養育費を支払うと決めたのに相手が支払わないとき、家庭裁判所へ間接強制を申し立てられる場合があります。
間接強制とは、裁判所が相手へ「期限までに養育費を支払わなければ、養育費とは別に間接強制金の負担が生じる」と告げ、相手自身からの支払いを促す手続です。相手の給与や預貯金を、この手続だけで直接取り上げるものではありません。
養育費の間接強制は、どのような場合に使えるのでしょうか?
間接強制を申し立てるには、まず、養育費の金額や支払日を定めた書面が必要です。調停調書、審判書、判決書、強制執行を受けても異議がないという内容が入った公正証書などがこれに当たります。
そのうえで、すでに支払日を過ぎた養育費があり、相手に支払う力があることが必要です。
- 養育費の金額と支払日を定めた、法的な効力のある書面がある
- 支払日を過ぎても入金されていない養育費がある
- 相手に収入や資産があり、養育費を支払える状態にある
例えば、月5万円の養育費が3か月支払われていない場合
調停調書で「毎月末までに5万円を支払う」と決まっているのに、1月分から3月分まで入金がなく、未払いが合計15万円になっているとします。相手は働いて収入を得ていますが、連絡をしても支払いが再開されません。
この場合、養育費を受け取る側は、調停をした家庭裁判所へ間接強制を申し立てられます。裁判所は、相手の収入や支払わない理由を確認したうえで、「未払いの15万円を期限までに支払い、従わなければ間接強制金も支払う」という決定を出すか判断します。
まず、間接強制に使える書面があるかを確認してください
家庭裁判所で養育費を決めた場合
調停で決めた場合は調停調書、審判で決まった場合は審判書、裁判で決まった場合は判決書を確認してください。書面には、毎月の養育費、支払日、いつまで支払うかが記載されています。
申立てには、その書面の正本と、書面が相手にも届いたことを証明する「正本送達証明書」が必要です。
公正証書で養育費を決めた場合
公正証書に、養育費を支払わないときは直ちに強制執行を受けても異議がないという内容が入っていれば、間接強制に使える場合があります。公正証書の場合は申立先や必要書類が異なることがあるため、提出前に裁判所へ確認してください。
父母だけで作った合意書やLINEしかない場合
父母だけで作った離婚協議書や合意書、LINE・メールのやり取りだけでは、通常、そのまま間接強制を申し立てられません。先に家庭裁判所の調停などで、養育費を法的に定める手続が必要になります。
調停調書や公正証書など、強制執行に使える書面をまとめて「債務名義」といいます。手元の書面が使えるか分からない場合は、次の記事で種類と確認箇所を説明しています。
養育費の間接強制を申し立てる方法
家庭裁判所で決めた養育費については、その調停・審判・裁判をした家庭裁判所へ申し立てます。申立書を提出した後は、相手にも申立書の写しが届き、裁判所が双方の説明と資料を確認して判断します。
申立てから決定までの5段階- 01 未払いになった月と合計額を整理する — 通帳や振込履歴を見ながら、何月分から入金がないのか、未払いはいくらかを確認します。
- 02 使える書面と送達証明書をそろえる — 調停調書、審判書、判決書などの正本と、相手にも届いたことを示す正本送達証明書を確認します。
- 03 申立先の裁判所へ書類を提出する — 調停・審判・裁判で養育費を決めた場合は、その手続をした家庭裁判所へ申立書と必要書類を出します。
- 04 相手にも申立書が届く — 裁判所から相手へ申立書の写しが送られ、支払わない理由や収入・生活状況について説明を求めます。
- 05 支払期限と間接強制金が決まる — 裁判所が双方の説明と資料を確認し、いつまでに支払うか、従わない場合にどのような金銭負担が生じるかを決めます。
申立てに必要な費用は、原則として収入印紙2,000円と連絡用の郵便料です。郵便料と申立書の部数は裁判所によって異なるため、提出前に申立先の裁判所へ確認してください。
まだ支払日が来ていない養育費も、申立てに含められるのでしょうか?
毎月支払う養育費の一部がすでに未払いになっている場合は、申立てから6か月以内に支払日が来る分も、間接強制の申立てに含められることがあります。
例えば、3月31日が支払日の養育費が入金されず、4月10日に申し立てるとします。この場合は、3月分の未払いに加え、条件を満たせば、4月末から9月末までに支払日が来る各月分も申立てへ含められることがあります。
これは、6か月分をすぐに前払いさせるという意味ではありません。それぞれの月の支払日が来ても入金されなかったときに、間接強制の決定がその月分にも及ぶようにする仕組みです。
間接強制金の金額は、どのように決まるのでしょうか?
間接強制金に「1日いくら」「未払い額の何%」という一律の決まりはありません。申立人が希望した金額が、そのまま認められるわけでもありません。
裁判所は、養育費が支払われないことで受取側と子どもの生活にどのような支障が出ているか、相手にどの程度の収入や資産があるか、これまで支払ってきたか、それとも長く未払いが続いているかを確認します。相手の説明も聴いたうえで、支払いを促すために相当な金額と支払期限を決めます。
間接強制金は刑事事件の罰金ではなく、養育費の支払いを促すために裁判所が定める金銭負担です。事件ごとに事情が異なるため、申立て前に金額を断定することはできません。
相手に支払う力がないときは、間接強制が認められないことがあります
相手が病気や失業で収入を失い、本当に養育費を支払える状態ではない場合や、支払うことで生活が著しく苦しくなる場合は、間接強制の決定が出ないことがあります。
相手が「お金がない」と言うだけで決まるわけではありません。裁判所は、相手から提出された収入や生活状況の資料を確認したうえで、支払う力があるかを判断します。
間接強制の決定が出た後は、どうなるのでしょうか?
裁判所が定めた期限までに相手が養育費を支払えば、間接強制によって支払いを促す目的は果たされます。相手が期限を守らなければ、決定の内容に従って間接強制金の負担が生じます。
ただし、裁判所が相手の口座から養育費や間接強制金を引き出し、自動的に振り込むわけではありません。決定後も相手が支払わないときは、未払い養育費と間接強制金を実際に回収するため、別の手続を検討することになります。
間接強制を考えるときは、手元の書面と未払い月を確認してください
最初に確かめたいのは、養育費を決めた書面の名前と、最後に入金された月です。調停調書などがあり、支払日を過ぎた養育費がある場合は、間接強制を申し立てられる可能性があります。
相手の勤務先や銀行口座が分からなくても、この手続の申立てはできます。書面が使えるか、未払い額をどのように整理すればよいか分からないときは、書面と入金履歴を手元に置いて相談すると状況を伝えやすくなります。