父母が養育費の月額や支払期間などに合意できていれば、その内容を公正証書にできます。作成するときは、公証役場へ連絡し、合意内容と必要書類を提出して、公証人が作成した文案を父母で確かめます。
公正証書は、公証人が養育費の金額を決める手続ではありません。父母が合意した内容を、公証人が公文書として作成するものです。
未払いになったときに公正証書を使って強制執行を申し立てるためには、金銭の支払内容に加えて、強制執行認諾文言を入れる必要があります。
養育費の公正証書でできること
公正証書にすると、月額、支払日、支払期間、振込先、進学や医療にかかる費用など、父母が合意した内容を明確な文章にできます。
強制執行認諾文言を入れた公正証書で、一定額の養育費について取り決めておけば、支払いが止まった場合に、その公正証書を使って給与や預貯金の差押えを申し立てられます。
ただし、公正証書があれば未払い分を必ず回収できるわけではありません。差押えには相手の勤務先や財産の情報が必要になる場合があり、請求する内容に応じた書類や手続も必要です。
公証役場へ連絡する前に養育費の内容を決めます
公証人は、父母に代わって養育費の条件を決めません。まず、次の内容について父母で合意しておきましょう。
| 決める内容 |
書き方の例 |
| 毎月の養育費 |
子ども1人につき月額5万円 |
| 支払開始と終期 |
2026年10月分から、満20歳になる月まで |
| 毎月の支払日 |
毎月末日まで。休業日の場合は前営業日 |
| 振込先と手数料 |
指定口座へ振込。手数料は支払う側の負担 |
| 進学・医療などの費用 |
対象、資料の共有、負担割合、支払期限 |
| 事情が変わった場合 |
収入や進路が変わった場合の連絡と協議方法 |
| 住所・勤務先の変更 |
通知の期限と方法。安全上伝えない事情がある場合は公証人へ相談 |
| 未払い時の対応 |
強制執行認諾文言を入れる |
養育費の公正証書は5つの手順で作ります
公正証書を作る5つの手順- 1 合意内容を整理する — 月額・支払日・期間などを一つのメモにまとめます
- 2 公証役場を予約する — 作成したい内容と強制執行認諾の希望を伝えます
- 3 必要書類を提出する — 本人確認資料・戸籍謄本・合意メモなどを送ります
- 4 文案を確かめる — 金額・年月・口座・認諾文言を一項目ずつ見ます
- 5 公正証書を受け取る — 本人確認後に手数料を支払い、正本・謄本を受け取ります
1. 養育費の合意内容を整理します
月額、支払日、支払期間、振込先、特別費用などを父母で話し合い、一つのメモにまとめます。
公正証書には養育費だけでなく、財産分与、慰謝料、面会交流などを一緒に記載することもできます。何を記載するかによって必要書類や手数料が変わるため、養育費以外の合意も一覧にしておきましょう。
2. 公証役場を選んで予約します
作成を希望する公証役場へ連絡し、「養育費について強制執行認諾文言付きの公正証書を作りたい」と伝えます。
公証役場には管轄による制限はないため、利用しやすい場所へ相談できます。対面だけでなく、Web会議を利用できる場合もあります。利用条件や本人確認の方法は、予約時に尋ねてください。
3. 必要書類と合意内容を提出します
公証役場から案内された方法で、本人確認資料、戸籍謄本、合意内容をまとめたメモなどを提出します。
必要書類は、離婚前か離婚後か、養育費以外の内容も記載するか、本人または代理人のどちらが手続をするかによって変わります。
4. 公証人が作成した文案を確かめます
公証人が資料と合意内容をもとに文案を作成します。父母で、金額、年月、口座、氏名などに誤りがないかを一項目ずつ確かめましょう。
未払い時の強制執行を考えている場合は、強制執行認諾文言が入っているかも確認するようにしてください。
5. 本人確認後に公正証書を受け取ります
予約した日に、父母双方または代理人が本人確認を受け、公証人から公正証書の内容の説明を受けます。手数料を支払い、正本や謄本を受け取ります。
Web会議を利用する場合の署名や本人確認、交付方法は、利用する公証役場の案内に従ってください。受け取った正本・謄本は、すぐに確認できる場所へ保管しておきましょう。
