未払い養育費を請求しても相手から返事がないときは、内容証明郵便で、未払いの対象月・合計額・支払期限を正式な文書として伝える方法があります。
内容証明郵便とは、送った文書の内容と差出日を証明する郵便です
日本郵便が証明するのは、文書を差し出した日、差出人と受取人、文書に記載されていた内容です。たとえば、「2026年6月分から8月分までの養育費15万円を、9月30日までに支払ってほしい」と請求した事実を記録に残せます。
一方で、日本郵便は、記載した未払い額が正しいことや、相手にその金額の支払義務があることまで証明しません。内容証明を受け取った相手が支払いに応じることはありますが、送れば必ず支払われる制度ではありません。
配達証明を付けると、文書が相手へ配達された日も記録に残せます。内容証明と配達証明は役割が異なるため、未払い養育費を請求した文書がいつ届いたかまで残したい場合は、配達証明を併用すると分かりやすくなります。
未払い養育費を内容証明郵便で請求するとよい4つの場面
1. LINEやメールで催促しても返事がない場合
既読になっても返事がない、支払うと言われたまま入金がないなど、通常の連絡では話が進まないときは、未払い額と期限を一つの文書にまとめて正式に伝える意味があります。
2. 何月分をいくら請求したか記録に残したい場合
連絡を何度も重ねると、相手から「金額を聞いていない」「その月は支払った」と言われることがあります。内容証明郵便なら、その時点で請求した対象月・合計額・期限を後から確認できます。
3. 支払期限を明確にして、次の対応へ進みたい場合
「できるだけ早く」ではなく、年月日を示して支払いを求めることで、相手が期限までに支払うか、分割払いを提案するか、何も応じないかが明確になります。
4. 時効が迫っており、催告した事実を残したい場合
請求内容が民法上の催告に当たる場合は、催告から6か月間、時効の完成が猶予されます。ただし、内容証明郵便を送っただけで時効が更新されるわけではありません。時効が迫っているときは、6か月以内に裁判上の請求等が必要かを早めに確認してください。
書き始める前に、取り決めと入金履歴から請求額を整理します
まず、公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書など、養育費の月額・支払日・支払期間が分かる書面を手元に用意してください。その内容と通帳・インターネットバンキングの入金履歴を月ごとに照らし合わせると、入金のない年月と未払い合計額を正確に整理できます。
- 取り決めた養育費の月額と毎月の支払日
- 入金がなかった月、一部しか支払われなかった月
- すでに支払われた金額を差し引いた未払い合計額
- 相手へ示す具体的な支払期限
- 振込先口座と相手の現在の住所・氏名
LINEやメールで分割払いの提案や支払予定が届いている場合は、その文章と日時も保存します。口約束だけの場合や月額を決めていない場合は、相手が金額や対象期間を争う可能性があるため、合意済みの内容と未合意の内容を分けてください。
未払い養育費の内容証明に書く7つの項目
1. 文書の表題
「未払い養育費請求書」「通知書」など、何についての文書か分かる表題を付けます。
2. 差出日・差出人・受取人
差し出す年月日と、父母それぞれの住所・氏名を記載します。封筒と内容文書で住所・氏名が異ならないようにしてください。
3. 養育費を取り決めた根拠
公正証書や調停調書がある場合は、作成日、書面名、養育費の対象となる子ども、月額、支払日を記載します。離婚協議書や合意書の場合も、どの取り決めに基づく請求かを明確にします。
4. 未払いの対象月と月ごとの金額
「未払いがあります」だけではなく、何年何月分が未払いなのか、一部入金がある月はいくら不足しているのかを具体的に記載します。
5. 未払い養育費の合計額
対象月ごとの金額を合計し、請求額を明示します。今後支払期日が来る毎月の養育費と、すでに発生している未払い分は分けて記載してください。
6. 支払期限と振込先
相手がいつまでに、どの口座へ、いくら振り込めばよいかを明確にします。「至急」ではなく、年月日を特定した期限を記載します。
7. 期限までに支払いがない場合の対応
強制執行へ使える書面がある方は強制執行、書面がない方は養育費請求調停など、実際に予定している対応を簡潔に記載します。できない手続を断定的に書いたり、勤務先やSNSへの連絡を予告したり、面会交流を支払いの交換条件にしたりしないでください。
内容証明郵便で送る未払い養育費請求書の完成文例
次の文例は、2024年3月15日作成の公正証書で、毎月末日までに月額5万円を支払う取り決めがあり、2026年6月分から8月分までの3か月分、合計15万円が未払いになっている場合です。
