財産開示手続は、未払い養育費を支払わない相手に、裁判所で自分の財産を明らかにしてもらう手続です。相手は財産目録を提出し、裁判所が指定した期日に出頭して、給料、預貯金、不動産などの財産状況を説明します。
勤務先も銀行口座も分からなければ、養育費を回収したくても、どの財産を対象にすればよいか分かりません。そのようなときに、相手本人から財産の説明を受けるための方法が財産開示手続です。
財産開示手続を利用すると、相手のどのような財産が分かるのでしょうか?
相手は、裁判所へ提出する財産目録に、自分が持つ財産の内容を記載します。財産開示期日では、その目録をもとに、給料を受け取っている勤務先、預貯金のある金融機関、不動産、保険、株式などについて説明します。
財産開示を申し立てただけで、養育費が振り込まれたり、給料や預貯金が差し押さえられたりするわけでもありません。開示された情報は、未払い養育費を回収するための次の手続に使います。
例えば、勤務先も口座も分からない場合に利用します
公正証書で養育費を決めたものの、数か月前から支払いが止まり、相手からの返事もないとします。転職したらしく現在の勤務先は不明で、以前聞いていた銀行口座も使われているか分かりません。
この場合、財産開示手続の条件を満たせば、相手に財産目録を提出してもらい、裁判所の期日で現在の財産状況を説明してもらうことができます。
財産開示は、相手の財産に心当たりがないときに、相手本人から情報を得るための手続です。ただし、「勤務先も口座も分からない」という事情だけで、必ず利用できるわけではありません。
養育費の財産開示を申し立てられるのはどのような場合でしょうか?
調停調書、審判書、判決書、強制執行認諾文言のある公正証書など、養育費を法的に請求できる書面がある場合は、その書面に基づいて申し立てます。相手へ書面が送達されていることや、支払期限を過ぎた養育費があることも確認されます。
さらに、次のどちらかに当てはまることを資料で示します。
- すでに強制執行等をしたものの、未払い養育費を全額回収できなかった
- 通常行うべき財産調査をしても、分かっている財産だけでは未払い養育費を全額回収できない見込みがある
単に「財産が分からない」と伝えるだけでは足りません。どこまで調べ、どの財産が分からなかったのかを財産調査結果報告書等で示します。
申立て前に確認しておきたい4つのこと
- 養育費を決めた書面は、調停調書・審判書・判決書・公正証書のどれか
- 何月分から支払われておらず、未払いの合計はいくらか
- 相手の現在の住所はどこか
- 勤務先、預貯金、不動産などについて、これまでに何を調べたか
債務名義の種類や氏名・住所の変更状況によって、裁判所へ提出する書類は異なります。住所や氏名が書面作成時から変わっている場合は、現在の情報とのつながりを示す住民票・戸籍関係書類等が必要になることがあります。
財産開示の申立てには、どのくらい費用がかかりますか?
申立手数料は、1件につき収入印紙2,000円です。このほかに、裁判所が相手へ書類を送るための郵便料がかかります。
郵便料の金額や納め方は裁判所によって異なります。住民票や戸籍関係書類等を取得する場合は、その発行手数料も必要です。申立て前に、申立先の地方裁判所へ最新の金額と納付方法を確認してください。
申立てには、どのような書類が必要ですか?
財産開示の申立てには、主に次の書類が必要です。
- 財産開示手続申立書
- 当事者目録と請求債権目録
- 調停調書、審判書、判決書、公正証書など、養育費を法的に請求できる書面
- これまでに行った財産調査の内容が分かる財産調査結果報告書等
書面の種類によっては、正本のほかに送達証明書や確定証明書等が必要です。書面に記載された氏名・住所が現在と異なる場合は、住民票や戸籍関係書類等で、その人物が同一であることを示します。必要な書類と部数は事案によって異なるため、提出前に申立先の裁判所へ確認してください。
申立てから財産開示期日までは、どのように進むのでしょうか?
申立先は、原則として相手の現在の住所地を管轄する地方裁判所です。申立てから期日までの日数は一律ではありません。提出書類の確認、実施決定、相手への送達、決定の確定を経てから、財産目録の提出期限と財産開示期日が指定されます。
申立てから財産開示期日までの5段階- 01 養育費の書面と未払い額を確認する — 調停調書、公正証書等の書面と入金履歴から、未払いになった月と合計額を確認します。
- 02 相手の住所地を管轄する地方裁判所へ申し立てる — 申立書、当事者目録、請求債権目録、養育費の書面、財産調査結果報告書等を提出します。
- 03 裁判所が申立ての条件を確認する — 条件を満たしていると認められると実施決定が出され、その決定が相手へ送達されます。
- 04 相手が財産目録を提出する — 実施決定が相手へ届いて確定した後、裁判所が財産目録の提出期限と財産開示期日を指定します。
- 05 財産開示期日で財産状況の説明を受ける — 相手が財産目録に沿って説明し、申立人または代理人弁護士は裁判所の許可を得て質問できます。
財産開示期日で、相手は何を説明するのでしょうか?
相手は、提出した財産目録に基づき、現在の財産状況を説明します。給料を受け取っている勤務先、預貯金口座、不動産など、未払い養育費の回収に関係する財産が中心です。
申立人または代理人弁護士は、裁判所の許可を得て相手へ質問できます。ただし、養育費の回収と関係がない質問や、根拠のないまま財産を探り続ける質問は認められません。
相手が出頭しない、または事実と異なる説明をすると、どうなるのでしょうか?
相手が正当な理由なく財産開示期日に出頭しないと、相手から財産の説明を受けられないまま、財産開示手続は原則として終了します。相手が欠席した場合に、裁判所が代わりに勤務先や銀行口座を調べたり、未払い養育費を取り立てたりすることはありません。
そのため、相手が出頭せず財産情報を得られなかった場合は、財産が分からない状態のまま手続が終わることがあります。今後どの方法で財産情報を確認し、養育費の回収へ進むかは、手元の書面や既に分かっている情報をもとに弁護士へ相談できます。
財産開示で分かった情報は、養育費の回収にどう使うのでしょうか?
財産開示で勤務先や預貯金等が分かっても、その時点で養育費が支払われるわけではありません。判明した財産から未払い養育費を回収するには、その財産を対象とする手続が別に必要です。
財産開示手続を利用する前に、養育費を決めた書面、未払いの期間と金額、相手の住所、これまでに調べた財産情報を確認しておくと、申立てに必要な資料が分かりやすくなります。