養育費の公正証書に必要な書類
養育費を中心とする離婚給付契約公正証書では、次の資料を準備します。
| 資料 |
準備するもの |
| 父母それぞれの本人確認資料 |
運転免許証と認印、マイナンバーカードと認印、印鑑登録証明書と実印など、案内された組み合わせ |
| 戸籍謄本 |
離婚前は現在の家族全員が載るもの。離婚後は父母双方の離婚後のもの |
| 合意内容が分かる資料 |
月額、支払日、期間、振込先などをまとめたメモや合意書案 |
養育費以外の内容を公正証書に入れる場合や、代理人が手続をする場合は、追加資料が必要です。
| 公正証書に入れる内容・手続 |
追加資料の例 |
| 不動産の財産分与 |
登記事項証明書、固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書 |
| 年金分割 |
基礎年金番号が分かる年金手帳、年金情報通知書など |
| 代理人による手続 |
委任状、本人の印鑑登録証明書、代理人の本人確認資料 |
印鑑登録証明書などは発行から3か月以内のものが求められます。公正証書の内容や公証役場によって追加資料が必要になることがあるため、取得する前に予約先へ確認するようにしてください。
公正証書の費用は養育費5年分をもとに計算します
公正証書の基本手数料は、法律行為によって得られる利益を金額にした目的価額によって決まります。
養育費のように定期的に支払うお金は、支払期間が5年を超える場合でも、手数料計算に使う目的価額は5年分が上限です。2025年10月1日から適用されている手数料を、養育費だけを記載する場合で計算すると、次のようになります。
| 毎月の養育費 |
5年分の目的価額 |
基本手数料 |
| 3万円 |
180万円 |
7,000円 |
| 5万円 |
300万円 |
13,000円 |
| 8万円 |
480万円 |
13,000円 |
| 10万円 |
600万円 |
20,000円 |
この金額に、紙の正本・謄本を交付する場合は1枚300円、正本・謄本の送達は1,600円、送達証明は300円などが加わります。
同じ公正証書に財産分与や慰謝料も記載する場合は、それぞれ別の法律行為として手数料を計算し、合計します。そのため、実際の総額は合意内容と証書の枚数によって変わります。
強制執行に使うには強制執行認諾文言が必要です
相手が養育費を支払わない場合に、公正証書を使って直ちに強制執行を申し立てるためには、一定額の金銭支払を定めたうえで、相手が強制執行を受けることを認める文言を入れます。
これは書き方を理解するための例です。実際の公正証書では、公証人が父母の合意内容を確認し、正式な文案を作成します。
公証役場へ連絡するときは、「養育費が支払われない場合に、強制執行を申し立てられる内容にしたい」と伝えてください。
相手が公正証書の作成に応じない場合は調停を利用できます
公正証書は、父母が養育費の内容に合意していることが前提です。相手が月額や支払期間に合意しない場合や、公正証書の作成に協力しない場合は、一方だけで合意内容を公正証書にすることはできません。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てる方法があります。調停で合意すれば、合意内容が調停調書に記載されます。相手が支払わないときは、調停調書を使って強制執行を申し立てられます。
離婚後でも父母が合意できれば公正証書を作れます
離婚後であっても、父母が養育費の内容に合意し、公正証書の作成に協力できれば、手続を進められます。
すでに養育費が支払われていない場合は、未払い額と支払期限、現在持っている離婚協議書やLINEの合意内容、相手の連絡先を整理してください。相手が話し合いに応じない場合は、公正証書の作成ではなく、調停や強制執行など別の方法を検討します。
ご相談の際は、父母が合意できている内容、子どもの人数と年齢、希望する月額と支払期間、手元の書面を分かる範囲でお聞かせください。公正証書にする内容と、先に話し合う必要がある項目を一緒に整理します。