相手の住所が分からなくても養育費は請求できる?調べ方と手続きを弁護士が解説

弁護士
木村 和弘
これまで養育費を相手に請求していなかった方も、途中から支払いが止まった方も、相手の住所や連絡先が分からなければ、何から始めればよいのか分からず困ってしまうと思います。
このような場合は、以前の住所、本籍地、電話番号など、手元にある情報に合う方法で現在の住所を調べます。住所を確認できたら、まず相手へ養育費の話合いを求め、話合えない場合に家庭裁判所の手続を利用します。
家庭裁判所から相手へ書類を送るには、原則として住所または送達場所が必要です。そのため、相手と連絡が取れず話合いができないときは、裁判所の手続を始める前に住所を確認します。
以前の住所が分かる場合は住民票の除票、本籍地が分かる場合は戸籍の附票、電話番号しか分からない場合は弁護士会照会が住所を調べる方法になります。
手元にある情報によって、住所の調べ方が決まります
以前の住所、本籍地、電話番号のどれが分かっているかによって、利用できる調査方法が分かれます。住民票上の住所へ裁判所の書類が届かない場合には、別の対応が必要です。
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住所調査に使う情報と、養育費の書面を確認します
住所を調べるために使うのは、相手の氏名、生年月日、以前の住所、本籍地、電話番号です。すべてがそろっている必要はありません。分かる情報から、利用できる方法を確認します。
公正証書、調停調書、離婚協議書、合意書があれば、あわせて内容を確認します。養育費が途中から止まった方は、未払いになった月と最後に入金された日が分かる通帳や明細も用意します。これらは、住民票などを第三者として請求する理由や、住所が分かった後に利用できる手続を示す資料になります。
本籍地や生年月日が分からなくても、以前の住所や養育費の書面から調べられることがあります。
以前の住所が分かる場合は、住民票の除票で転出先を確認します
相手が以前住んでいた市区町村が分かる場合は、その市区町村へ住民票または住民票の除票を請求し、住民登録上の住所や転出先を確認します。
住民票には住民登録上の住所が記載されます。相手が別の市区町村へ転出しているときは、以前の住所地で取得する除票に転出先が記載されている場合があります。
ただし、書類に記載された住所と実際の居住場所が一致しているとは限りません。住民票上の住所へ郵便を送っても届かないときは、そこに住んでいない可能性も考えます。
本籍地が分かる場合は、戸籍の附票で住所の履歴を確認します
戸籍の附票は、その戸籍に在籍している間の住所の履歴を記録した書類です。相手の本籍地が分かる場合は、本籍地の市区町村へ請求します。郵送で請求できる市区町村もあります。
相手が転居を繰り返していても、戸籍の附票から住民登録上の住所の履歴を確認できます。一方で、転籍や戸籍の改製があると、一通の附票だけでは現在の住所まで確認できないこともあります。
住民票や戸籍の附票は、誰でも自由に取得できるわけではありません
養育費を受け取る側であっても、相手の住民票や戸籍の附票を無条件に取得できるわけではありません。
第三者として請求する場合は、養育費を請求するために住所が必要であることや、取得した書類をどこへ提出するのかを具体的に記載します。本人確認書類のほか、養育費の取り決めや未払いを示す書面を求められることもあります。
必要書類、手数料、郵送請求の方法は市区町村ごとに違います。請求前に、相手の以前の住所地または本籍地の市区町村へ問い合わせると、持参・郵送する資料を確かめられます。
電話番号しか分からない場合でも、住所調査につながることがあります
相手の携帯電話番号などが分かる場合は、弁護士へ依頼した事件に必要な範囲で、弁護士会照会を利用できる場合があります。弁護士が個人で問い合わせるのではなく、所属する弁護士会が必要性と相当性を審査したうえで、官公庁や企業などへ照会します。
また、弁護士は受任した養育費請求に必要な範囲で、戸籍や住民票等を職務上請求できる場合があります。
どちらの制度も、依頼と関係なく自由に使えるものではありません。弁護士会の審査を通らない場合や、照会先から必要な回答が得られない場合もあるため、電話番号があれば必ず住所が分かるわけではありません。
住民票上の住所にも住んでいない場合は、家事審判と公示送達で進められる場合があります
住民票上の住所へ裁判所の書類を送っても届かず、ほかに送達できる場所も分からないときは、家庭裁判所へ家事審判を申し立て、公示送達によって手続を進められる場合があります。
公示送達は、住所が分からないという理由だけで最初から利用できる方法ではありません。以前の住所、住民票、戸籍の附票、電話番号などを調べても送達場所が分からなかった経過を、資料とともに裁判所へ示します。
公示送達を利用できるか、どこまで調べる必要があるかは、申立先の家庭裁判所が判断します。
住所が分かった後は、養育費の取り決めの有無で手続が変わります
養育費をまだ決めていない場合
まずは相手と養育費の月額や支払日について話し合います。連絡しても返事がない、話合いができない、金額がまとまらない場合は、家庭裁判所の養育費請求調停を利用できます。調停で合意できなければ、審判で裁判官が養育費を決めます。
養育費を決めた書面がある場合
公正証書、調停調書、審判書、判決書がある場合は、その書面を使って未払い分の支払いを求められることがあります。離婚協議書や合意書だけがある場合は、書面の内容と作り方によって使える手続が変わります。
強制執行に使える書面があり、相手が支払わない場合は、給与や預貯金を差し押さえる方法があります。住所調査と勤務先・財産の調査は目的が違うため、住所が分かっただけで差押えが始まるわけではありません。
相手へ連絡すると危険な場合は、自分で居場所を探さないでください
相手から暴力や脅迫を受けている場合や、接触すると身の危険を感じる場合は、住所を調べるために相手本人や共通の知人へ連絡しないでください。
相手に自分の住所を知られたくない事情があるときは、家庭裁判所で住所を相手に知らせない取扱いを利用できる場合があります。市区町村、家庭裁判所、弁護士へ事情を伝え、安全を優先した方法で進めてください。
相手の住所も連絡先も分からないときは、氏名、生年月日、以前の住所、本籍地、電話番号、養育費の書面のうち、分かるものから住所確認の方法を選べます。