養育費は毎月払いだけでなく、父母が合意すれば一括払いを選ぶこともできます。
ただし、受け取る側が希望しただけで、相手に一括払いを強制できるわけではありません。金額、対象期間、支払日、将来の進学費用等を話し合い、合意内容を具体的に書面へ残す必要があります。
一括払いは、まとまった金額を実際に受け取った後は、合意に含めた期間について毎月の入金を待たずに済む方法です。一方、将来の生活費を先に受け取るため、使い方、事情変更、税務上の扱いまで考えて決めることが大切です。
父母が合意できれば一括払いを選べます
養育費の金額や支払方法は、父母の話し合いで決められます。そのため、毎月払いではなく、一括払いとする合意も可能です。
相手が一括払いに同意しない場合は、「一括で受け取りたい」という希望だけで支払方法は変わりません。養育費の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停・審判で月額や支払期間等を決める方法があります。
すでに毎月払いの取り決めがある場合は、一括払いへ変えることで、以前の取り決めをどのように扱うのかも明確にしてください。
一括払いと毎月払いでは確認する点が異なります
一括払いと毎月払いは、支払時期だけでなく、将来の変化への対応や金銭管理の方法も異なります。
| 比較する点 |
一括払い |
毎月払い |
| 支払時期 |
合意した将来分をまとめて支払う |
毎月の支払日に支払う |
| 入金確認 |
一括金の支払いを確認する |
支払期間中、毎月確認する |
| 将来の事情変更 |
合意に含めた範囲と新しい事情を分けて検討する |
月額・支払期間の変更を検討する |
| お金の管理 |
将来分を分けて管理する必要がある |
毎月の生活費へ充てやすい |
| 税務上の確認 |
金額、対象期間、保管・使用方法を確認する |
通常必要な生活費・教育費へ必要な都度充てるか確認する |
一括払いが毎月払いより常に有利とは限りません。相手が支払える金額、子どもの年齢、進学予定、毎月の家計、まとまった金額の管理方法を比べて決めましょう。
一括額の基準は毎月額と対象期間です
一括額を考える前に、毎月払いならいくらになるのか、いつからいつまでの分を含めるのかを整理します。
基本となる考え方は、次のとおりです。
==毎月額 × 対象月数 = 対象期間の名目上の合計額==
この合計額から一律の割合を差し引かなければならないという決まりはありません。支払時期を早めることをどう評価するか、相手が用意できる金額はどの程度かを踏まえ、父母が合意する金額を決めます。
すでに未払いがある場合は、過去の未払い分と将来分の一括金を分けて計算してください。どの期間の支払いが終わったのか分からなくなることを防げます。
一括払いの合意書には対象範囲を具体的に書きます
「養育費を一括で支払う」という一文だけでは、何年分を含むのか、将来の進学費用をどうするのかが分かりません。
| 合意書へ書く項目 |
確認する内容 |
| 一括額 |
総額を数字で明記する |
| 対象期間 |
何年何月分から何年何月分までか |
| 支払日・方法 |
振込期限、振込先、手数料の負担 |
| 過去の未払い |
一括額へ含むか、別に支払うか |
| 特別費用 |
進学、入院、継続的な治療等を含むか |
| 事情変更 |
予想できなかった事情が生じたときに協議するか |
| 一括金が未払いの場合 |
以前の毎月払いと新しい合意をどう扱うか |
慰謝料、財産分与、未払い養育費、将来分の養育費をまとめて支払う場合は、金額の内訳を分けてください。一括金の法的な意味と税務上の扱いを確認しやすくなります。
支払日が将来になる場合は、金銭支払いと強制執行認諾の内容を記載した公正証書を作る方法もあります。ただし、公正証書を作っただけで入金が完了するわけではありません。
合意しただけでは一括払いは完了していません
一括払いの合意後は、振込先口座への入金を確認します。支払日、金額、振込名義が分かる取引履歴を保存してください。
約束した一括金が支払われなかった場合の対応は、合意書や公正証書の内容によって異なります。以前の毎月払いの取り決めがそのまま残るのか、一括金の支払義務へ変更したのかを、書面から確認する必要があります。
一括払いを受け取った後も、合意書、公正証書、振込記録は保管しておきましょう。
進学や病気など将来の特別費用を分けて決めます
一括払いの時点では、進学先、学費、治療の内容が決まっていないことがあります。一括額に将来の特別費用まで含めるのか、必要になったときに別に話し合うのかを明記してください。
「今後は追加請求をしない」と書いた場合でも、その一文だけで将来の事情変更に伴う請求が常に認められなくなるとは限りません。反対に、進学や病気があれば追加負担が自動的に認められるわけでもありません。
合意した範囲、取り決め当時に予想できた事情、その後の変化、父母双方の収入等をもとに個別に検討します。
一括払いは贈与税の確認が必要です
親から子どもの生活費・教育費として受け取る金銭のうち、通常必要と認められ、必要な都度その費用へ直接充てるものは、贈与税の対象にならない扱いがあります。
一方、将来の養育費をまとめて受け取り、長期間預金したり、株式・不動産等の購入へ充てたりする場合は、同じ扱いにならないことがあります。
一括払いだから贈与税の対象になる、または養育費という名目なら税金がかからないとは言い切れません。合意前に、金額、対象期間、受取人、保管方法、使い道を示して、税務署または税理士へ確認してください。
一括払いを決める前に整理したい支払い後の生活
一括払いを検討するときは、まとまった金額を受け取れるかだけでなく、その後の子どもの生活費をどのように管理するかまで考えます。
- 一括金の支払日に相手が全額を用意できるか
- 子どもの日常生活費と進学等の特別費用を分けられるか
- 一括金を将来分として管理できるか
- 事情が変わったときの協議方法を決めているか
- 税務上の扱いを事前に確認したか
一括払いを受け取る前に、金額だけで合意せず、子どもの年齢、対象期間、特別費用、書面の文言を一つずつ確かめてください。
約束した一括養育費が支払われない場合の確認事項
当窓口では、すでに支払日を過ぎた一括養育費の未払いについてご相談を受け付けています。合意書、公正証書、これまでの入金記録をLINEからお送りください。
一括払いを決める前の税務判断は、税務署または税理士へ確認してください。書面の作成段階では、公証役場や対応可能な法律相談窓口も利用できます。