「子どもに会わせてくれないなら、養育費は払わない」
そう言われると、支払いを受けるためには、面会交流について相手の希望を受け入れなければならないのかと迷うことがあります。
面会交流が行われていないことだけで、取り決めた養育費が自動的になくなるわけではありません。養育費と面会交流は分けて整理する問題です。
ただし、面会交流についての話を無視してよいという意味ではありません。養育費の支払いを求めながら、面会交流は子どもの生活・気持ち・安全をもとに別に話し合います。
養育費と面会交流は目的・決める内容・手続が異なります
養育費は、子どもの衣食住、教育、医療などの費用を父母で分担するものです。父母が離婚した後も、親権の有無にかかわらず、双方が経済力に応じて負担します。
面会交流は、現在の裁判所案内では「親子交流」と表記され、離れて暮らす親と子どもがどのように交流するかを決めるものです。会って過ごす方法だけでなく、電話や手紙などによる交流も考えられます。
次の表では、それぞれの目的と、話し合えない場合の手続を分けています。
| 比べる項目 |
養育費 |
面会交流(親子交流) |
| 主な目的 |
子どもの生活と成長に必要な費用を分担する |
離れて暮らす親と子どもの交流方法を決める |
| 主に決める内容 |
月額、支払日、支払期間、特別費用 |
頻度、日時、場所、受渡し、連絡方法 |
| 判断に関わる事情 |
父母の収入、子どもの人数・年齢、個別の費用 |
子どもの年齢・意向、生活リズム、生活環境、安全面 |
| 話し合えない場合 |
養育費請求調停・審判等 |
親子交流調停・審判 |
両方とも子どもに関わる問題ですが、一方をもう一方の交換条件にはできません。
面会交流がなくても養育費の取り決めは自動的に消えません
面会交流の約束どおりに実施されていない場合でも、それだけで、合意書、公正証書、調停調書等に書かれた養育費が自動的に変更・終了することはありません。
支払う側が面会交流について変更を求めたいときは、父母で話し合うか、親子交流調停等を利用する方法があります。養育費を一方的に止めることとは別の手続です。
反対に、養育費が支払われていないことだけを理由として、「支払うまで会わせない」と決めるのも避けたほうがよいでしょう。子どもとの交流方法は、未払いへの制裁ではなく、子どもの利益と安全を中心に考えます。
相手へは養育費と面会交流を分けて返答します
「払わない」と言われた段階では、相手の発言が分かるLINEやメールを保存します。そのうえで、面会交流については別に話し合うことと、養育費は現在の取り決めどおり支払うよう求めることを、短く分けて伝えます。
面会交流を一切拒むと決めたような表現や、支払いを条件に会わせるような文面は避けます。対立する言葉を重ねるより、二つの問題を分けて書くほうが、後からやり取りを読み返しやすくなります。
支払いが止まる前に養育費と面会交流の取り決めを分けます
養育費と面会交流の約束が同じ書面に書かれていても、内容は分けて読みます。手元にある資料を次のように整理すると、相手への返答やその後の手続を考えやすくなります。
| 整理する内容 |
養育費 |
面会交流 |
| 現在の取り決め |
月額、支払日、開始月、支払期間 |
日時、頻度、場所、受渡し方法 |
| 直近の記録 |
振込日、入金額、未払い月 |
実施日、中止理由、父母のやり取り |
| 今後伝える内容 |
支払期限、未払い額、振込先 |
子どもの生活予定、意向、安全面、代替方法 |
| 主な資料 |
合意書、公正証書、調停調書、通帳 |
合意書、調停調書、LINE・メール、学校等の予定 |
支払いが止まる前から、養育費の入金記録と親子交流の記録を混ぜずに残すことが大切です。
実際に支払いが止まったら未払い額と書面を整理します
まず、取り決めた月額、支払日、実際の入金額を月ごとに並べ、未払い額を整理します。口頭だけの約束なのか、合意書、公正証書、調停調書等があるのかによって、利用できる手続が異なります。
調停調書や強制執行認諾文言のある公正証書等がある場合は、未払い分の請求や差押えを検討できることがあります。強制執行に使える書面がない場合は、養育費請求調停等で金額や支払方法を決める方法があります。
面会交流の問題が続いていても、養育費の未払い額と支払いを求めた記録は別に残します。
面会交流は子どもの利益を中心に別に話し合います
面会交流を実施するか、どのような方法にするかは、大人同士の希望だけで決めるものではありません。子どもの年齢、意向、就学、生活リズム、これまでの交流状況をもとに考えます。
すでに取り決めがあるものの、子どもの生活や父母の状況が変わって実施が難しくなった場合は、日時、場所、受渡し、連絡方法等の変更を話し合います。
話し合いがまとまらない、または父母だけで話し合えない場合は、家庭裁判所の親子交流調停を利用できます。調停が不成立になった場合は審判が開始され、裁判所が一切の事情を考慮して判断します。
安全に不安があるときは直接会う方法だけに限定しません
DV、虐待、連れ去りのおそれ等があり、子どもや同居する親の安全・安心を確保できない場合は、無理に直接会う約束を進める必要はありません。
親子交流の方法は、第三者による受渡し、支援機関を介した実施、電話、手紙等も考えられます。ただし、どの方法が適切かは、安全上の事情、子どもの心身の状態、年齢・意向により異なります。
相手との直接連絡にも危険がある場合は、住所や避難先を伝えず、手元にある記録を整理したうえで相談してください。緊急の危険がある場合は、法的な話し合いよりも身の安全を優先します。
家庭裁判所から親子交流の書類が届いたときの対応
親子交流調停の書類が届いた場合は、養育費が未払いだからという理由で放置せず、期日、提出期限、相手が求める交流方法を読みます。
子どもの生活予定、これまでの交流状況、子どもの反応、安全上の心配が分かる資料を整理します。養育費の未払いについては、入金記録と取り決めの書面を別にまとめます。
同じ父母間の問題でも、親子交流調停で決める交流方法と、養育費の支払いを求める手続は分けて進めることができます。
支払いと交流を分けて子どもの生活と安全を守ります
「会わせないなら払わない」と言われても、面会交流がないことだけで養育費の取り決めが自動的に消えるわけではありません。
養育費については、現在の取り決め、入金記録、未払い額を整理します。面会交流については、子どもの生活・意向・安全をもとに、実施の可否や方法を別に考えます。
相手への返答、未払い分の請求、親子交流調停への対応を同時に整理する必要がある場合は、手元の書面とやり取りを分けてお聞かせください。養育費の無料相談では、未払い分の請求を中心に進め方を一緒に整理します。