一度決めた養育費は後から増額できる?認められる条件と金額を解説

弁護士
木村 和弘
一度決めた養育費でも、取り決めた後に事情が変わった場合は、後から増額できます。
養育費は、離婚した時点の父母の収入や子どもの年齢、生活費などをもとに決めます。しかし、子どもは成長し、進学や治療に必要なお金も変わります。父母の収入も変わることがあります。そのため、最初に決めた金額が現在の生活に合わなくなったときは、金額を変更できる仕組みになっています。
ただし、希望するだけで自動的に増額されるわけではありません。取り決めた当時と比べて何が変わったのか、その変化によって毎月いくら必要になったのか、父母が現在どの程度の収入を得ているのかが判断の中心になります。
なぜ、一度決めた養育費を後から増額できるのですか?
民法第880条は、扶養の程度や方法を決めた後に事情が変わった場合、家庭裁判所がその内容を変更できると定めています。離婚後の養育費も、子どもの生活費を父母で分担するものです。そのため、取り決めた後に大きな事情の変化があれば、現在の状況に合う金額へ変更できます。
反対に、以前の取り決めから事情がほとんど変わっていない場合は、単に「今より多く受け取りたい」という理由だけで増額することはできません。
どのような場合に増額できますか?
増額できる可能性があるのは、以前の金額を決めたときには想定していなかった変化が生じ、現在の養育費では子どもに必要な費用をまかないにくくなった場合です。
進学によって教育費が増えた場合
高校や大学への進学により、入学金、授業料、教材費、通学費などが増えた場合です。
進学しただけで必ず増額できるわけではありません。以前の取り決めで進学を見込んでいたか、私立学校への進学について父母が話し合っていたか、実際にどの費用が増えたかによって結論が変わります。
治療や通院に必要な費用が増えた場合
病気やけが、障害などにより、通院費、薬代、療育費が継続してかかる場合です。領収書や医療費の明細に加え、今後も同じ費用が続くことが分かる資料があると、必要な金額を説明しやすくなります。
父母の収入が大きく変わった場合
養育費を支払う側の収入が大きく増えた場合や、受け取る側が病気、退職、勤務時間の減少などにより収入を大きく減らした場合です。
一時的な増減ではなく、収入がどの程度変わり、その状態が今後も続くのかによって判断されます。
子どもの成長によって生活費が増えた場合
子どもの年齢が上がると、食費、衣類、学用品、交通費なども増えます。養育費算定表も、子どもが0歳から14歳の場合と15歳以上の場合で金額帯を分けています。
物価が上がったことだけで増額できるとは限りません。子どもの成長や進学と重なり、毎月の負担が大きく変わった場合は、その変化が新しい金額に反映されます。
養育費はいくら増額できますか?
増額できる金額は一律ではありません。また、以前の月額に、増えた教育費や医療費をそのまま足すわけでもありません。
現在の父母双方の年収、子どもの人数と年齢を養育費算定表に当てはめ、月額の目安を出します。そのうえで、進学費用や継続的な医療費など、算定表だけでは表しにくい事情を加えて新しい金額を決めます。
まずは、養育費を支払っている相手と話し合うようにしてください
話し合いでは、増額を希望する理由と金額を伝えます。
伝える内容は、現在の月額、取り決め後に変わった事情、増えた費用、新しく希望する月額、増額を始めたい月です。離婚協議書、公正証書、調停調書などの取り決め書面と、現在の収入資料、授業料や医療費の明細を一緒に示すと、話し合う内容が明確になります。
話し合いで合意できたら、変更内容を書面に残します
合意した場合は、新しい月額、支払日、増額を始める月、振込先を書面に残します。大学の学費などを毎月の養育費とは別に分担する場合は、対象となる費用、負担割合、支払時期も記載します。
口頭だけで終わらせず、合意書や公正証書などの形にすると、後から金額や開始月について争いになることを避けやすくなります。
話し合いで決まらない場合は、増額調停を利用できます
相手が増額に同意しない場合、返事がない場合、希望する金額に差がある場合は、家庭裁判所の養育費増額調停を利用して、増額を求めることができます。
増額調停は、いきなり裁判官が金額を決める手続ではありません。調停委員を介して、父母の収入、子どもに必要な費用、取り決め後に変わった事情をもとに話し合います。話し合いがまとまらなければ審判に移り、裁判官が新しい金額を判断します。
相手の収入資料が手元になくても、増額調停は利用できます。以前の取り決め書面、自分の収入資料、子どもにかかる費用の明細、分かる範囲の相手の勤務先や収入状況を提出します。
増額分はいつから支払われますか?
話し合いで合意した場合は、養育費を支払う側が、二人で決めた開始月から新しい金額を支払います。
家庭裁判所を利用した場合は、増額調停を申し立てた時期や、養育費を支払っている相手へ増額の意思を明確に伝えた時期などを踏まえて開始時期が決まります。子どもが進学した月や、費用が増えた月まで当然にさかのぼるわけではありません。
入学金など一度だけかかる費用は、毎月の養育費とは別に話し合います
生活費や教育費の増加が毎月続く場合は、その負担を養育費の月額に反映させます。
一方、入学金や手術費用のように一度だけ大きな支出が生じる場合は、毎月の養育費とは分け、特別費用として負担額や支払時期を話し合います。
取り決め後に事情が変われば、養育費は増額できます
一度決めた養育費でも、子どもに必要な費用や父母の収入が大きく変われば、現在の状況に合う金額へ変更できます。
まずは、養育費を支払っている相手と新しい月額や開始月を話し合うようにしてください。合意できない場合は、養育費増額調停を利用して増額を求めることもできます。