未払い養育費は過去に遡って請求できる?時効と請求できる期間を弁護士が解説

弁護士
木村 和弘
養育費が支払われないまま何年も経つと、過去の分の未払いを今から相手に請求できるのか、いつまで請求できるのかが気になると思います。
離婚のときに、毎月いくらを、いつまでに支払うのかを決めていた場合は、支払われなかった月の養育費を過去に遡って請求できます。
ただし、養育費について何も決めないまま離婚していた場合は、過去の分の未払いをすべて請求できるわけではありません。過去に相手へ養育費を請求し、相手が支払うと答えていた場合や、実際に一部でも支払われていた場合は、そのときのやり取りや入金記録が、過去の未払い養育費を請求する際の大切な資料になります。
また、支払われなかった養育費をいつまでも請求できるわけではありません。請求できる期間には限りがあり、この期限のことを法律では時効といいます。長い間支払われていない場合は、古い未払い分から請求できなくなる可能性があります。
過去の未払い養育費を請求できるのは、どのような場合?
過去に支払われなかった養育費を遡って請求するときは、養育費について取り決めがあるか、未払い分が時効によって請求できなくなっていないかを確認しておくことが大切です。
過去の未払い養育費を請求するときは、毎月の金額と支払日を決めていたかどうかが大切になります。

例えば、離婚するときに「養育費として、毎月5万円を毎月末日までに支払う」と決め、その内容を離婚協議書、養育費に関する合意書、公正証書、調停調書などに残していた場合です。書面にこのような内容が書かれていれば、毎月の養育費について取り決めがあったことが分かります。
書面を作っていなくても、LINEやメールで「毎月5万円を払う」「毎月末日までに振り込む」と具体的にやり取りしていた場合は、養育費について取り決めがあったことを示せる場合があります。
また、古い未払い分には時効があります。時効の期間は、養育費をどのように決めたかによって異なります。
父母の話し合いで養育費を決めた場合は、各月の支払日から原則5年です。
離婚協議書や合意書で決めた場合だけでなく、公正証書を作った場合も、父母の話し合いで決めた養育費であれば、原則として5年で時効が完成します。
一方、家庭裁判所の調停・審判・裁判で、すでに支払日が来ている未払い養育費が確定した場合は、原則10年です。
例えば、父母の話し合いで決めた養育費が2021年10月分から支払われていない場合は、2021年10月分、11月分、12月分というように、未払いになった月ごとに5年の期間を数えます。
時効が近づくのは、最初に支払われなかった2021年10月分からです。一度に5年分すべての時効が来るわけではありません。
相手が時効を主張すると、時効が完成した月の養育費を支払ってもらうことは難しくなりますので、過去の未払い養育費を請求するためには、養育費について取り決めがあったか、最初に支払われなかった月はいつかを確認しておくことが重要です。
離婚時に養育費の取り決めをしていなかった場合、過去の養育費は請求できる?

離婚時に養育費の取り決めをしていなかった場合でも、相手へ過去の養育費を請求することはできます。
ただし、離婚時に取り決めをしていなかった期間の分について、相手が支払いに応じない場合は、受け取ることが難しくなります。
その期間については、毎月いくらを、いつまでに支払うのかが決まっていないためです。金額と支払日が決まっていなければ、過去の養育費が未払いだったとはいえません。
例えば、2021年に離婚し、養育費を決めないまま、2023年4月に初めて相手へ養育費を請求した場合を考えてみます。
この場合、2021年に離婚した時点からの全期間分が、そのまま未払い養育費として認められるわけではありません。相手が支払いに応じないときは、2023年4月に養育費を請求した時点からの分について、支払いを求めることになります。
養育費の取り決めがない場合に、過去分を請求するときの伝え方
養育費の取り決めがなかった場合に、初めて相手へ過去分を請求するときは、いきなり「過去の分を払ってください」と一方的に伝えると、トラブルにつながるおそれがあります。
子どもの生活のために、これまでの分も含めて養育費について話し合いたいことを、落ち着いて伝えるようにしてください。
相手に最初の連絡をするときは、過去の分も含めて養育費について話し合いたいこと、いつの分から支払いを始めてほしいのか、毎月の金額と支払日を決めたいことを、相手を責める言葉を使わずに伝えることが大切です。
相手がすぐに返事をしない場合も、送ったLINEやメールは残してください。いつ、どの時期からの養育費について相手へ請求したのかが分かる、大切な記録になります。
公正証書で養育費の取り決めをしてあるから、時効は関係ないと思っていませんか?

