住宅ローンの支払いを理由に「養育費は払えない」と言われると、ローンが優先されるのか、養育費を減らさなければならないのか迷うことがあります。
住宅ローンがあるという理由だけで、養育費が0円になったり、自動的に減額されたりするわけではありません。
ただし、受け取る側と子どもがローンの対象となる家に住んでいる場合は、相手が住居費の一部を負担しているとして、養育費の金額を決める際の事情になることがあります。
「ローンがあるか」だけではなく、誰がその家に住んでいるか、住居費を誰が負担しているかを分けて考えることが大切です。
住宅ローンを返していても、それだけで養育費が0円になるわけではありません
養育費は、子どもの生活に必要な費用を、父母がそれぞれの経済力に応じて分担するものです。
支払う側が自分の住む家の住宅ローンを返済していても、その支出だけを理由に養育費の支払いを断ることはできません。ローン返済額が多いというだけで、養育費が当然に下がるわけでもありません。
養育費の目安は、まず父母双方の収入、子どもの人数・年齢を養育費算定表へ当てはめて考えます。
算定表の金額からローン返済額をそのまま差し引くことはできません
養育費算定表の基礎となる考え方では、収入から税金や仕事に必要な費用とともに、標準的な住居関係費などを差し引いて、養育費に充てられる基礎収入を計算しています。
そのため、相手が毎月返済している住宅ローンの全額を、算定表の養育費からそのまま引くわけではありません。「ローンが月8万円だから、養育費を8万円減らす」という計算にはならないということです。
実際のローン負担を個別に見る場面はありますが、返済額の何割を考慮するという一律の基準はありません。
誰がローンの対象となる家に住んでいるかで事情が変わります
住宅ローンと養育費の関係で、特に分けて考えたいのは、相手が自分で住む家のローンなのか、受け取る側と子どもが住む家のローンなのかという点です。
相手が自分で住む家のローンを返済している場合
相手が自分で住む家の住宅ローンは、相手自身の住居を確保するための支出です。
そのため、ローンを返していることだけで、子どもの養育費を0円にしたり、算定表の目安から返済額をそのまま引いたりすることはできません。
受け取る側と子どもがその家に住んでいる場合
相手が住宅ローンを返済し、受け取る側と子どもがその家に家賃なし、または低い負担で住んでいる場合は、相手が子どもの住居費も負担していると評価されることがあります。
この場合でも、住宅ローンと養育費を同じ金額として扱うわけではありません。ローンの名義・返済額・残高だけでなく、誰が住んでいるか、固定資産税・管理費・修繕費を誰が負担しているか、父母双方の収入を一緒に見ます。
取り決め後に家を売却した、受け取る側と子どもが退去した、ローンを支払う人が変わった場合は、当初の前提が変わっていないかも見直します。
すでに決めた養育費は、相手の判断だけでは減額されません
公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書などで月額を決めている場合、相手から「住宅ローンの支払いが苦しい」と言われただけで、現在の取り決めが変わるわけではありません。
父母が新しい金額に合意するか、家庭裁判所の調停・審判で金額が変更されるまでは、現在の取り決めが基準になります。
減額へ応じるかを判断する前に、相手の現在の収入、取り決め後に起きた収入や家族状況の変化、住宅ローンの対象となる家に誰が住んでいるかを分けて整理しましょう。
「払えない」と言われたら、書面・入金・住居の状況を照らし合わせます
まず、養育費を決めた書面を見て、現在の月額、支払日、支払期間を確かめます。次に、通帳や取引明細から、どの月の養育費が支払われていないのかを書き出します。
相手が収入の減少を説明している場合は、いつ、どの程度変わったのかが分かる資料を求めます。住宅ローンについても、返済予定表だけではなく、誰がその家に住み、固定資産税や管理費を誰が負担しているかを分けて見ます。
相手が「ローンがある」と伝えてきただけで、すぐ減額に同意する必要はありません。一方で、実際に収入や住居の状況が変わっている場合は、その資料を見たうえで、現在の金額を続けるかを話し合います。
支払日を過ぎている場合は、未払いの対象月、金額、振込期限を、記録が残る文章で伝えます。
話し合いで減額に合意できない場合は、減額を求める側が家庭裁判所へ養育費減額調停を申し立てる方法があります。調停では、父母双方の収入、子どもの生活費、住宅ローンや住居費の負担が分かる資料を出して話し合います。
未払いが続く場合や、現在の書面で使える請求方法が分からない場合は、取り決めの書面と入金記録を持って弁護士へ相談すると、未払い分の請求と減額への対応のどちらから進めるかを判断しやすくなります。
住宅ローンと未払いの状況を整理して相談したい方へ
住宅ローンが養育費へ影響するかは、ローンの有無だけでは判断できません。
養育費を決めた書面、入金記録、父母の収入資料、住宅ローンの返済予定表、対象となる家に誰が住んでいるかが分かる資料を、手元にあるものから整理しましょう。
弁護士法人ワンピース法律事務所では、未払い養育費の回収についてLINEで相談を受け付けています。相手から住宅ローンを理由に支払いを断られている場合は、取り決めと住居費の負担を分けて対応方法を一緒に整理します。