離婚と一緒に養育費を決めたい、別居中の生活費を受け取りたい、決めた金額を見直したいなど、どの手続を利用するか分からないときは、弁護士に無料で相談できます。
離婚の状況、子どもの人数、現在の取決め、相手との話合いの状況が分かると、家庭裁判所でどの手続を利用するのか、先に何を確認するのかを具体的にご説明できます。資料がそろっていない場合も、LINEで分かる範囲からお聞かせください。
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養育費調停に関するよくある質問
相手が調停期日に来なかったら、養育費はどうなりますか?
相手が1回欠席しただけで、希望した金額どおりに養育費が決まるわけではありません。家庭裁判所は、相手に連絡が取れているか、次の期日に出席する見込みがあるかを確認し、改めて期日を指定することがあります。相手が出席しない状態が続くなどして話合いによる合意が見込めないときは、養育費請求調停は不成立となり、改めて申立てをしなくても審判手続が始まります。裁判官は、父母の収入、子どもにかかる費用、提出された資料などを踏まえて判断します。
養育費調停は、何回くらいで終わりますか?
回数は決まっていません。最初の期日に、金額、支払開始月、支払日、支払期間などについて父母が合意できれば、その日に調停が成立することがあります。一方で、収入資料を出す必要がある、子どもの費用を確認したい、希望する条件に差があるといった場合は、次の期日を決めて話合いを続けます。次回までに何の資料を出すのか、どの条件がまだ決まっていないのかを、期日ごとに確認してください。
相手と同じ部屋で顔を合わせなければなりませんか?
調停委員が父母それぞれから個別に話を聞く進め方になることがあります。DVや強い不安があり、相手と同じ空間にいることが難しい場合は、申立書を出すとき又は期日の前に家庭裁判所へ伝えてください。事情に応じて、待合場所を分ける、ウェブ会議を利用するなど、顔を合わせないための対応をしてもらえる場合があります。利用できる方法は裁判所と具体的な事情によって異なります。
調停調書ができた後に、相手が養育費を払わなかったらどうなりますか?
調停調書に養育費の支払内容が記載されているのに支払われないときは、調停をした家庭裁判所へ履行勧告を申し出ることができます。履行勧告は費用がかかりませんが、相手に支払いを強制するものではありません。未払いが続く場合は、調停調書を基に給与や預貯金の差押えを申し立てられる場合があります。未払いの月、金額、入金記録と調停調書を確認して、次の手続を選んでください。
これまでの未払い分も、養育費調停で話し合えますか?
まだ養育費の金額や支払開始時期を決めていない場合は、これまでのどの月の分まで求めるのかも、申立ての内容として整理しておく必要があります。いつから養育費を求めていたのか、相手からいくら受け取ったのかが分かるLINE、メール、通帳などを残してください。一方、すでに調停調書や公正証書などで月額と支払日が決まっている未払い分は、同じ条件をもう一度決めるのではなく、履行勧告を申し出る方法や給与・預貯金の差押えを申し立てる方法があります。