相手から「無職だから養育費は払えない」「自己破産したから未払い分もなくなる」と言われることがあります。
無職と自己破産では確認する内容が異なりますが、どちらも、それだけで養育費を請求できなくなるわけではありません。
ただし、請求権があることと、現在の収入・財産から実際に支払いを受けられることは別です。無職の場合と自己破産の場合に分けて説明します。
相手が無職でも養育費を請求できます
相手が現在無職であっても、子どもの養育費を請求できます。無職になったことだけで、父母の扶養義務や、すでに取り決めた養育費が自動的になくなるわけではありません。
これから養育費の金額を決める場合は、退職時期と理由、健康状態、求職状況、失業給付や年金などの収入、預貯金や不動産の有無を整理します。
養育費の金額を新たに決める場合、裁判所は現在の収入だけでなく、無職になった経緯、年齢、健康状態、職歴、就労可能性などを個別に見ます。
働ける状態なのに正当な理由なく就労していないと判断されると、以前の収入や公的な賃金資料などを参考に金額が検討される場合があります。
一方、病気、けが、介護、求職中などの事情がある場合もあります。必ず以前の年収や平均賃金を使って養育費を定めるわけではありません。
取り決め済みの養育費は相手が一方的に減らせません
公正証書、調停調書、審判書、判決書、離婚協議書などで養育費を決めている場合、相手が無職・収入減を理由に一方的に金額を減らしたり、支払いを止めたりすることはできません。
金額を変えるには、父母で新しい金額に合意するか、家庭裁判所の養育費減額調停・審判で変更する必要があります。
相手から減額を求められたときは、退職理由、現在の収入資料、求職状況、扶養家族、資産などを確認してください。口頭で求められただけで金額を書き換えず、現在の取り決めと新しい事情を分けて考えることが大切です。
自己破産しても養育費の請求権は免責されません
自己破産による免責許可が確定しても、養育費の請求権は原則として免責されません。
破産法253条1項4号は、子どもの監護に関する義務に基づく請求権などを免責の対象外としています。そのため、すでに支払期日が来ている未払い分も、自己破産だけで消えるわけではありません。
未払い分と、これから支払期日が来る分は分けて記録し、取り決め書面と入金履歴を確認してください。
免責されないことと、すぐに全額を回収できることは別です
自己破産後も養育費の請求権は残りますが、相手に給与、預貯金、不動産などの差し押さえられる財産がなければ、直ちに支払いを受けられない場合があります。
破産手続中は個別の強制執行が制限される場合もあります。破産手続の進行状況、各月の支払期日、相手の現在の収入・財産を確認して、いつ、どの方法で請求するかを判断します。
再就職や収入の回復が分かったときは、給与や預貯金への強制執行を検討できる場合があります。ただし、差押えには強制執行へ使える書面と、勤務先・口座など対象財産の情報が必要です。
手元にある書面によって請求方法が変わります
| 手元の状況 |
最初に確認すること |
| 強制執行認諾文言付き公正証書、調停調書、審判書、判決書などがある |
未払いの対象月・合計額と、相手の現在の勤務先・口座など分かる情報 |
| 離婚協議書・合意書だけがある |
書面に書かれた月額・支払日・期間と、強制執行へ使える状態か |
| 取り決めがない |
月額・開始時期・支払日を決めるための話し合いまたは養育費請求調停 |
強制執行へ使える書面がある場合は、相手が無職でも、預貯金や不動産など差押えの対象になる財産があるかを確認します。給与がないという理由だけで、ほかの財産がないと決まるわけではありません。
離婚協議書・合意書だけがある場合は、まず書面の内容、支払期日、未払い額を確認して支払いを求めます。書面があるだけで直ちに強制執行できるとは限りません。
取り決めがない場合は、父母で月額、開始時期、支払日を話し合います。話し合えない、または合意できない場合は、家庭裁判所の養育費請求調停を利用できます。
相談前に分かる資料をまとめます
- 公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書など、養育費の取り決めが分かる書面
- 通帳やインターネットバンキングの入金履歴
- 無職・収入減・自己破産について相手から届いたLINEやメール
- 相手の現在または以前の勤務先、住所、自己破産の事件番号など分かる情報
- 未払いの対象月と合計額
資料がすべてそろっていなくても、手元にあるものから整理できます。無職の場合は退職理由と現在の収入・財産、自己破産の場合は手続の状況と未払いの対象月を分けて確認しましょう。
無職・自己破産の相手へ養育費を請求する方法を相談したい方へ
弁護士法人ワンピース法律事務所では、未払い養育費の回収についてLINEで相談を受け付けています。
相談するときは、取り決め書面、入金履歴、相手から届いた連絡、分かる範囲の勤務先・住所・破産事件の情報をお送りください。現在の状況に合う請求方法を一緒に整理します。