養育費回収の強制執行で考えられる6つのデメリットとは?

弁護士
木村 和弘
未払いの養育費を回収するために、相手の給与や預貯金を差し押さえる「強制執行」を考えている方もいると思います。
強制執行は、裁判所の手続きを通して未払いの養育費の回収を進める方法ですが、強制執行を行えば、必ず未払いの養育費を全額受け取れるというわけではありません。
また、回収までに時間がかかることや、費用や手続きの面でも負担が生じます。
強制執行を進める前に、どのようなデメリットがあるのかを知り、自分の場合にどのようなことを考えておく必要があるのかを確認しておくことが大切です。

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手続きに時間や費用をかけても、回収につながらないことがあります
未払い養育費を回収するために、相手の給与や預貯金を差し押さえるには、裁判所への申立てが必要になり、その申立手数料は原則4,000円です。これに加えて、裁判所へ納める郵便料がかかります。郵便料は裁判所によって異なりますが、例えば東京地方裁判所では、債権差押命令を申し立てる際に4,000円分の予納郵便切手が必要です。
また、申立書のほかに、調停調書や公正証書などの債務名義の正本、送達証明書、相手の勤務先が会社の場合はその会社の登記事項証明書(資格証明書)をそろえなければなりません。
相手の勤務先や預貯金口座が分からない場合は、財産開示や第三者からの情報取得を利用して調べることになります。財産開示を申し立てる場合にも、原則2,000円の手数料と郵便料が必要です。その後、差押えまで進める場合は、差押命令の手数料として原則4,000円も必要になります。
2
給与差押えをきっかけに、相手が退職・転職してしまう可能性があります
未払い養育費を給料から差し押さえる場合は、勤務先にどこまで事情が伝わるのか、相手が職場でどのような状況になるのかも、あらかじめ考えておく必要があります。
相手の給与を差し押さえる場合、裁判所から勤務先へ差押命令が届くため、給与の処理をする担当者には事情が伝わります。
ここでのデメリットは、勤務先に知られたことを理由に、相手が職場に居づらくなり、退職・転職してしまう恐れがあることです。
その後、新しい勤務先から給与を差し押さえて回収するには、まず転職先を調べなければなりません。新しい勤務先が分かった後も、給与差押えの手続きを一から進めることになり、再び時間や費用がかかるだけでなく、必要な書類をそろえるなどの負担も生じます。
3
給料の差し押さえは一度に全額を回収できるわけではありません
給料を差し押さえて養育費を回収する場合は、差し押さえられる金額に上限があります。
原則として、税金や社会保険料などを差し引いた手取り給料の2分の1までです。
例えば、相手の手取り給料が月32万円の場合、差し押さえられる金額は最大16万円が目安です。
また、手取り給料が月66万円を超える場合は、手取り給料から33万円を差し引いた金額が上限になります。
未払い養育費が60万円あったとしても、その月に60万円すべてを回収できるわけではなく、毎月の給料から少しずつ回収していくことになります。
そのため、未払い分が大きい場合は、全額を回収するまでに数か月以上かかることもあります。
4
予貯金を差し押さえても残高不足で空振りになる可能性があります
銀行口座などの預貯金を差し押さえる場合は、裁判所から金融機関へ差押命令が届いた時点の残高だけが回収の対象になります。
差し押さえを行っても、命令が届いた時点で残高が不足していれば、空振りに終わってしまう可能性があります。
たとえば、未払い養育費が100万円あっても、差押命令が届いた時点の残高が1万円なら、その口座から回収できるのは1万円までです。残高が0円であれば、その口座から回収することはできません。
せっかく申立ての費用や書類を用意して手続きを進めても、残高が不足していれば回収できない場合があることを知っておく必要があります。
5
勤務先が差押命令どおりに、すぐ給与を支払わない可能性があります
相手の給与を差し押さえると、裁判所から勤務先へ差押命令が届きます。勤務先は、差し押さえの対象となった給与を、相手に支払うことはできません。
ただし、差押命令が届けば、勤務先が差し押さえた側に、すぐに給与を支払うとは限りません。
例えば、相手がすでに退職している、休職中で給与が出ていない、ほかにも給与の差押えがあるなど、勤務先が給与の有無や支払う金額を確認する必要がある場合があります。
また、勤務先が給与の有無や金額について異なる説明をして、支払いに応じない場合もあります。
6
差押命令が出た後も、入金の確認と裁判所への届出が必要です
強制執行の手続きを行い、裁判所から差押命令が出た後も、裁判所や勤務先が未払い分を回収し終えるまで、すべての手続を自動で進めてくれるわけではありません。
差押命令が出た後も、入金の確認や未払い分の管理、裁判所への届出を、自分で続けなければなりません。
例えば、給与を差し押さえた場合は、勤務先から実際にいくら支払われたのか、未払いの養育費があといくら残っているのかを確認し、回収した金額に応じて裁判所への届出を行う必要があります。
未払い分が大きく、給与から毎月少しずつ回収する場合は、全額を回収し終えるまで、入金の確認、残額の管理、裁判所への届出が続きます。回収に数か月以上かかれば、その間も同じ対応を続けなければなりません。
強制執行で後悔しないために、始める前に考えておきたいこと
養育費の支払いが止まったとき、相手の給与や預貯金を差し押さえる強制執行は、未払いの養育費を回収するための強力な手段です。
しかし、強制執行で養育費の回収を始めても、必ずしも自分が思っていた結果になるとは限りません。回収に時間や費用、手間がかかる一方で、十分に回収できない可能性もあります。
これまで説明したように、強制執行によって相手の勤務先や生活に影響が及ぶこと、申立て後も手続きが続くことなど、始める前に考えておきたいことがあります。
こうしたことを十分に考えないまま申し立てると、時間や費用をかけたあとに「申し立てなければよかった」と思ってしまうこともあります。
強制執行で回収するか迷っている場合はお気軽にご相談ください
未払いになっている養育費を回収したい一方で、強制執行をすると相手の勤務先に知られてしまうのではないか、費用をかけても回収できなかったらどうしようと、不安を感じている方もいると思います。
未払いの養育費を回収する方法や、強制執行を申し立てるべきか迷っている場合は、弁護士の無料相談をご利用ください。現在分かっている事情をうかがったうえで、強制執行を進められるのか、給与や預貯金などどの財産を対象にできる可能性があるのか、回収までにかかる費用や手続の流れについてご説明します。

弁護士
木村 和弘
強制執行をするかまだ決められない場合でも、今の状況で確認しておきたいことや、ほかに考えられる回収方法についてご相談いただけます。まずはお気軽にご相談ください。
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