払ってくれない養育費を相手の親(祖父母)に請求することはできる?

弁護士
木村 和弘
養育費の相談を受けていると、「相手が支払わない場合に、その親である祖父母に払ってもらうことはできるのでしょうか」といった質問を受けることがあります。
相手が払っていない養育費を、相手の親であるという理由だけで祖父母に請求することはできません。
養育費を支払う義務は父母にあるためです。
相手が無職である、連絡が取れない、祖父母に収入や預貯金があるといった事情があっても、未払い養育費を祖父母へ請求できるようになるわけではありません。
ただし、祖父母が相手の養育費についてどのように関わっているかによっては、状況は変わります。相手が払っていない養育費を祖父母に請求できる場合もあれば、請求はできなくても、子どものために援助をお願いできる場合もあります。
相手の親に未払い養育費を請求できる場合があります

相手が養育費を支払わない場合でも、祖父母へ未払い養育費を請求できる場合があります。
それは、祖父母が相手の養育費について、保証人又は連帯保証人になっている場合です。
たとえば、離婚するときや養育費を決めるときに、相手が養育費を払わなかった場合は祖父母が代わりに払うことを、祖父母が保証人として合意している場合です。
この場合、相手が払わないときは、保証の内容に応じて祖父母へ請求できる可能性があります。
祖父母へ請求できるのは、祖父母が相手の親だからではありません。相手が払わなかったときに祖父母が払うと、祖父母自身が約束しているからです。
保証人になっているかは、離婚協議書、養育費の合意書、公正証書などで確認してみてください。
ただし、注意してほしいのは、離婚協議書や合意書に祖父母の名前が書かれているだけでは、保証人とはいえないことです。祖父母の名前が書かれていても、祖父母が保証人になることまで了承しているのか分からないためです。
相手が払わなかった場合に祖父母が代わりに払うことを、祖父母自身が約束している必要があります。
また、祖父母が保証人になる約束は、口頭で「困ったときは払う」と言われただけでは、祖父母へ養育費を請求する根拠にはなりません。祖父母が、相手が払わない場合に養育費を支払うことを、書面やLINE・メールで合意している必要があります。
ただし、祖父母が保証人になっている場合でも、どこまで請求できるかは約束の内容によって違います。
祖父母が保証人ではない場合でも、援助をお願いすることはできます

祖父母が保証人ではない場合、相手が払っていない養育費を祖父母へ請求することはできません。ただし、子どもの生活のために援助をお願いすることはできます。
祖父母にお願いするときは、相手が養育費を払わないことへの不満を並べるのではなく、今、子どもの生活に何が必要なのかを具体的に伝えることが大切です。
たとえば、家賃や食費が足りない、学校の教材費や制服代が必要になった、進学に必要な費用を用意できないといった事情です。いつまでに、何のために、いくら必要なのかを伝えると、祖父母にも子どもの状況が分かりやすくなります。
一方で、父親が養育費を払わないことへの不満や、これまでにされたことを祖父母へ一方的に並べると、話がこじれる原因になります。祖父母にとっては自分の子どものことでもあるため、強く責められていると受け取ることがあります。
祖父母へお願いするときは、父親への不満を伝えることよりも、子どもが今どのような生活をしていて、何に困っているのかを伝えてください。
父親も母親も子どもの生活を支えられない場合、祖父母に子どもの生活費を支えてもらうことはできる?

父親が養育費を払うことができず、母親も子どもの生活費を負担し続けることが難しい場合は、祖父母に子どもの生活費を支えてもらうようお願いすることができます。
このように、祖父母へ子どもの生活に必要なお金を求めることを、法律上は「扶養料を求める」といいます。
これは、父親が払っていない養育費を祖父母に代わって払ってもらうものではありません。
子どもの現在やこれからの生活を支えるために、祖父母へ扶養を求めるものです。
祖父母と孫は直系血族であり、民法では互いに扶養する義務があると定められています。父親と母親だけでは子どもの生活を支えられないときは、この扶養義務を根拠に、祖父母へ扶養料を求めることができます。
まずは、父親が養育費を払えない状況にあること、自分の収入だけでは子どもの生活を支え続けることが難しいことを祖父母へ伝えてください。そのうえで、家賃や食費、学校にかかる費用、医療費など、子どものために何のお金が、いつまでに、いくら必要なのかを具体的に伝え、子どもの生活費への援助をお願いしてみてください。
祖父母へお願いしても支払いに応じてもらえない場合や、話し合いができない場合は、家庭裁判所へ扶養請求調停を申し立てることができます。
扶養請求調停では、子どもの生活に必要な費用、父親と母親がどこまで負担できるのか、祖父母の収入や資産、祖父母自身の生活や健康状態などを踏まえて、祖父母が子どもの生活費を負担する必要があるか、負担する場合はいくらにするかを話し合うことができます。
相手の親に養育費を請求できるかどうか、弁護士に無料で相談できます
祖父母が保証人になっているのか、未払い養育費を請求できるのか、祖父母へ援助をお願いできるのか、扶養請求調停を考えるべき状況なのかは、事情によって変わります。
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相手の親、祖父母への養育費請求についてよくある質問
祖父母を養育費の保証人にするには、どうすればよいですか?
祖父母に保証人になってもらう場合は、離婚協議書、養育費の合意書、公正証書などに、祖父母が保証人または連帯保証人になることを書きます。
父親がいつ、いくらの養育費を払わなかったときに祖父母へ請求できるのかを、はっきり書いておくことが大切です。これから発生する毎月の養育費まで保証してもらう場合は、祖父母が負担する金額の上限も決めます。
祖父母が「困ったときは払う」と口頭で言うだけでは、後から未払い養育費を請求する根拠にはなりません。祖父母自身が保証することを合意した書面や、内容が残るLINE・メールを作っておく必要があります。
祖父母から子どもの生活費を援助してもらった場合、父親への養育費請求はどうなりますか?
祖父母から援助を受けたことで、父親の養育費の支払い義務が当然になくなるわけではありません。
ただし、そのお金が父親に代わって特定の月の養育費として支払われたのか、祖父母が孫のために任意で援助したのかによって扱いが変わります。
後から行き違いにならないよう、何のためのお金なのか、どの月の養育費に充てるのかをLINEやメールで残しておくことが大切です。
養育費請求調停と扶養請求調停は、どう違いますか?
養育費請求調停は、父親に対して子どもの養育費を払うよう求める手続です。
扶養請求調停は、父親と母親だけでは子どもの生活を支えられない場合に、祖父母を含む親族へ子どもの生活費を求める手続です。
父親に収入や財産があり、払えるのに養育費を払わない場合は、祖父母への扶養料ではなく、父親本人への養育費請求を進めます。祖父母への扶養請求調停は、父親の未払い養育費を祖父母へ付け替える手続ではありません。
扶養請求調停を申し立てると、祖父母に必ず生活費を払ってもらえますか?
扶養請求調停を申し立てたからといって、祖父母に必ず生活費を払ってもらえるわけではありません。
家庭裁判所では、子どもの生活にどのくらいのお金が必要なのか、父親と母親がどこまで負担できるのか、祖父母に収入や資産があるのか、祖父母自身の生活や健康状態はどうかといった事情を見ます。
子どもの生活を支える必要があり、祖父母にも負担できる状況があるときに、祖父母が負担する金額を決めます。