公正証書で養育費の取り決めをしていると、過去に未払いがあっても、公正証書があるからいつでも請求や差押えができると思われるかもしれません。
しかし、公正証書があっても、未払い養育費をいつまでも請求できるわけではありません。
父母の話し合いで養育費の金額と支払日を決め、その取り決めを公正証書にした場合、未払い養育費の時効は原則5年です。
「公正証書があるなら、時効は10年ではないか」と思われるかもしれません。
10年が基準になるのは、すでに未払いになっていた養育費について、家庭裁判所の調停・審判や裁判で支払いが決まった場合です。
公正証書で取り決めた未払い養育費は原則5年、家庭裁判所の調停・審判や裁判で決まった未払い養育費は10年です。
時効が近い未払い養育費は、内容証明郵便で請求する方法があります

時効が近い未払い養育費については、相手に内容証明を送るという方法があります。
内容証明郵便による請求が相手に届くと、時効の完成を6か月間猶予できます。
内容証明郵便は、相手へ未払い養育費を請求したことを記録に残すための郵便です。未払いとなっている月、各月の養育費の金額、合計額、支払ってほしい期限を記載することが大切です。
この6か月の間に、強制執行認諾文言がある公正証書、養育費を決めた調停調書や審判書がある場合には、給与や預金の差押えを申し立てる方法があります。差押えの手続が続いている間は、時効が完成しません。
公正証書や調停調書などがない場合も、内容証明郵便を送った後の6か月間に、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てて、未払い分を含めた養育費の支払いを求める方法もあります。
養育費の未払いを認めたLINEや一部入金があると、時効はどうなる?

相手がLINEやメールで、支払っていない養育費について「払う」「毎月○円ずつ払う」「今は払えないから待ってほしい」などと答えている場合は、未払い養育費を支払う義務があることを認めていることになります。
このように、相手が未払い養育費を払う義務があることを認めている場合は、時効が更新されます。
更新されると、それまで進んでいた時効はそこでいったん終わり、改めて進み始めます。
未払い養育費の一部として相手から振込みがあった場合も、未払い分を支払う義務があることを認めている証拠になることがあります。
ただし、LINEやメールに「また払う」とだけ書かれていて、何月分の養育費について、いくらを払うという話なのかが分からない場合は、どの未払い分について時効が更新されるのかがはっきりしません。
養育費の取り決めがなく、相手と話し合えない場合でも過去分を請求できる?

離婚したときに養育費を決めておらず、相手と話し合うこともできないと、過去の養育費をどのように請求すればよいのか分からず、困ることがあります。
このような場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立て、過去の養育費についても請求する方法があります。
例えば、離婚するときに養育費を決めておらず、その後も子どもの生活費を受け取っていないのに、相手が話し合いに応じないなどの場合です。
このようなときは、養育費請求調停を申し立て、過去の分を含めて養育費を請求できます。養育費請求調停では、調停委員が父母それぞれの考えを聞きながら、養育費の金額や、過去の分をどこまで請求するのかについて間に入って進めます。
ただし、離婚した日からの全期間分が、そのまま認められるとは限りません。いつから養育費を請求していたのか、相手との間でどのようなやり取りがあったのか、相手が支払うと言っていたことがあるのかなどを踏まえ、過去分をどこまで請求できるかが話し合われます。

