相手が生活保護を受けていると聞くと、養育費を請求できるのか、支払ってもらえる金額があるのか判断しにくいことがあります。
生活保護を受給しているという事実だけで、父母が子どもの生活費を分担する義務が当然になくなるわけではありません。
ただし、養育費を請求できること、月額を決めること、実際に支払いを受けることは分けて考える必要があります。
生活保護を受給していても養育費の請求はできます
父母は、それぞれの経済状況に応じて子どもの養育費を分担します。相手が生活保護を受給していても、養育費について話し合うことや、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てることはできます。
一方、請求できるからといって、希望する月額をそのまま支払ってもらえるとは限りません。現在の収入や生活状況から、月額が低くなる場合や、すぐに支払いを受けることが難しい場合があります。
生活保護費そのものは差し押さえられません
生活保護法58条は、すでに支給を受けた保護金品と、保護を受ける権利の差押えを禁止しています。
そのため、公正証書や調停調書などがあっても、生活保護費そのものを差し押さえて養育費を回収することはできません。
ただし、生活保護を受給しているという理由だけで、保護費とは別に得た給与や、本人が持つすべての財産まで一律に差押禁止になるわけではありません。何を対象にできるかは、そのお金や財産の性質を個別に見ます。
養育費の金額は父母双方の収入と子どもの生活費から考えます
養育費の月額は、生活保護を受給しているという一つの事情だけでは決まりません。次の内容を分けて整理すると、現在の支払能力と必要な養育費を考えやすくなります。
| 整理する内容 |
見る資料・事情 |
| 支払う側の状況 |
保護費以外の給与・年金・手当、預貯金、健康状態、就労状況 |
| 受け取る側の状況 |
給与、手当、現在負担している生活費 |
| 子どもの状況 |
人数、年齢、生活費、教育費、医療費 |
| 現在の取り決め |
月額、支払日、支払期間、未払いの対象月 |
生活保護を受給しているから必ず0円になるとも、受給前と同じ金額になるとも限りません。父母で合意できない場合は、家庭裁判所が収入資料や子どもの費用などを見て判断します。
すでに決めた養育費は相手の判断だけで減額できません
公正証書、調停調書、離婚協議書などで養育費を決めている場合、相手が生活保護を受け始めたという理由だけで、一方的に支払いを止めたり、月額を0円へ変えたりすることはできません。
金額を変えるには、父母が新しい金額に合意するか、相手が家庭裁判所へ減額調停を申し立て、調停または審判で変更する必要があります。
相手から減額を求められたときは、受給開始の時期、保護費以外の収入、健康状態、就労状況を示す資料を見ずに、すぐ同意する必要はありません。
未払い分と今後の月額は分けて整理します
すでに支払日を過ぎた未払い分と、これから支払う養育費の月額は同じ問題ではありません。
取り決めた金額が変更される前に未払いとなった分は、相手が生活保護を受け始めたというだけで自動的に0円になるわけではありません。一方、今後の月額は、現在の収入や生活状況をもとに、新しい合意や調停・審判で見直される場合があります。
未払い分については、対象月、毎月の金額、支払日、実際の入金額を月ごとに一覧にしておきましょう。
差押え可能な収入や財産がなければ、すぐに回収できない場合があります
生活保護費そのものは差し押さえられません。保護費以外に給与、預貯金、不動産などがなければ、公正証書や調停調書があっても、現時点で直ちに支払いを受けられない場合があります。
請求権があることと、今すぐ回収できることは別です。将来の就労や収入回復を前提に結果を決めつけず、現在分かる収入・財産と手元の書面から利用できる方法を考えます。
無職の場合や収入がほとんどない場合の金額、自己破産後の未払い分については、状況ごとに確認する内容が異なります。
相談するときは取り決め・入金履歴・相手の説明をまとめます
生活保護を受給している相手への請求を相談するときは、次の資料や情報を分かる範囲でまとめてください。
- 公正証書、調停調書、離婚協議書などの取り決め
- 通帳や取引履歴など、最後の入金日と未払い額が分かる資料
- 生活保護を受け始めた時期について、相手から届いた連絡
- 保護費以外の収入、就労状況、財産として分かっていること
- ご自身の収入と、子どもの生活費・教育費・医療費
生活保護を受給していても、養育費を請求することはできます。ただし、生活保護費そのものは差し押さえられず、月額と回収可能性は個別に考える必要があります。