「養育費調停では、調停委員から何を聞かれるのでしょうか。うまく答えられなかったら不利になりますか」
初めて家庭裁判所へ行くときは、どのような質問をされるのか分からず、身構えてしまうことがあります。
養育費調停では、主に子どもの生活、父母の収入、これまでの取り決めと支払い、希望する金額などを聞かれます。
全員が同じ質問を同じ順番で聞かれるわけではありません。大切なのは、正解らしい答えを作ることではなく、事実・希望・分からないことを分けて伝えることです。
養育費調停で聞かれるのは金額を決めるための事情です
養育費調停では、調停委員が父母それぞれから話を聴き、必要に応じて資料の提出を求めながら、合意できる金額や支払条件を探ります。
申立書には、子ども、父母、別居・離婚時期、これまでの取り決め、支払状況、希望する月額などを書く欄があります。調停期日でも、これらの内容をもとに、現在の状況や希望を尋ねられることがあります。
質問の言い方や順番は事件ごとに異なりますが、話題になりやすい内容は次のとおりです。
| 話題 |
聞かれ得ること |
事前に整理すること |
| 子どもの状況 |
年齢、同居する親、学校・健康状態 |
子どもの人数、年齢、現在の生活 |
| 別居・離婚 |
いつ別居・離婚したか |
日付が分かる戸籍や手元の記録 |
| 取り決め |
口頭・書面で決めたか、月額や期間 |
合意書、メッセージ、話し合った時期 |
| 支払い |
これまで支払われたか、いつ止まったか |
通帳・振込明細、未払いの対象月 |
| 父母の収入 |
仕事、収入額、最近の変化 |
源泉徴収票、給与明細、確定申告書等 |
| 希望する条件 |
月額、開始月、支払日、支払期間 |
希望する内容と、その理由 |
子どもの生活と現在の監護状況
子どもの年齢、誰と暮らしているか、学校や健康状態、現在どのように生活費を負担しているかを聞かれることがあります。
一般的な食費や衣類費を一つずつ並べるより、学費、継続的な通院費、障害に関する費用など、毎月の養育費を考えるうえで個別に伝えたい支出がある場合は、金額と支払時期を整理しておきましょう。
領収書や請求書がある費用は、何の費用で、いつからどの程度かかるのかが分かるようにまとめます。
これまでの取り決めと支払い状況
養育費について以前に話し合ったか、口頭か書面か、月額や支払期間をどのように決めたかを尋ねられることがあります。
すでに支払いが始まっている場合は、毎月いくら支払われていたか、最後の入金はいつか、未払いは何月分からかを通帳や振込明細と照らし合わせます。
取り決めた内容と実際の入金額が違うときは、それぞれを分けて説明できるようにしてください。
父母の収入と仕事の状況
養育費の金額を考えるため、父母それぞれの仕事と収入について聞かれます。
自分の収入は、源泉徴収票、給与明細、確定申告書、所得証明書など、裁判所から案内された資料へ合わせて説明します。転職、休職、退職などで現在の収入が直近の証明書と異なる場合は、その時期と現在の状況も分けて伝えます。
相手の現在の収入が分からない場合は、推測の金額を事実のように話す必要はありません。「離婚時の勤務先は分かりますが、現在の収入は分かりません」など、分かる範囲と分からない範囲を区別します。
希望する月額・開始月・支払期間
希望する養育費の月額だけでなく、いつから支払いを始めるか、毎月の支払日、いつまで支払うかを聞かれることがあります。
希望額を伝えるときは、父母の収入、子どもの人数と年齢、裁判所の養育費算定表による目安、個別に考慮してほしい費用を分けて整理します。
「月5万円を希望します」だけで終わらせず、「算定表の目安をもとに月5万円を希望します」「継続的な通院費については資料を提出します」など、希望と理由を分けて伝えると、話の内容が明確になります。
分からないことは推測せず、後で資料を出せるか伝えます
質問された数字や日付をその場で思い出せないこともあります。
そのときは、曖昧な記憶で答えを作らず、「正確な日付は手元の通帳を見て提出します」「相手の現在の収入は分かりません」と伝えます。
次回までに資料の提出を求められた場合は、何を、いつまでに、何部提出するのかをメモしておきましょう。提出方法や相手への開示範囲は書類によって異なるため、裁判所から届いた案内に従います。
申立て前と調停期日前に準備する資料
申立てに必要な標準的な書類と、調停期日に説明しやすくする資料は分けて準備します。
| 時期 |
資料 |
整理する内容 |
| 申立て時 |
申立書・子どもの戸籍謄本 |
当事者、対象となる子ども、希望する月額等 |
| 申立て時 |
申立人の収入資料 |
源泉徴収票、給与明細、確定申告書、非課税証明書等 |
| 申立て時 |
事情説明書・進行に関する照会回答書 |
これまでの経緯、連絡方法、進行上の希望 |
| 期日前 |
申立書と提出書類の控え |
自分が書いた日付、金額、希望内容 |
| 状況に応じて |
取り決め書面・入金履歴 |
約束した内容、支払済み・未払いの対象月 |
| 状況に応じて |
子どもの個別費用の資料 |
学費、医療費等の金額と支払時期 |
申立先の家庭裁判所によって、書式や提出部数、追加で求められる資料が異なることがあります。届いた書類と裁判所の案内を先に読み、分からない点は担当書記官へ尋ねましょう。
安全や体調に関する事情は事前に裁判所へ伝えます
相手からの暴力や待ち伏せのおそれがある、相手と同じ場所で待つことが難しい、妊娠中や治療中で配慮が必要といった事情は、調停当日まで抱え込む必要はありません。
進行に関する照会回答書や裁判所への連絡で、具体的な事情と希望する配慮を事前に伝えます。ただし、希望した方法が必ず採用されるとは限りません。
裁判所へ提出する書類は、相手が見る可能性があるものもあります。住所、勤務先、マイナンバーなど相手に知られたくない情報がある場合は、自己判断で書類を加工する前に、申立先の家庭裁判所が案内する非開示希望の手続や提出方法を確かめてください。
質問への答え方は「事実・希望・分からないこと」を分けます
養育費調停で聞かれる内容は、子どもの生活、父母の収入、取り決めと支払い、希望する条件が中心です。
うまく見せる答えを用意する必要はありません。日付と金額を資料へ合わせ、希望には理由を添え、分からないことは分からないと伝える準備をしておきましょう。
調停の申立てから成立・不成立までの全体像を先に知りたい場合は、手続全体を扱う記事で整理できます。