元夫から「収入が減ったので、来月から養育費を減らしたい」と連絡が来ると、「応じなければならないのか」「断ったら来月から少ない金額しか振り込まれないのか」と不安になると思います。
原則として、相手から減額したいと言われただけで、取り決めた養育費が変わることはありません。 ただし、現在の合意書に見直しや金額変更の条件が書かれている場合は、その内容も先に読んでください。電話やLINEですぐに「わかった」と答えず、理由と資料を受け取ってから返事をしてください。
収入の大幅な減少や扶養する子どもの増加など、取り決めた後に生活状況が変わったときは、相手が減額を申し出たり、家庭裁判所へ減額調停を申し立てたりすることはできます。しかし、相手が希望する金額と開始月をそのまま受け入れる必要はありません。

減額したいと言われた直後は、返事を急がないでください
「来月から半額にしたい」「給料が下がったから仕方がない」と言われても、その場で結論を出す必要はありません。相手からの連絡だけなら、返答期限が法律で決まっているわけでもありません。
まずは、電話だけで話を終わらせず、LINEやメールで減額の理由、希望額、開始月を送ってもらってください。電話で話した場合は、話した日と内容をメモに残し、「今日のお話は、○月分から月額○円にしたいという内容で合っていますか」と文章で送り返しておくと、後の食い違いを防げます。
相手から「今すぐ返事が欲しい」と急かされても、資料を見る前に同意しないことが大切です。一度同意すると、後から「一時的に減らすつもりだった」「その月だけの話だった」と主張しても、双方の受け止め方が食い違うおそれがあります。
今の取り決めを先に確かめてください
公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書、養育費合意書など、現在の金額を決めた書面を手元に用意してください。書面では、次の5項目を一つずつ確かめてください。
- 現在の月額
- 毎月の支払日
- いつまで支払う約束か
- 進学費用や医療費を別に負担する約束があるか
- 収入や生活状況が変わったときの定めがあるか
通帳やネットバンキングの履歴も用意し、今までの入金額と直近の入金額を見比べてください。すでに少ない金額しか振り込まれていないときは、何月分がいくら不足しているのかを書き留めておきます。
正式な書面がない場合は、月額、支払日、支払期間について合意したLINEやメールの前後を含むやり取りと、これまでの振込履歴を消えない形で保存してください。
減額の理由に合う資料があるかを確かめてください
「収入が減った」「再婚した」「住宅ローンが苦しい」という説明だけでは、減額へ応じるべきかは分かりません。事情が変わった時期と程度を示す資料が、減額へ応じるか考える手掛かりになります。
話し合いの段階で相手に資料提出を強制することはできません。資料が届かない間は変更に同意しないと伝えて構いません。家庭裁判所の調停へ進んだ場合は、裁判所から双方へ収入資料などの提出を促されます。
収入が減った、退職した、休職したと言われた場合
会社員であれば、直近の給与明細、源泉徴収票、所得証明書や課税証明書などが手掛かりになります。給与が下がった月だけでなく、取り決めた当時の収入からどのくらい下がり、その状態が今後も続くのかを見比べてください。
退職や休職の場合は、退職日・休職期間が分かる書類、退職後の収入、雇用保険や傷病手当金などの受給状況も関係します。自営業であれば、確定申告書と収支内訳書または青色申告決算書を見せてもらい、売上だけでなく所得がどう変わったのかを見てください。
一時的に残業が減った、転職直後で給与が少ない場合と、病気などで長期間働けない場合では、収入減が続く見込みが違います。収入が下がっていても、相手が希望する金額まで当然に減るわけではありません。
相手と自分の同じ年分の収入資料、子どもの人数と年齢をそろえ、裁判所の養育費算定表による目安と現在額を比べます。私立学校の費用や継続的な医療費など、算定表へ表れにくい費用があれば、金額と必要性が分かる資料も用意してください。双方が扶養している家族も関係します。
再婚や新しい子どもの出生を理由にされた場合
相手が再婚しただけで、養育費が自動的に下がるわけではありません。再婚後に子どもが生まれたのか、再婚相手の連れ子と養子縁組をしたのかによって、相手が扶養する家族の状況は変わります。
再婚相手の収入を元夫の年収へそのまま足したり、再婚したという理由だけで現在の月額を半分にしたりするものではありません。新しい家族関係と父母双方の収入を踏まえて考える必要があります。
住宅ローンや借入れを理由にされた場合
住宅ローンやカードローンがあるというだけで、取り決めた養育費を一方的に減らすことはできません。ローンを組んだ時期、家に誰が住んでいるのか、子どもがその家に住み続けているのかなどによって事情は変わります。
「毎月の返済が苦しい」という説明だけで同意せず、収入の変化と住宅の利用状況を確かめてください。
資料がない、減額に応じたくない場合の返事
相手が資料を出さない、希望額や開始月がはっきりしない、子どもの生活費を考えると受け入れられないという場合は、減額に同意しない旨を文章で伝えて構いません。
返事をせずに放置するよりも、「現時点では同意していない」と明確に残した方が、後から同意の有無を争われにくくなります。まだ資料を受け取っていない段階なら、次のように返すとよいでしょう。
資料を受け取った後も応じたくない場合は、子どもの学費や医療費が増えている、自分の収入も下がっている、相手の収入減が一時的に見えるなど、同意できない理由を短く添えてください。
相手との話し合いで合意しなければ、相手が家庭裁判所へ減額調停を申し立てることがあります。話し合いで断っただけで、相手の希望額へ変更されることはありません。 ただし、家庭裁判所が双方の収入や扶養関係を踏まえて減額を認める可能性はあります。
