養育費を増額してほしいとき、何を準備して、どのように伝えればよいのでしょうか。
子どもの進学や継続的な医療費などで負担が増えると、離婚時に決めた金額のままでよいのか迷うことがあります。
一度決めた養育費でも、取り決め後に事情が変わったときは増額を求めることができます。ただし、希望を伝えただけで金額が自動的に増えるわけではありません。
現在の取り決めと変わった事情を整理し、希望する月額・開始時期・根拠資料を示すことが、相手との話し合いにも家庭裁判所の手続にも共通する準備です。
増額を求める前に取り決め当時と現在を比べます
まず、離婚協議書、公正証書、調停調書、審判書など、現在の養育費を決めた書面を手元に用意します。
次に、取り決めた当時と現在で何が変わったのかを書き出します。増額の希望だけではなく、変化した時期と毎月・一時的に増えた費用を分けることが大切です。
| 整理する内容 |
書き出すこと |
| 現在の取り決め |
月額、支払日、支払期間、進学費用・医療費の別途負担 |
| 取り決め後の変化 |
進学、継続的な医療費、父母の収入変化などが生じた時期 |
| 子どもの現在の費用 |
授業料、教材費、通学費、医療費などの金額と支払頻度 |
| 希望する内容 |
新しい月額、開始時期、毎月の養育費とは別に分担したい費用 |
増額が検討される条件は事情を組み合わせて判断されます
増額が問題になるのは、取り決め後に子どもの費用や父母の負担能力が変わった場合です。進学した、相手の収入が上がったという事情だけで、希望額への増額が決まるわけではありません。
| 変わった事情 |
主に見る内容 |
| 子どもが進学した |
取り決め当時に進学を見込んでいたか、入学金・授業料・通学費等の負担がどの程度増えたか |
| 継続的な医療費が必要になった |
治療内容、自己負担額、支出が続く見込み、助成の有無 |
| 支払う側の収入が増えた |
取り決め当時と現在の収入差、受け取る側の収入、子どもの人数・年齢 |
| 受け取る側の収入が減った |
減収の理由と期間、現在の就労状況、子どもの費用、相手の収入 |
条件の詳しい見方は、次の記事で取り決め当時との比較から説明しています。
希望額の基準は父母の収入と子どもの状況です
増額後の月額は、相手の収入だけで決めるものではありません。父母双方の収入、子どもの人数・年齢、現在の取り決め、個別に必要となった費用を合わせて考えます。
相手の収入が分からない場合は、推測で年収を決めず、分かっている勤務先や収入状況を整理します。家庭裁判所の手続では、双方の収入等について事情を聴き、必要に応じて資料を提出して検討します。
増額の理由を示す資料を揃えます
すべての資料が最初から揃っていなくても、手元にあるものから始められます。何の費用が、いつから、どのくらい増えたのかが分かる資料を優先します。
| 資料 |
分かること |
| 現在の取り決め書面 |
現在の月額・期間と、進学費用等について既に決めた内容 |
| 学校からの案内・納付書 |
入学金、授業料、教材費、通学費等の支払時期と金額 |
| 医療費の領収書・診療明細 |
治療内容、自己負担額、支出が続く期間 |
| 自分の収入資料 |
源泉徴収票、給与明細、確定申告書等から分かる現在の収入 |
| 相手の収入に関する手元資料 |
以前に受け取った源泉徴収票等と、現在分として相手へ求める資料 |
| 支払いの記録 |
現在の養育費が取り決めどおり支払われているか |
SNSの投稿や生活ぶりだけから相手の年収を決めつけず、収入資料と子どもの支出資料を分けて扱います。
相手へは理由・希望額・開始時期を文章で伝えます
増額を求めるときは、「足りないので増やしてほしい」だけでなく、取り決め後に変わった事情と、希望する月額・開始時期を文章で伝えます。
相手から返答があった日、提示された金額、合意できた内容と合意できなかった内容を残します。電話で話した場合は、話した内容をLINEやメールで送り、認識が合っているかを文章にしておく方法があります。
合意できたら新しい金額と開始月を書面に残します
父母で増額に合意できた場合は、口頭だけで終わらせず、変更した内容を文章にします。
- 変更後の月額と支払日
- 何年何月分から増額するか
- 支払いが終わる時期
- 入学金・授業料・医療費等を毎月の養育費と別に負担するか
- 将来、事情が変わった場合の連絡方法と見直し方
以前の取り決めが公正証書、調停調書、審判書である場合は、変更後の合意が将来の請求や強制執行へどのように影響するかも考える必要があります。以前の書面と新しい文案を一緒に見て、内容に食い違いがないようにします。
合意できない場合は家庭裁判所へ増額調停を申し立てます
相手と話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合は、家庭裁判所へ養育費の増額を求める調停・審判を申し立てることができます。
| 手続の項目 |
内容 |
| 申立先 |
相手の住所地の家庭裁判所、または父母が合意して決めた家庭裁判所 |
| 費用 |
子ども1人につき収入印紙1,200円と、裁判所ごとに異なる連絡用郵便料 |
| 標準的な書類 |
申立書と写し、子どもの戸籍謄本、自分の収入資料、事情説明書、進行に関する照会回答書 |
| 追加で整理する資料 |
現在の取り決め、子どもの費用、取り決め後に変わった事情、増額を求めた記録 |
調停では、子どもにかかる費用、父母双方の収入などの事情と資料をもとに合意を目指します。調停で合意できない場合は審判が始まり、裁判官が一切の事情を考慮して判断します。
増額を求めた日と希望する開始時期を残します
増額分がいつから支払われるかは、父母で合意した開始月または家庭裁判所の個別の判断によります。進学した月や費用が増えた月まで、当然にさかのぼるわけではありません。
相手へ増額を求めた日、理由、希望額、開始時期が分かるLINEやメールを残します。家庭裁判所へ申し立てた場合は、申立日と提出した内容も保管してください。
養育費を増額してほしいときは準備した内容から伝えます
養育費の増額を求めるときは、現在の取り決め、取り決め後に変わった事情、子どもの費用、父母の収入、希望する月額と開始時期を分けて整理します。
相手と合意できれば変更内容を書面に残し、合意できない場合や話し合いができない場合は家庭裁判所の手続を利用できます。希望額がそのまま認められるとは限らないため、変わった事情と根拠資料を具体的に示すことが大切です。
ご相談の際は、現在の取り決め書面、相手へ送った内容、子どもの費用資料、自分の収入資料を分かる範囲でお送りください。増額を求める理由と、相手との話し合い・家庭裁判所手続のどちらから進めるかを整理します。