口約束の養育費は請求できる?書面がない場合に確認したい5つの手がかり

弁護士
木村 和弘
「離婚するとき、相手は『毎月、養育費を払う』と言いました。でも、書面はなく、口約束だけです。この約束でも請求できるのでしょうか」
書面が残っていない場合、「口約束だけで本当に請求できるのか」が気になるところではないでしょうか。
結論からお伝えすると、口約束だけでも、養育費について双方が合意していれば請求できます。
書面を作っていないという理由だけで、父母の間でした約束が直ちになくなるわけではありません。
ただし、相手が後から約束を否定したときは、金額や支払期間についてどのような合意があったのかを、残っている記録から示せるかが問題になります。
口約束でも養育費の合意は成立します
契約は、申込みに対して相手が承諾すれば成立し、法律に特別な定めがない限り、書面の作成は必要とされていません。
そのため、養育費について父母の間で金額や支払期間を決めた場合、その合意は口頭でも成立し得ます。
たとえば、「毎月3万円を20歳まで支払う」と話し、お互いがその内容に同意していたのであれば、書面がないことだけを理由に約束が無効になるわけではありません。
一方で、「養育費を払う」とだけ話し、月額や支払期間を決めていなかった場合は、具体的な約束の内容が定まっていたとは言い切れません。
「請求できる」と「約束を確認できる」は別の問題です
相手が口約束の内容を認めている場合は、月額、支払日、支払期間などを改めて書面へ残すことができます。
相手が「そんな約束はしていない」「金額までは決めていない」と否定する場合は、次の内容についてどこまで合意していたのかを、記録から整理します。
| 口約束で決めた内容 |
記録から整理すること |
| 月額 |
毎月いくらを支払うと話したか |
| 支払日 |
毎月いつまでに支払うと話したか |
| 支払期間 |
いつからいつまで支払うと話したか |
| 支払方法 |
振込みか手渡しか、振込先まで決めたか |
合意が成立し得ることと、合意した内容を後から示せることは別の問題です。
書面がない場合に確認したい5つの手がかり
正式な合意書がなくても、話し合った当時や支払いが始まった後の記録が残っていることがあります。
どれか一つだけで合意内容のすべてが決まるわけではありません。複数の記録を時系列に並べ、互いに内容が合っているかを見ていきます。
1. LINE・メール・SMSのやり取り
「毎月3万円を振り込む」「20歳まで支払う」などのメッセージが残っていれば、養育費を支払う約束や具体的な条件を整理する材料になります。
該当する一文だけでなく、前後の会話、送信日時、相手のアカウントが分かる形で残しておくと、やり取りの経緯を確認しやすくなります。
2. 通帳・振込明細
相手から毎月ほぼ同じ金額が振り込まれていた場合、その記録は口約束の内容を考える材料になります。
振込名義、金額、日付、支払いが始まった時期、止まった時期を一覧にすると、継続して支払われていた金額が分かります。
ただし、振込履歴だけでは、そのお金が養育費なのか、何月分なのか、いつまで支払う約束なのかまで分からないこともあります。支払いの理由が分かるメッセージなどと一緒に見ます。
3. 話し合いの録音
養育費について話した録音が残っていれば、父母がそれぞれどのような条件を示し、相手がどのように返答したかを確かめられます。
録音の一部分だけでなく、話し合いの流れと日時が分かる元のデータをそのまま保管しておきましょう。
4. 当時のメモ・カレンダー
話し合った直後に作成したメモやカレンダーには、話した日、場所、参加者、当時整理した月額や期間が残っていることがあります。
ただし、自分だけで作ったメモは、それだけで相手も同じ内容に合意したことを示すものではありません。ほかのやり取りと照らし合わせるための記録として扱います。
5. 支払いが遅れた後の相手の返答
支払いが始まった後に、「今月分は来週払う」「未払いの6万円は月末に振り込む」などの返答が残っていることがあります。
このような返答は、相手が養育費の支払いや未払い額をどのように認識していたかを整理する材料になります。ただし、支払期間など口約束の全条件まで分かるとは限りません。
相手が口約束を否定したら請求できないのか
相手に否定されたからといって、それだけで口約束がなかったことになるわけではありません。
まずは、5つの手がかりのうち手元にあるものを集め、約束した時期、月額、支払日、支払期間を整理します。
残っている記録からどこまで示せるかは、それぞれの状況で異なります。「口約束をした記憶がある」ということだけで、決めた内容のすべてを示せるとは限りません。
相手も合意内容を認めているなら、今後の行き違いを防ぐため、月額や支払期間を改めて書面へ残しておくと安心です。
記録を示しても話し合いがまとまらない場合や、話し合い自体ができない場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てる方法があります。
口約束の内容を示す記録を整理しましょう
口約束だけで養育費を決めた場合でも、それだけで請求できなくなるわけではありません。
大切なのは、養育費を支払う合意があったか、そして何を決めていたのかを記録から整理することです。
LINE・メール・SMS、通帳・振込明細、録音、当時のメモ、支払いが遅れた後の返答を見直し、時系列に並べておきましょう。
どの記録が口約束の内容を示す材料になるのか迷ったときは、お気軽にご相談ください。