養育費について公正証書を作りたい、保証会社と契約したい、調停や回収の手続きを進めたいと思っても、費用の負担が気になり、手続きを進められない方は少なくありません。そのような方を費用と相談の両面から支える自治体の事業が「養育費確保支援事業」です。
養育費確保支援事業は、自治体から毎月の養育費が支給される制度ではありません。
養育費をきちんと取り決め、約束どおり受け取れる状態に近づけるため、公正証書の作成、保証会社との契約、ADR、調停や強制執行、弁護士への相談・依頼などにかかる費用の全部または一部を自治体が補助する事業です。
ただし、すべての自治体が同じ支援を行っているわけではありません。対象となる費用、補助額、利用条件、申請期限は自治体ごとに異なり、お住まいの地域では実施されていない場合もあります。
養育費確保支援事業で受けられる主な支援は5つです
自治体によって組み合わせは異なりますが、主な支援は次の5つです。
- 公正証書など、養育費の取り決めを書面にする費用
- 保証会社と契約するときの初回保証料
- ADRを利用して養育費を取り決める費用
- 調停・強制執行・弁護士へ依頼する費用
- 弁護士相談や家庭裁判所・公証役場への同行支援
ここからは、それぞれの支援で何を補助してもらえる可能性があるのかを具体的に説明します。
01|公正証書など、養育費の取り決めを書面にする費用
多くの自治体で案内されているのが、養育費の取り決めを公正証書などの書面にするための費用補助です。
公証役場へ支払う公証人手数料、戸籍謄本や住民票等の取得費用、連絡用の郵便切手代などが対象になる場合があります。家庭裁判所で調停や審判を利用し、調停調書や審判書を取得する際の費用を支援する自治体もあります。
ただし、養育費について書かれた書面なら何でも対象になるわけではありません。強制執行を受けても異議がないという内容が入った公正証書など、将来の不払いに備えられる書面であることを条件とする自治体があります。
作成後に申請できるのか、作成前の相談が必要なのかも自治体ごとに違います。公証役場へ費用を支払う前に、自治体の窓口へ問い合わせてください。
02|保証会社へ支払う初回保証料
養育費保証は、相手からの支払いが止まった場合に、契約した保証会社が一定の範囲で養育費を立て替え、その後に支払義務者へ督促する民間サービスです。
自治体の支援事業では、保証契約を結ぶときに支払う初回保証料を補助する場合があります。ただし、保証会社へ毎年支払う更新料や、契約後に生じるすべての費用まで補助されるとは限りません。
契約期間、保証する月数、保証料の上限、利用できる保証会社も制度によって異なります。なお、自治体が補助するのは保証会社との契約費用であり、未払い養育費そのものを自治体が直接支払う制度ではありません。
03|ADRを利用して養育費を取り決める費用
ADRは、裁判所ではなく、弁護士会や法務大臣の認証を受けた民間機関などが間に入り、当事者の話し合いによる解決を支える手続です。
自治体によっては、ADRの申込料、依頼料、初回の調停期日に支払った費用などを補助します。相手との直接の話し合いが難しいものの、家庭裁判所へ申し立てる前に第三者を交えて解決したい場合に利用されることがあります。
どのADR機関でも対象になるとは限らず、法務大臣の認証を受けた機関などに限定される場合があります。交通費や会場費など、手続以外の費用が対象外になることもあるため、利用する機関を決める前に自治体へ問い合わせてください。
04|調停・強制執行・弁護士へ依頼する費用
養育費の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てる方法があります。すでに取り決めがあるのに支払われない場合は、相手の給与や預貯金などを対象に強制執行を申し立てることがあります。
自治体によっては、調停の収入印紙・郵便切手・戸籍謄本等の取得費用、強制執行の申立費用、弁護士へ依頼する費用の一部を補助します。
支援の対象が裁判所へ納める費用だけなのか、弁護士費用まで含むのかは自治体ごとに異なります。すでに支払った費用が対象外となり、利用前の申請や事前相談が必要な場合もあります。
05|弁護士相談や家庭裁判所・公証役場への同行支援
養育費確保支援事業は、費用の補助だけを指すとは限りません。自治体によっては、養育費専門の相談員や弁護士による相談、取り決め方法の案内、家庭裁判所や公証役場への同行支援を行っています。
「公正証書を作るべきか」「調停を申し立てた方がよいか」「不払いが起きたので回収したい」など、同じ養育費の相談でも必要な支援は状況によって違います。
どの制度へ申し込めばよいか分からない場合は、自治体のひとり親家庭支援窓口へ現在の状況を伝えると、利用できる支援を案内してもらえる場合があります。
利用できる方には、自治体ごとの条件があります
対象者の条件は自治体ごとに異なります。次の項目は、多くの制度で条件として案内されている内容です。
- 申請先の自治体に住んでいること
- 養育費の対象となる子どもを実際に扶養していること
- 同じ費用について過去に補助を受けていないこと
- 公正証書や保証契約など、対象となる手続の費用を申請者が負担していること
- 自治体が定める申請期限内であること
所得制限を設けている自治体もあれば、所得ではなく居住地や扶養状況を中心に審査する自治体もあります。ひとり親になった後だけでなく、離婚前から利用できる支援もあるため、「まだ離婚していないから対象外」と決めつけず、窓口へ問い合わせてください。
費用を支払う前に、必ず自治体の窓口へ問い合わせてください。
制度によっては、公正証書の作成、保証契約、ADRの申込み、調停・強制執行の申立てより前に、相談や申請が必要です。先に費用を支払うと補助の対象外になる可能性があります。
対象となる費用、補助上限、必要書類、申請期限、事前相談の要否を確かめたうえで手続きを進めてください。領収書、契約書、公正証書、調停調書など、費用と手続内容が分かる書類は捨てずに保管してください。
支援内容と補助額は自治体によって異なります
養育費確保支援事業は、全国で同じ内容・同じ補助額が用意されている制度ではありません。公正証書作成費用だけを対象とする自治体もあれば、保証料、ADR、調停、強制執行、弁護士費用まで幅広く支援する自治体もあります。
自治体の名称も、「養育費確保支援事業」「ひとり親家庭養育費確保支援」「養育費履行確保支援」などさまざまです。お住まいの都道府県・市区町村名と「養育費確保支援」「公正証書 補助」「養育費保証料 補助」などを組み合わせて探してください。
北海道から沖縄まで、都道府県別の養育費確保支援制度は、次のページから確認できます。
利用したい制度が見つかった場合は、費用を支払ったり契約を結んだりする前に、自治体の窓口へ最新の対象条件と必要書類をお問い合わせください。
養育費の立て替え制度とは別の支援です
養育費確保支援事業は、公正証書や保証契約、調停、回収手続などにかかる費用を補助し、養育費を取り決め、受け取りやすくするための制度です。自治体が毎月の養育費を代わりに支払うものではありません。
一部の自治体では、支払われなかった養育費そのものを一定期間立て替える独自制度を実施していますが、養育費確保支援事業とは仕組みも対象も異なります。制度を探すときは、費用の補助を受けたいのか、未払い養育費そのものの立て替えを探しているのかを分けて確認することが大切です。
養育費の取り決めや回収を進めたいものの、どの手続が必要か分からない場合は、補助の有無だけでなく、現在の取り決めと支払い状況も合わせて整理すると、必要な支援を見つけやすくなります。