弁護士
木村 和弘
過去の未払い養育費を相手に請求したい場合は、弁護士に無料で相談できますのでお気軽にご相談ください。
過去の未払い養育費は、離婚時にどのような取り決めをしていたか、いつから支払われていないか、相手が未払いを認めているかによって、請求できる範囲や進め方が変わります。
時効が近い月があるのか、相手へどのように伝えるのか、調停や差押えへ進める書面があるのかなど、状況に合わせて弁護士にLINEでご相談いただけます。
相談料は何度でも無料です。まだ何から始めればよいか分からない段階でも、お気軽にご相談ください。
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未払い養育費を過去に遡って請求する場合のよくある質問
離婚協議書や合意書に養育費を書いていても、支払日や開始時期がはっきりしない場合は、過去分を請求できますか?
養育費の金額だけが書かれていて、いつから支払うのか、毎月いつまでに支払うのかがはっきりしない場合もあります。
このようなときは、離婚協議書や合意書だけではなく、離婚前後のLINEやメール、最初に入金された日、これまでの振込履歴などを見て、養育費をいつから支払う約束だったのかを考えます。
書面に支払日が書かれていないからといって、過去の分をすぐに請求できなくなるわけではありません。ただし、どの月の分から未払いになっているのかを、ほかの記録も合わせて判断することになります。
相手が一部だけ養育費を払っていた場合、残りの分を遡って請求できますか?
一部だけ入金があった場合でも、残っている未払い分を請求できることがあります。
ただし、その入金がどの月の養育費として支払われたのかが大切です。たとえば、相手がLINEで「6月分として2万円を振り込む」と伝えていれば、その入金は6月分に充てたものとして考えやすくなります。
一方で、連絡がないまま一部だけ振り込まれている場合は、どの月の分として扱うのかが争いになることがあります。振込日、金額、相手とのやり取りを残し、未払い月ごとの金額を整理します。
相手がLINEやメールで未払い分を払うと言っているのに、実際には払わない場合は?
相手が、未払いの養育費があることを前提に「来月払う」「毎月○万円ずつ払う」などと伝えている場合、そのやり取りは未払い分を支払う義務があることを認めている記録になることがあります。
ただし、「また連絡する」「考えておく」など、未払い分を支払うことをはっきり認めていない返事だけでは、同じようには扱えません。
相手から届いたLINEやメールは、必要な部分だけを切り取らず、前後の流れが分かる状態で保存しておくことが大切です。
相手が「昔の分は払わない」と言っている場合、過去の未払い養育費は請求できませんか?
相手が「昔の分は払わない」と言っただけで、過去の未払い養育費を請求できなくなるわけではありません。
養育費についていつ、いくら、いつまでに支払うと決めていたのか、未払い月の支払日からどのくらい経っているのか、相手が未払いを認めた記録があるのかによって、請求できる範囲は変わります。
相手が過去分の支払いを拒否しているときは、未払い月と金額を整理したうえで、話し合いで解決できるのか、養育費請求調停などを利用するのかを考えることになります。
公正証書や調停調書がある場合、過去の未払い分だけを差し押さえることはできますか?
養育費について、強制執行を受けてもよいという内容が書かれた公正証書や、調停調書・審判書がある場合は、すでに支払日を過ぎた未払い分について、給与や預金の差押えを申し立てられることがあります。
ただし、差押えをする前に、どの月の養育費が未払いなのか、これまでにいくら入金されているのかを整理する必要があります。
公正証書があっても、強制執行に使える内容になっているかで進め方が変わります。手元の書面を見ながら、過去分の回収に使える書面かどうかを判断します。
相手の勤務先や銀行口座が分からないと、過去の未払い養育費は回収できませんか?
相手の勤務先や銀行口座が分からないからといって、過去の未払い養育費を回収する方法がなくなるわけではありません。
調停調書や強制執行に使える公正証書などがある場合は、裁判所の手続を利用して、相手の財産や勤務先に関する情報を調べられることがあります。
利用できる手続は、手元にある書面や、離婚した時期、相手の状況によって異なります。過去分を回収したいときは、書面があるかどうかだけで諦めず、どの手続を使えるのかを検討します。