離婚前に養育費を取り決めるときは、毎月いくら支払うかだけでなく、支払いを始める月や終える時期、毎月の支払日まで具体的に決めておくことが大切です。
進学や入院でまとまった費用が必要になった場合の負担、収入などが変わったときの見直し、合意内容を残す書面まで決めておくと、離婚後に父母の認識が分かれる場面を減らせます。
最初に、離婚前に決めておきたい9つの項目を整理しておきましょう。
養育費の取り決めでは9つの項目を決めます
離婚前に決めておきたい9つの項目- 1 毎月の金額 — 収入・人数・年齢をもとに決めます
- 2 支払いの開始 — 何年何月分からかを決めます
- 3 支払いの終期 — 年齢と終了年月を決めます
- 4 毎月の支払日 — 日付と休日の場合を決めます
- 5 振込先・手数料 — 口座と負担する人を決めます
- 6 進学・医療費 — 対象・割合・期限を決めます
- 7 事情変更時の見直し — 連絡方法と資料を決めます
- 8 支払いが遅れた場合 — 連絡方法と遅延損害金を決めます
- 9 合意を残す書面 — 合意書・公正証書などを選びます
9項目を一度に決めきれない場合は、子どもの生活に直結する月額、開始時期、支払日、終期から順に話し合ってみましょう。
決まった内容は、その都度文章にして、父母の認識が同じかを確かめながら進めることが大切です。
1. 月額は父母の収入・子どもの人数と年齢をもとに決めます
月額の目安になるのは、裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表です。
算定表では、父母それぞれの収入、子どもの人数、子どもの年齢から、標準的な月額の目安を見ます。算定表の金額だけで決めるのではなく、私立学校の学費や継続的な医療費など、ご家庭に特別な事情がある場合は、その負担を分けて考えましょう。
2. 何年何月分から支払いを始めるか決めます
支払いを始める時期は、「離婚後から」ではなく、何年何月分から支払うかまで決めます。
離婚した月からにするのか、翌月からにするのかを話し合い、最初の支払日も一緒に書いておきましょう。月の途中で離婚する場合は、その月を1か月分とするのか、日割りにするのかも決めておくと、最初の支払いで認識が分かれにくくなります。
3. 支払期間は年齢だけでなく年月まで決めます
「成人するまで」という書き方だけでは、18歳、20歳、大学卒業時のどこまでを指すのか、父母の理解が分かれることがあります。
「子どもが満20歳に達する日の属する月まで」「大学卒業予定の2038年3月まで」のように、終了する年月が分かる書き方にしましょう。
進学しなかった場合、浪人・留年した場合、就職した場合にどうするかも、分かる範囲で決めておくと安心です。
4. 毎月の支払日は日付まで決めます
支払日は「毎月支払う」ではなく、「毎月25日まで」「毎月末日まで」のように、日付まで決めます。
支払う側の給料日も踏まえ、継続しやすい日を選びましょう。支払日が金融機関の休業日に当たる場合は、前営業日と翌営業日のどちらにするかも書いておくと明確です。
5. 振込先と手数料を負担する人を決めます
振込先は、銀行名、支店名、口座種別、口座番号、名義人まで書きます。振込手数料を支払う側と受け取る側のどちらが負担するかも決めておきましょう。
口座を変更する場合に、いつまでに、どの連絡方法で伝えるかも決めておくと、振込先が分からないことを理由に支払いが止まる事態を防ぎやすくなります。
6. 進学・医療などの特別費用をどう負担するか決めます
入学金、授業料、受験料、長期の通院、手術などは、毎月の養育費とは別に大きな負担が生じることがあります。
金額を離婚前に決められないときは、「別途協議する」だけで終わらせないことが大切です。対象にする費用、支出前に連絡する時期、見積書や領収書の共有方法、負担割合、支払期限まで決めておきましょう。
例えば、「大学の入学金と授業料は、資料を共有したうえで父母が2分の1ずつ負担する」のように、判断の手順と割合が分かる形にします。
7. 収入や進路が変わった場合の見直し方法を決めます
転職、失業、病気、子どもの進学、再婚や養子縁組など、取り決めた後に父母や子どもの状況が変わることがあります。
事情が変わっただけで、取り決めた金額が自動的に変わるわけではありません。どのような変化があったときに改めて話し合うか、いつまでに連絡するか、収入資料などをどのように共有するかを決めておきましょう。
父母で合意できない場合は、家庭裁判所へ増額または減額の調停を申し立てる方法があります。
8. 支払いが遅れたときの連絡方法と遅延損害金を決めます
支払日を過ぎた場合に、LINE、メール、書面のどの方法で連絡するかを決めます。連絡先が変わった場合の通知方法も一緒に書いておきましょう。
遅延損害金を定める場合は、利率だけでなく、いつから発生するか、いつ支払うかまで明確にします。金額や書き方に迷う場合は、合意書を作る前に弁護士や公証人へ相談する方法があります。
9. 合意内容を残す書面を選びます
養育費の取り決めは、口約束だけにせず、合意内容を文章に残すことが大切です。
どの書面が合うかは、父母がすでに合意できているか、将来支払いが止まった場合の手続まで考えるかによって変わります。
| 書面 |
作成する場面 |
主な特徴 |
| 合意書・離婚協議書 |
父母が合意できている |
月額、支払日、期間などを父母の書面として残す |
| 強制執行認諾文言付き公正証書 |
父母が合意でき、未払い時の強制執行も考える |
一定額の金銭支払と強制執行認諾を記載すれば、裁判手続を経ず強制執行を申し立てられる |
| 調停調書 |
父母だけでは合意できず、家庭裁判所の調停で合意した |
調停で決まった内容が記載され、未払い時の強制執行に使える |
公正証書は、公証人が養育費の金額を決める書面ではありません。父母が合意した内容をもとに作成されるため、月額や支払条件を先に整理しておく必要があります。
2026年4月1日以降は、養育費について文書で取り決めていれば、一定の範囲で先取特権に基づく差押えを申し立てられる制度も始まっています。ただし、書面の内容や手続には要件があり、書面があれば必ず回収できるという制度ではありません。
取り決めがない場合の法定養育費は正式な合意までの暫定制度です
2026年4月1日以降に養育費を取り決めないまま離婚した場合、離婚時から引き続き子どもを監護する親は、他方の親へ、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できます。
ただし、法定養育費は養育費の標準額や下限額ではありません。正式な取り決めができるまでの暫定的・補充的な制度です。
法定養育費があるから決めなくてよいと考えず、父母の収入や子どもの人数・年齢、ご家庭の事情に合う月額と支払条件を取り決めるようにしてください。
相手と合意できない場合は養育費請求調停を利用できます
相手が話し合いに応じない場合や、月額・支払期間などで合意できない場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てる方法があります。
直接やり取りすることに不安がある場合も、無理に二人だけで話し合う必要はありません。弁護士を通じて連絡する方法もあります。
ご相談の際は、父母それぞれの収入、子どもの人数と年齢、希望する月額と支払期間、手元にある離婚協議書やLINEのやり取りを分かる範囲でお聞かせください。どの項目から決めればよいかを一緒に整理します。