「養育費の不払いを国や自治体が立て替えてくれるらしい」と聞き、本当なのか調べている方もいらっしゃるでしょう。
結論からお伝えすると、2026年9月時点で、国が不払い養育費を全国一律に立て替える制度はありません。
一方で、自治体が独自に行う立て替え制度は実在します。明石市とさいたま市では、一定の条件を満たす方を対象に、自治体が未払い養育費の一部を立て替えています。どこに住んでいても利用できる制度ではなく、金額や期間にも上限があります。
ここからは、自治体による立て替えがどのような制度なのか、誰が利用できるのか、明石市とさいたま市の実例をもとに詳しく説明します。
養育費の立て替え制度とは、どのような仕組みですか?
不払い養育費の立て替え制度とは、取り決めた養育費が支払われないときに、自治体が支払義務者へ支払いを促し、それでも支払われない場合に、自治体が未払い分の一部を受取側へ先に支払う制度です。
立て替えた後は、自治体が支払義務者へ督促します。自治体から受け取ったお金を、受取側が後から自治体へ返す仕組みではありません。
一方で、これまでの未払い額をすべて受け取れる制度ではありません。明石市とさいたま市はいずれも、月額と支給月数に上限を設けています。また、申込みをすればすぐに支給されるのではなく、自治体から支払義務者への働きかけが先に行われます。
国の養育費制度と、自治体の立て替え制度は別のものです
2026年4月に養育費に関する法律が改正され、法定養育費、養育費の先取特権、回収手続の負担を軽くする制度などが始まりました。しかし、これらは国が不払い分を代わりに支払う制度ではありません。
国では、公的機関による養育費の立て替えや取立てについて検討・論点整理が行われたことがあります。現在利用できる立て替えは、国への申請ではなく、実施している自治体が定めた条件に従って申し込む仕組みです。
そのため、明石市やさいたま市以外にお住まいの方が、国へ申請して未払い養育費を受け取ることはできません。まずは、ご自身が住んでいる自治体に直接立て替えの制度があるかを確認する必要があります。
明石市では最大3か月分・月額5万円まで立て替えています
明石市の「こどもの養育費立替支援事業」では、養育費が支払われないときに、市が支払義務者へ働きかけます。それでも支払いがない場合は、最大3か月分、月額5万円を上限として市が立て替え、その後、市が支払義務者へ督促します。
明石市の制度を利用できる方
申込時にひとり親家庭であり、養育費の対象となる子どもが明石市に住んでいることが前提です。さらに、調停調書や公正証書などの債務名義で養育費を取り決めていること、前月分の養育費を受け取れていないことのすべてを満たす必要があります。
子どもが明石市に住んでいない場合は、この制度を利用できません。また、口約束だけで養育費を決めている場合は、明石市が求める債務名義の要件を満たしません。
さいたま市でも最大3か月分・児童1人当たり月額5万円まで立て替えています
さいたま市の「養育費立替支援事業」でも、養育費が支払われないときは、まず市が支払義務者へ働きかけます。それでも支払いがない場合に、児童1人当たり月額5万円を上限として、最大3か月分を予算の範囲内で立て替えます。その後、市が支払義務者へ督促します。
さいたま市の制度を利用できる方
申請時にさいたま市に住んでいるひとり親家庭の母または父であることが前提です。そのうえで、児童扶養手当を受給しているか同等の所得水準にあること、養育費の取り決めに関する債務名義を持っていること、対象となる子どもを実際に扶養していること、前月分の養育費を受け取れていないこと、過去にこの事業へ申し込んでいないことのすべてを満たす必要があります。
申込みを希望する場合は、さいたま市役所子育て支援課の「ひとり親家庭就業・自立支援センター」へ連絡し、対象になるかを確認してください。
誰でも利用できる制度ではありません
明石市は子どもが明石市に住んでいること、さいたま市は申請者がさいたま市に住んでいることを要件としています。これらの居住要件を満たさない方が、明石市やさいたま市へ申し込むことはできません。
また、どちらの制度も、養育費について調停調書や公正証書などの債務名義があることと、前月分が支払われていないことを要件にしています。さいたま市には所得水準や過去の申込みに関する要件もあります。
「養育費の不払いがある」という事情だけで、すべての方が利用できるわけではありません。住所、子どもの居住地、養育費の取り決め方、未払いの時期を確認したうえで、自治体の窓口へ問い合わせる必要があります。
立て替えてもらえるのは未払い額の全部ではありません
明石市とさいたま市の制度はいずれも、最大3か月分、月額5万円が上限です。たとえば、未払いが1年以上続いていても、これまでの未払い額をすべて自治体が立て替える制度ではありません。
毎月の養育費が5万円を超えている場合も、上限を超える部分まで自治体から支払われるわけではありません。立て替えの対象外となる過去分や上限を超える金額は、支払義務者に対する未払い養育費として残ります。
制度を利用する際は、立て替えを受けられる月と金額だけでなく、残る未払い分をどのように請求するかも分けて考えることが大切です。
「養育費保証」や「費用の補助」は立て替え制度とは別です
自治体のホームページでは、養育費保証会社へ支払う初回保証料の補助、公正証書を作成する費用の補助、裁判所で回収手続を行う費用の補助などが案内されていることがあります。
これらは、自治体が未払い養育費そのものを受取側へ支払う制度ではありません。また、民間の養育費保証は、自治体ではなく保証会社との契約に基づいて支払われる仕組みです。
制度名に「養育費」「保証」「支援」と書かれていても、未払い養育費の直接立て替えとは限りません。自治体の説明では、誰が支払うのか、未払い分そのものが対象なのかを確かめてください。
立て替えの対象にならない未払い分は、相手への請求が必要です
明石市やさいたま市で立て替えを受けられる場合でも、支給されるのは最大3か月分、月額5万円までです。それより前の未払い分や上限を超える金額は、相手から支払われるべき養育費として残ります。お住まいの自治体に立て替え制度がない場合や、申込条件を満たさない場合も同じです。
未払い分を請求する方法は、調停調書や公正証書などの書面があるか、支払いが止まってからどのくらい経っているか、相手と連絡が取れるかによって異なります。手元の書面や未払いの期間をどのように伝えればよいか分からない方は、養育費の無料相談についてをご覧ください。分かる範囲から、弁護士へ現在の状況を相談できます。
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