婚姻関係にない父母の間に生まれた子どもは、父が認知することで、父との法律上の親子関係が生じます。
認知がない間は法律上の父子関係が成立していないため、父へ養育費を法的に請求するには、原則として先に認知の手続を進めます。
父が認知に応じる場合は認知届を提出します。応じない場合も、家庭裁判所の認知調停と認知の訴えを利用できます。認知がないことだけで、養育費の請求を検討できないわけではありません。
認知前の送金と認知後の養育費請求は分けて考えます
認知前でも、相手が任意に子どもの生活費を送金することはできます。ただし、任意の送金を受けていることと、法律上の父へ養育費を請求できる状態は同じではありません。
認知が成立すると、父子の法律上の親子関係が生じます。そのうえで、父母が養育費の月額、支払いを始める時期、支払日、終期などを話し合います。
認知が成立しただけで、毎月の養育費の金額や支払日まで自動的に決まるわけではありません。認知と養育費の取り決めを二つの手続として整理しましょう。
父が認知に応じるかで手続が分かれます
父が認知に応じるかどうかで、認知届、認知調停、認知の訴えのどこから進めるかが変わります。認知成立後は、養育費の取り決めへ進みます。
父が認知に応じるかで手続が分かれます父へ認知を求める
- 認知に応じる:認知届を提出 — 市区町村へ認知届を出し、子どもの戸籍で認知の記載を確かめます。
- 認知に応じない:認知調停を申立て — 合意できなければ、認知の訴えで家庭裁判所の判断を求めます。
認知成立後:養育費の月額・開始時期・支払日・終期を決める
父が認知に応じる場合は認知届を提出します
民法781条では、認知は戸籍法に従って届け出る方法と、遺言による方法が定められています。父が任意認知に応じる場合は、市区町村へ認知届を提出します。
認知届が受理された後は、子どもの戸籍で認知の記載を確かめます。その後、父母で養育費の条件を決め、合意内容を文章に残します。
父から送金が続いている場合も、認知届の有無と養育費の条件を分けて整理することが大切です。
父が認知に応じない場合は家庭裁判所へ認知調停を申し立てます
認知調停の申立人は、子、子の直系卑属、これらの法定代理人です。未成年の子どもについて、法定代理人が申し立てる場合もあります。
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所または父母が合意で定める家庭裁判所です。申立費用は、子ども1人につき収入印紙1,200円と、裁判所ごとに異なる連絡用郵便料です。
調停で父子関係について合意しても、それだけで認知が成立するわけではありません。家庭裁判所が必要な事実を調査し、合意を正当と認めた場合に、合意に従った審判がされます。
標準的な添付書類は、子どもの戸籍謄本、相手方の戸籍謄本、進行に関する照会回答書です。申立前に入手できない相手方の戸籍がある場合は、申立後の追加提出でも差し支えないと裁判所が案内しています。
調停で合意できなければ認知の訴えを検討します
父が生存している場合は、原則として認知調停を経た後に認知の訴えへ進みます。訴訟では、父子の血縁関係を示す証拠をもとに家庭裁判所が判断します。
DNA鑑定は、父子関係を調べる資料の一つです。裁判所は、親子関係を明らかにするため鑑定を行う場合があり、その場合は原則として申立人が費用を負担すると案内しています。
DNA鑑定だけで認知が成立するわけではありません。鑑定を実施するか、どの資料を重視するか、父子関係を認めるかは、個別の手続で判断されます。
認知の効力が出生時に遡っても過去分の金額は自動的に決まりません
民法784条により、認知は出生時に遡って効力を生じます。これは、法律上の父子関係が出生時から生じたものとして扱われるという意味です。
一方で、出生時から現在までの養育費が自動的に全額確定するわけではありません。過去分を求められる場合はありますが、対象期間、金額、支払方法は父母の合意または家庭裁判所の判断が必要です。
法テラスは、父母で協議できない場合や協議がまとまらない場合、過去分をどこまで遡るかは裁判所が判断し、実務上は請求した時以降に限られることが多いと案内しています。
初めて養育費を求めた日、認知を求めた経緯、子どもの生活費、これまで父母が負担した金額が分かる資料を整理してください。
認知成立後に養育費の月額・開始時期・支払日・終期を決めます
認知が成立した後は、父母双方の収入、子どもの人数・年齢、毎月の生活費などをもとに、養育費の条件を話し合います。
話し合いがまとまらない場合や、父と直接話し合うことが難しい場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てる方法があります。
妊娠中でも任意認知や胎児認知の調停を検討できます
民法783条では、父は母の承諾を得て胎児を認知できると定めています。父が任意認知に応じない場合は、母が胎児認知の届出を求める調停を申し立てる方法があります。
調停が成立しない場合、認知の訴えは子どもの出生後に提起することになります。妊娠中は、父の氏名・住所、認知を求めた記録、交際や妊娠に関する資料を整理しておきましょう。
父が死亡している場合は死亡日から3年の期限に注意します
民法787条は、父または母の死亡日から3年を経過すると、認知の訴えを提起できないと定めています。父が死亡している場合は、死亡日と戸籍を確かめ、期間を過ぎる前に手続を検討する必要があります。
父の住所が分からない場合も、何もできないと決まるわけではありません。分かっている氏名、生年月日、以前の住所、勤務先、親族情報などを整理し、住所を確認する方法を検討します。
申立前に父子関係と養育費に使う資料を分けてそろえます
認知の手続に使う資料と、認知成立後に養育費を決めるための資料を分けると、準備する目的が明確になります。
- 子どもの戸籍謄本と、入手できる場合は相手方の戸籍謄本
- 相手の氏名、生年月日、住所、以前の住所、連絡先
- 交際時期、妊娠、父子関係に関するLINE・メール・写真等
- 認知や養育費を求めた日付と、相手から届いた返答
- 子どもの毎月の生活費、教育費、医療費を示す資料
- 父母双方の給与明細、源泉徴収票、確定申告書等の収入資料
資料がすべてそろっていない場合は、手元にあるものと、不明なものを分けて一覧にします。相手方の戸籍など申立前に取得できない書類については、申立後に追加提出できる場合があります。
認知と養育費の二つの手続を分けて相談できます
認知が成立しているか、父が認知に応じるか、父の住所が分かるか、養育費をいつから求めたかによって、先に進める手続が変わります。
戸籍、相手の情報、認知を求めた記録、子どもの生活費が分かる資料を見ても順序を判断しにくい場合は、分かる範囲の内容をLINEからお送りください。相談は何度でも無料です。