生活保護を受給していると、「養育費を受け取ったら生活保護が止まるのでは」「役所へ申告すると、結局もらえなくなるのでは」と不安に思う方もいると思います。
結論から言うと、生活保護を受給していても、子どもの養育費を受け取ることはできます。ただし、実際に受け取った養育費は、原則として生活保護上の収入として福祉事務所へ申告し、保護費の計算に反映されます。
生活保護は、ほかから一切お金を受け取れない人だけが利用する制度ではありません。世帯の収入が最低生活費に足りないときに、その不足分を支給する制度です。そのため、養育費を受け取る権利と、受け取った後の生活保護費の計算は別の話として考える必要があります。
生活保護を受給していても、養育費は受け取れます
父母には、それぞれの経済状況に応じて子どもの生活費を負担する責任があります。受け取る側が生活保護を利用していることだけで、相手が養育費を分担する責任や、受け取る側が養育費を求めることがなくなるわけではありません。
養育費をまだ決めていない場合は、相手と月額や支払日を話し合えます。話し合いがまとまらない場合や、相手と話し合うことが難しい場合は、家庭裁判所の養育費請求調停・審判を利用できます。
養育費を受け取ったら、福祉事務所へ申告してください
養育費が実際に振り込まれたら、受給している生活保護を担当する福祉事務所または担当ケースワーカーへ速やかに伝えてください。役所のどの窓口へ行けばよいか分からないときは、生活保護の担当窓口で「養育費を受け取ったので収入申告をしたい」と伝えれば案内を受けられます。
申告するときは、次の内容が分かる資料を用意します。
- 養育費を受け取った日と金額
- 何月分の養育費として受け取ったのか
- 通帳、インターネットバンキングの取引明細など入金が分かるもの
- 合意書、公正証書、調停調書など養育費の取り決めが分かる書面
自治体によって収入申告書の様式や提出方法が違うため、担当ケースワーカーから案内された方法で提出してください。養育費の支払いが始まることや、一括払いを受けることが具体的に決まった場合は、入金前に相談しておくと、受け取った後の申告が進めやすくなります。
養育費を受け取ると、生活保護費はどうなる?
生活保護費は、国が定める世帯の最低生活費から、世帯の収入として認定された金額を差し引いて決まります。
そのため、養育費を受け取ると、その金額を含めて生活保護費が計算されます。ただし、養育費を受け取っただけで生活保護が必ず終了するわけではありません。養育費やほかの収入を合わせても最低生活費に足りない場合は、不足分が保護費として支給されます。
実際の保護費は、世帯の人数、子どもの年齢、居住地域、家賃、各種加算、ほかの収入によって変わります。養育費が入った月に保護費がいくらになるかは、入金額と資料を示して福祉事務所へ尋ねてください。
養育費は全額が収入として扱われる?
通常の養育費は、原則として生活保護上の収入として扱われます。「子どものために使うお金だから申告しなくてよい」「学用品や食費に使えば収入にならない」という扱いではありません。
養育費を受け取るために実際に必要となった費用などがある場合は、その内容と領収書を福祉事務所へ示してください。収入から差し引けるかどうかは、費用の内容や資料をもとに福祉事務所が判断します。
振込・現金・一括払いでは、何を申告すればよい?
毎月振り込まれる場合
通帳や取引明細を使い、入金日、金額、振込人名、何月分として受け取ったのかを伝えます。毎月同じ金額であっても、福祉事務所から指定された時期に収入申告を続けてください。
現金で受け取った場合
現金でも申告は必要です。受領日、金額、支払った人、対象月を記録し、領収書や受領書を作成した場合は一緒に提出します。記録がないことを理由に、申告しなくてよいわけではありません。
過去の未払い分や将来分をまとめて受け取った場合
一括で受け取った金額を、自分の判断で毎月分に分けて申告するのは避けてください。入金日、総額、過去分か将来分か、何月分から何月分までかが分かる書面やメッセージを示し、収入として扱う時期を福祉事務所へ尋ねてください。
取り決めはあるのに、実際には振り込まれていない場合
決めた養育費と実際に受け取った金額を区別して伝えます。入金がない月は、通帳や取引明細、相手との連絡記録を示し、「月額は決まっているが入金されていない」と担当ケースワーカーへ伝えてください。
養育費を申告しなかった場合はどうなる?
養育費を受け取ったのに申告しないまま生活保護費を受けていると、後から保護費が再計算され、受け取り過ぎた分の返還や徴収を求められることがあります。
申告漏れに気づいた場合は、そのままにせず、入金日、金額、対象月が分かる通帳や明細を持って福祉事務所へ相談してください。申告漏れがすべて直ちに不正受給になるわけではありませんが、収入を隠したり事実と違う申告をしたりすると、不実の申請などによる徴収の対象となる場合があります。
福祉事務所へ伝えるときの例
元配偶者から、養育費として○月○日に○円を受け取りました。○月分の養育費です。通帳の入金明細と取り決めの書面を持ってきました。収入申告に必要な書類と提出方法を教えてください。
相手も生活保護を受給している場合、養育費は請求できる?
相手が生活保護を受給していても、養育費について話し合ったり、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てたりすることはできます。ただし、請求できることと、実際に支払ってもらえる金額は同じではありません。
相手に保護費以外の収入や資産があるか、健康状態や就労状況はどうかなどを踏まえて、支払額が判断されます。生活保護費そのものと、生活保護を受ける権利は差し押さえられません。相手に差し押さえられる収入や財産がなければ、すぐに回収することが難しい場合もあります。
養育費の支払いが始まる前に、申告方法を聞いておくと安心です
養育費の支払いが始まる前や、一括払いを受ける前に担当ケースワーカーへ相談しておけば、必要な資料や申告の時期を事前に知ることができます。すでに受け取っていて申告していない場合も、通帳や取引明細を持参し、現在の状況をそのまま伝えてください。