養育費の離婚協議書を作ろうとしても、毎月の金額以外に何を書けばよいのか、分かりにくいことがあります。
月額だけでは、いつから支払い、いつまで続けるのか、進学や入院でまとまった費用が必要になったときにどうするのかが決まりません。
大切なのは、後から読み返したときに、誰が、誰のために、いつからいつまで、いくらを、どのように支払うのかが一つに決まる文章にすることです。
離婚協議書には法律で決められた一つの書式はありません。最低限書いておきたい7つの条項について、必要な理由と書き方を順に説明します。
離婚協議書には養育費の金額・支払日・支払期間を書きます
離婚協議書は、父母が合意した養育費の内容を、後から同じ文章で確認するための書面です。口約束で終わらせず、月額、支払日、支払期間などを具体的に残します。
書面にしておけば、支払いが始まった後に「金額が違う」「終了時期の認識が違う」となったときも、合意した内容へ立ち戻ることができます。
ただし、離婚協議書を作成しただけで協議離婚が成立するわけではありません。協議離婚は、市区町村へ提出した離婚届が受理されることで成立します。
養育費について最低限書くべき7つの条項
1. 子どもを特定して養育費の月額を書きます
書く内容は、子どもの氏名・生年月日と、子ども1人ごとの月額です。
「長男○○の養育費として月額5万円を支払う」のように、誰のための養育費かと金額を明確にします。
子どもが2人以上いる場合は、1人ごとの月額を書くのか、全員分の合計額を書くのかが分かるようにしてください。ここが曖昧だと、上の子の支払いが終わった後に、残る金額を判断できません。
「相場程度」「生活に必要な金額」ではなく、合意した金額を数字で記載します。
2. 支払いを始める月と終わる月を書きます
最初に支払う月と、最後に支払う月の両方を書きます。
開始時期は「2026年10月分から」、終期は「子が満20歳に達する日の属する月まで」のように、最初と最後の対象月が分かる文章にします。
「成年に達するまで」だけでは、18歳の誕生日で終わるのか、その月の末日までかが曖昧になることがあります。父母が合意した年齢または年月と、最後に支払う月まで書いてください。
3. 毎月の支払日と休業日の扱いを書きます
毎月何日までに入金するかを、日付で決めます。
「毎月25日まで」「毎月末日まで」のように支払日を記載します。支払日が金融機関の休業日に当たる場合は、直前の営業日と翌営業日のどちらにするかも書いておくと、入金が遅れているかを判断しやすくなります。
離婚した月だけ金額を変える場合は、初回の金額と支払期限を別に記載します。
4. 振込先と振込手数料の負担を書きます
振込先は、口座を一つに特定できる情報まで書きます。
金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号、口座名義を記載します。振込手数料をどちらが負担するかも決めてください。
手渡しにする場合は、受領日、金額、何月分の養育費かが分かる受領書をその都度作る方法があります。
5. 進学・医療など特別費用の決め方を書きます
毎月の養育費とは別に負担する費用の範囲と、話し合う手順を書きます。
入学金、授業料、制服代、入院費、手術費など、まとまった支出が生じたときに、毎月の養育費へ含まれるのか、別に分担するのかで認識が分かれることがあります。
「必要になったら協議する」だけで終わらせず、事前に見積書や請求書を共有すること、父母の負担割合、支払期限まで決められる場合は文章にしてください。
6. 収入や進路が変わったときの見直し方法を書きます
養育費の変更を話し合う事情と、変更内容を残す方法を書きます。
失職、転職、収入の増減、子どもの進学など、取り決めた後に事情が変わった場合は、養育費の変更について話し合うことができます。
変更に合意したときは、変更後の月額と開始月を新しい書面に残します。元の離婚協議書へ一方だけで書き加えないようにしてください。
7. 住所・連絡先・振込先が変わったときの連絡方法を書きます
何が変わったときに、何日以内に、どの方法で知らせるかを書きます。
住所、電話番号、メールアドレス、振込先が変わった場合の連絡方法を決めます。連絡期限を「変更から14日以内」のように具体化すると、いつまでに連絡するかが明確になります。
安全上の理由で住所を相手へ伝えられない事情がある場合は、住所の通知を一律に義務づけず、安全を確保できる連絡方法を個別に決めてください。
7つの条項をまとめた養育費の文例
次の文例では、養育費を受け取る側を甲、支払う側を乙、子どもを丙としています。金額、年月、口座、期限は仮の内容です。
文例をそのまま転記するのではなく、父母が実際に合意した内容へ置き換えてください。特別費用は、対象となる費用、資料を共有する時期、負担割合、支払期限を家庭ごとに具体化します。
署名する前に5つの確認項目を一つずつ見直してください
文案ができても、すぐに署名するのではなく、父母双方が同じ最終版を開いて確認します。氏名や口座番号だけでなく、空欄や曖昧な言葉が残っていないかも見直してください。
- ✓ 父母と子どもの情報 — 氏名と子どもの生年月日に誤りがないか確認します
- ✓ 金額と支払期間 — 月額、開始月、終期、毎月の支払日に空欄がないか確認します
- ✓ 曖昧な言葉 — 「成人まで」「必要に応じて」など、複数の意味に読める表現が残っていないか確認します
- ✓ 振込先 — 金融機関名、支店名、口座番号、口座名義が正しいか確認します
- ✓ 同じ最終版 — 父母が同じ内容の書面へ署名等をしているか確認します
同じ内容の書面を2通作り、父母が1通ずつ保管します。複数ページになる場合は、ページ番号や契印によって差し替えを防ぐ方法もあります。
署名した書面は全ページを撮影し、紙の原本とは別にデータでも保管しておくと、紛失時に内容を確認できます。
公正証書にする場合は別の作成手続が必要です
父母が作成して署名等をする離婚協議書と、公証人が作成する公正証書は別の書面です。離婚協議書へ「公正証書」と書くだけで、公正証書になるわけではありません。
強制執行認諾文言を含む公正証書を作る場合は、公証役場で別の手続を行います。必要書類、費用、作成の流れは、公正証書の記事で確認してください。
養育費に合意できないまま署名しないでください
月額、支払期間、特別費用などに合意できていない場合は、空欄のまま署名したり、一方だけで作った文案を完成した離婚協議書として扱ったりしないようにしてください。
父母だけでは合意できない場合は、家庭裁判所の養育費請求調停で話し合う方法があります。離婚協議書の中で調停の手続まで詳しく広げず、必要な方は次の記事で確認できます。
ご相談の際は、子どもの人数と年齢、父母で合意できている内容、希望する月額・支払期間、作成中の文案を分かる範囲でお聞かせください。離婚協議書に書く内容と、まだ決める必要がある内容を分けて整理します。