日付・住所・氏名・子どもの氏名・公正証書の作成日・未払い月・金額・振込先は、必ずご自身の取り決めと入金履歴に合わせて置き換えてください。
この文例で最も重要なのは、未払い月、月額、合計額、支払期限が一致していることです。公正証書に強制執行認諾文言がない場合や、離婚協議書・口約束しかない場合は、最後の一文をそのまま使わないでください。「家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てます」など、実際に予定している対応へ置き換えます。
分割払いを受け入れる場合は、1回当たりの金額、各支払日、未払い分とは別に今後の毎月分も支払うことを書面で明確にします。相手が提案していない分割条件を、請求書側で一方的に確定したようには書かないでください。
郵便局の窓口から内容証明郵便を出す方法
郵便局へ持参するものは、受取人へ送る内容文書1通、差出人用と郵便局保管用の謄本2通、差出人・受取人の住所氏名を書いた封筒、郵便料金です。訂正に備えて印鑑も持参すると安心です。
- 受取人へ送る内容文書 1通
- 内容文書と同じ内容の謄本 2通
- 差出人・受取人の住所氏名を書いた封筒
- 基本料金・一般書留・内容証明・配達証明の料金
- 訂正が必要になった場合に備えた印鑑
内容証明は一般書留で差し出す必要があります。すべての郵便局で取り扱うわけではないため、持参する前に取扱いの有無と受付可能な曜日を確認してください。
窓口で使う謄本は、横書きの場合、1行20字以内・1枚26行以内、1行13字以内・1枚40行以内、または1行26字以内・1枚20行以内のいずれかで作成します。縦書きは1行20字以内・1枚26行以内です。謄本が2枚以上になる場合は、つづり目への契印も必要です。
2026年9月確認時、定形郵便物で謄本1枚の内容証明を送る場合は、基本料金110円、内容証明480円、一般書留480円の合計1,070円です。配達証明を差出時に付ける場合は350円が加わります。料金は改定されるため、発送時点の日本郵便の案内を確認してください。
e内容証明ならインターネットから24時間申し込めます
e内容証明は、日本郵便の専用サービスを利用してインターネットから差し出す方法です。利用登録、指定の文書形式、支払方法等の準備は必要ですが、郵便局の窓口へ内容文書と謄本を持参する必要はありません。
窓口の字数・行数へ文書を合わせることが難しい場合や、郵便局の営業時間内に出向けない場合は、e内容証明も選択肢になります。配達証明も付けられます。
発送後は謄本・受領証・配達記録を一緒に保管します
発送後は、差出人用の謄本、郵便局の受領証、追跡番号、配達証明を一緒に保管してください。請求内容だけでなく、いつ差し出し、いつ相手へ配達されたかを後から確認できるようにするためです。
相手から返答や支払予定が届いた場合は、その文章と日時も保存してください。一部の支払いがあった場合は、どの月の養育費に充てる支払いかを文章で確認すると、未払い残額を整理しやすくなります。
内容証明による催告の効果は、時効を6か月間止めることです
内容証明に記載した請求が民法上の催告に当たる場合、その時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。
ただし、内容証明郵便を送っただけで時効が更新されるわけではありません。完成猶予中に再び催告しても、同じ完成猶予の効力は生じません。
内容証明を無視された後は、手元の書面によって次の対応が変わります
強制執行認諾文言付き公正証書、調停調書、審判書、判決書などがある場合は、内容証明を何度も送り続けるより、給与や預貯金等の強制執行へ進めるかを確認する段階です。
内容証明郵便自体は債務名義ではありません。内容証明だけを使って差押えを申し立てることはできません。
取り決めがない場合や、直ちに強制執行へ使える書面がない場合は、内容証明だけで月額や未払い額を確定できません。話し合いがまとまらなければ、養育費請求調停で月額・支払開始時期・未払い分の扱いを求める方法があります。
内容証明を送る前に弁護士へ確認した方がよい場合
内容証明を送るかどうかは、取り決めの有無、未払いの期間、相手との連絡状況、時効、強制執行へ使える書面の有無によって判断が変わります。
特に、相手が未払い額を争っている、相手の住所が分からない、時効が迫っている、DVや嫌がらせがあり直接連絡したくない、強制執行へ使える書面があるか分からない場合は、発送前に相談することで、内容証明を送るべきか、別の手続へ進むべきかを整理できます。
相談するときは、養育費の取り決めが分かる書面、入金履歴、相手とのメッセージ、相手の住所が分かる資料を、手元にあるものから用意してください。弁護士法人ワンピース法律事務所では、内容証明を送る前の段階でも、送った後に返答がない場合でも、未払い養育費の回収についてLINEで相談を受け付けています。