家庭裁判所が減額を認める場合は、事情が変わった時期や相手が減額を求めた時期などを踏まえ、変更後の金額を何月分から適用するかも決められます。申立書が届いたら、相手が減額を求め始めた日と申立日を控え、すでに生じている差額をどう扱うのかも期日で述べてください。
減額に応じる場合は、金額だけでなく期間も書面に残してください
相手の事情と資料に納得し、減額へ応じるときは、口頭やLINEの短いやり取りだけで終わらせないでください。双方が同じ内容を保管できる書面に、少なくとも次の7項目を記載してください。
- 変更後の月額
- 何月分から減額するのか
- 毎月の支払日と振込先
- 一時的な減額なら、終了月と元の金額へ戻す月
- 延長するときは、改めて書面で合意すること
- すでに少なく振り込まれた月の差額をどう扱うか
- 変更しない条項は、以前の取り決めどおりとすること
収入減が一時的であれば、「2026年11月分から2027年4月分までは月額5万円、2027年5月分からは月額7万円」と、終了時期を日付で書く方法が分かりやすいでしょう。「仕事が安定するまで減額する」のように終わりが分からない表現は避けてください。
以前の取り決めが調停調書、審判書、強制執行認諾文言付き公正証書である場合、父母だけで変更合意書を作っても、以前の書面に記載された金額が書き換わるわけではありません。新しい条件だけで直ちに差押えができる書面になるわけでもありません。
変更する条項、適用月、すでに支払われた金額と不足額の扱いを明記し、調停調書や公正証書を作り直す必要があるかを署名前に弁護士へ相談してください。
同意していないのに振込額を下げられた場合
少ない金額が振り込まれても、それだけで減額へ同意したことにはなりません。差額を請求する意思があるなら、入金後できるだけ早く、減額へ同意していないことと不足額を文章で伝えてください。
たとえば、取り決めた月額が7万円なのに5万円しか振り込まれなかった場合は、「○月分は7万円の約束ですが、5万円の入金でした。減額には同意していないため、差額2万円を支払ってください」と送ります。
その後の話し合いで確認できるよう、次の5つを残してください。
- 取り決めた月額が書かれた書面
- 相手から届いた減額要求のLINEやメール
- 実際の入金額が分かる通帳や取引明細
- 月ごとの不足額
- 差額を請求したメッセージ
減額の合意や家庭裁判所による変更がない段階では、元の取り決めと入金額との差額を未払いとして記録します。ただし、後に家庭裁判所が減額と適用開始月を定めた場合は、最終的な不足額が変わることがあります。
調停調書や審判書がある方は履行勧告を申し出る方法があり、調停調書、審判書、判決書、強制執行認諾文言付き公正証書などがある方は差押えを利用できる場合があります。父母だけで作った合意書や離婚協議書しかない場合は、その書面をもとに支払いを求め、合意できなければ家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
家庭裁判所から減額調停の書類が届いた場合
相手との話し合いがまとまらないと、家庭裁判所から申立書の写し、呼出状、事情説明書などが届くことがあります。これは、相手が養育費の減額調停を申し立てたという連絡です。
書類を放置せず、最初に次の5項目を確かめてください。
- 家庭裁判所名と事件番号
- 調停期日と出席方法
- 同封された回答書や照会回答書などの提出期限
- 相手が主張する減額理由
- 相手の希望額と開始月
提出する書類の名称は裁判所ごとに変わります。現在の取り決め、これまでの入金記録、自分の収入資料、子どもの学費・保育料・医療費などが分かるものを用意してください。相手の申立書に事実と違う箇所があれば、同封された回答書などに、違う内容とその根拠を記載し、資料と一緒に期限までに提出します。
提出した資料は相手に見られる可能性があります。マイナンバー、現在の住所、勤務先、子どもの学校など、裁判所の判断に不要で相手へ知られたくない情報が含まれているときは、そのまま提出せず、マスキングや非開示の扱いを担当書記官へ尋ねてください。
期日に出席できない事情があるときは、呼出状に記載された家庭裁判所の担当書記官へ早めに連絡してください。欠席しても相手の申立てがそのまま認められるとは限りませんが、自分の事情を伝える機会を失わないことが大切です。
調停は、調停委員を通じて双方の事情を話し合う手続です。相手が申し立てた金額へ同意するよう強制されるものではありません。話し合いがまとまらず調停が不成立になると審判へ移り、裁判官が提出資料と双方の事情を踏まえて結論を出します。
そのため、調停で同意しなければ必ず現在の金額が続くとも、申立てをされたら必ず減額されるともいえません。相手の収入がいつ、なぜ、どの程度変わったのか、受け取る側の収入と子どもの生活費がどうなっているのかを具体的に示すことが重要です。
減額に応じる前に、相手の事情と子どもの生活を比べてください
まず、現在の取り決めと相手から届いた減額要求を保存し、減額理由、希望額、開始月と終了月、根拠資料を文章で受け取ってください。資料を見ても納得できなければ、減額に同意しないと返して構いません。
応じる場合は、新しい月額だけでなく、減額する期間、元の金額へ戻す月、すでに生じた不足額をどう扱うかまで書面に残します。家庭裁判所から書類が届いたときは、同封書類に書かれた期日と提出期限を優先してください。
減額に応じるべきか迷っている場合や、すでに一方的に振込額を下げられた場合は、無料でご相談いただけます。相手から届いたメッセージ、現在の取り決め書面、入金履歴を分かる範囲でお送りください。弁護士が内容を拝見し、返事をする前に足りない資料や、これから取れる対応をお伝えします。