妊娠中に離婚しても、子どもが生まれた後は、父である元夫へ養育費を請求できます。離婚したからといって、元夫の父としての扶養義務がなくなるわけではありません。
ただし、養育費は子どもの生活費であり、原則として出生後に発生します。妊娠中から出生後の支払いについて話し合えますが、まだ生まれていない間の生活費や出産費用が、そのまま毎月の養育費になるわけではありません。
おなかの子の養育費は、出生後に元夫へ請求できます
養育費は、食費、衣類、住居、保育、教育、医療など、子どもが成長するために必要な費用です。子どもが出生すると、父母は離婚していても、それぞれの収入や生活状況に応じて子どもの生活を支える責任を負います。
そのため、妊娠中に離婚した場合でも、出生後の養育費を元夫へ求めることができます。離婚時に養育費について合意できなかったとしても、それだけで出生後の請求権を失うわけではありません。
一方、妊娠中の段階では、子どもはまだ出生していないため、毎月の養育費をすぐに受け取ることは原則としてできません。出生前にできるのは、出生後の支払い条件を元夫と話し合い、合意内容を文書へ残すことです。
妊娠中に話し合っておけるのは、出生後の支払い条件です
元夫が話合いに応じる場合は、出産を待たずに、出生後の養育費について合意できます。少なくとも、次の内容が文書で分かるようにしておくと、出産後すぐに支払いを求めやすくなります。
- 支払いを始める月:子どもが生まれた月から、または翌月から
- 毎月の金額:出生後の見直しが必要な場合は、その条件も記載
- 支払日と振込先:毎月何日までに、どの口座へ振り込むか
- 支払いを終える時期:年齢だけでなく、支払いを終える月まで具体化
たとえば、「子どもが出生した月から毎月5万円を支払う」と合意した場合は、出産後に改めて一から話し合う必要を減らせます。出生前の合意であること、出生後に支払いが始まること、月額、支払日、終わる時期を一つの文書へまとめてください。
婚姻中に妊娠した子は、原則として元夫の子と推定されます
民法772条では、妻が婚姻中に妊娠した子は、その婚姻における夫の子と推定されます。婚姻中に妊娠し、離婚後に生まれた場合も、原則として元夫が法律上の父として扱われます。
離婚後300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したものと推定されるため、元夫へ養育費を求める前提となる父子関係が戸籍上明らかな場合が多いでしょう。
ただし、「離婚後300日以内に生まれた子は、必ず元夫の子になる」という意味ではありません。離婚後に母が再婚し、その再婚後に子どもが生まれた場合など、出生時の事情によって扱いが異なります。元夫と実際の父が異なるときや、出生届の父欄で問題が生じそうなときは、出生前に法務局または弁護士へ相談することが大切です。
元夫から「自分の子ではない」と言われたときは
元夫が父親ではないと言っただけで、法律上の父子関係が直ちになくなるわけではありません。婚姻中に妊娠した子について元夫が父と推定される場合は、その関係を覆すために家庭裁判所の手続が必要になることがあります。
反対に、元夫との法律上の父子関係がなく、別の男性が父である場合は、その男性へ養育費を求める前に認知が必要になることがあります。誰に養育費を請求できるかは、法律上の父が誰かによって変わります。
父子関係が争われている間も、出生届、戸籍、婚姻日、離婚日、再婚日が分かる資料を手元に残してください。利用すべき手続には期限がある場合もあるため、出生前から弁護士へ相談できます。
妊娠中に合意できなくても、出生後から請求できます
離婚時に養育費の合意がなくても、子どもが生まれた後に元夫へ請求できます。まず、希望する月額、支払いを求める月、支払日、振込先を文書で伝えてください。
元夫と話し合える場合は、合意した内容を文書へ残します。話合いがまとまらない場合や返事がない場合は、子どもの出生後に家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てられます。調停では、父母双方の収入、子どもの人数と年齢、生活状況などをもとに支払条件が話し合われます。
養育費はいつから受け取れるのでしょうか
元夫と合意できる場合は、子どもが生まれた月または翌月を支払いの開始月とすることができます。妊娠中に「出生した月から支払う」と文書へ残しておけば、出生後の開始時期をめぐる行き違いを減らせます。
合意がなく、出生後に請求する場合は、いつからの分が認められるか一律には決まりません。請求した時期やそれまでの話合いなどによって異なるため、出産後に支払いが始まらなければ、請求した事実が残る方法で早めに伝えることが重要です。
出生時からの全額が何もしなくても自動的に支払われるわけではありません。妊娠中のうちから出生後の請求方法を知っておくことは、支払い開始の遅れを防ぐためにも役立ちます。
妊娠中の生活費や出産費用は、養育費とは別です
妊婦健診、出産、入院にかかる費用や、妊娠中の母親の生活費は、出生後の毎月の養育費と同じものではありません。元夫へ負担を求める場合も、出生後の養育費とは項目を分けて話し合う必要があります。
まだ離婚前で別居しており、生活費を受け取れていない場合は、養育費ではなく婚姻費用の問題になることがあります。すでに離婚した場合は、出産費用をどのように負担するかを元夫と個別に話し合います。
妊娠中に離婚しても、出生後の養育費を諦める必要はありません
妊娠中に離婚したからといって、おなかの子が元夫から養育費を受ける可能性まで失われるわけではありません。出生後に請求でき、妊娠中から支払い条件について話し合うこともできます。
大切なのは、出生前に話し合えることと、出生後でなければ支払いを求められないことを分けることです。元夫と合意できる場合は文書へ残し、合意できない場合は出生後に書面で請求したうえで、必要に応じて養育費請求調停を利用できます。