養育費の支払日を過ぎても入金がない場合、未払いの養育費とは別に、遅れた期間について遅延損害金を請求できることがあります。
ただし、いつから発生するか、何%で計算するか、未払い分と一緒にどの手続で請求できるかは、現在の取り決めによって異なります。支払期日と利率が分かる書面を先に確かめることが大切です。
遅延損害金は支払いが遅れた期間に対する損害賠償です
遅延損害金は、支払義務のある金銭を期限どおりに支払わなかった場合に生じる損害賠償です。養育費そのものへ毎月加算される利息ではなく、期限を過ぎた各支払分について、遅れた期間に応じて計算します。
| 区分 |
意味 |
| 未払い養育費 |
支払期日までに支払われなかった養育費の元金 |
| 遅延損害金 |
その元金が遅れた期間について計算する損害賠償 |
遅延損害金を請求できる状態でも、相手から自動的に入金されるわけではありません。請求額を整理して伝え、支払いがなければ手元の書面に応じた手続を検討します。
支払日が決まっているかで発生時期が変わります
毎月末日など、養育費の支払日が決まっている場合は、相手がその期限を過ぎても支払わなかったときに遅滞責任が生じます。実際の計算では、通常、支払期日の翌日から支払日または計算基準日までの日数を数えます。
支払日を決めていない場合は、単に入金がないだけでは開始日を決められません。相手が支払いの請求を受けた時から遅滞責任を負うため、いつ、どの方法で請求が届いたかを確認できる資料が必要になります。
| 取り決め |
遅滞責任を考える時点 |
| 毎月の支払日が決まっている |
その支払期限が到来した時 |
| 支払日を決めていない |
相手が支払いの請求を受けた時 |
遅延損害金の利率は書面の合意と遅れ始めた時期で決まります
公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書などに遅延損害金の利率が書かれている場合は、まずその記載を見ます。
利率の合意がない場合は、遅滞責任が生じた最初の時点の法定利率を使います。2026年9月現在、法定利率は年3%ですが、将来も年3%のままとは限りません。
| 遅滞責任が生じた時期 |
合意した利率がない場合の法定利率 |
| 2020年3月31日以前 |
年5% |
| 2020年4月1日から2029年3月31日まで |
年3% |
| 2029年4月1日以後 |
今後の法定利率を確認 |
毎月払いでは、月ごとに別の支払期限があります。法定利率が変わる時期をまたぐ未払いがある場合は、取り決めをした日だけで判断せず、各月分について遅滞責任が生じた時点を分けてください。
遅延損害金は各月分を別々に計算します
概算の基本式は、次のとおりです。
| 計算するもの |
基本式 |
| 1か月分の遅延損害金 |
未払額 × 適用年率 × 遅延日数 ÷ 365日 |
仮に、ある月の未払額が5万円、適用年率が3%、遅延日数が30日であれば、概算は約123円です。
複数月の未払いがある場合、未払い総額へ同じ遅延日数をまとめて掛けると正確な計算になりません。古い月ほど遅延日数が長くなるため、次のような月別明細を作り、最後に合計します。
| 月分 |
未払元金 |
支払期日 |
計算基準日 |
遅延日数 |
適用年率 |
遅延損害金 |
| ○年○月分 |
円 |
年月日 |
年月日 |
日 |
% |
円 |
| ○年○月分 |
円 |
年月日 |
年月日 |
日 |
% |
円 |
端数処理やうるう年を含む期間の扱い、書面に独自の計算方法がある場合は、請求前に確認が必要です。
計算前に取り決めと入金記録をそろえます
遅延損害金を計算する前に、元金、支払期日、実際の入金日、利率を確認できる資料をそろえてください。
| 資料 |
確認する内容 |
| 公正証書・調停調書・審判書・離婚協議書 |
月額、支払日、支払期間、遅延損害金の定め |
| 通帳・取引明細 |
入金がなかった月、入金日、実際の入金額 |
| LINE・メール等 |
支払日の変更、猶予、分割払いに関する合意の有無 |
| 過去の請求書面 |
支払日を決めていない場合の請求日と到達日 |
一部だけ入金されている月は、取り決めた額と入金額の差を未払元金として分けます。相手と支払猶予や分割払いに合意した場合は、遅滞の開始日や請求額へ影響することがあるため、そのやり取りも残してください。
遅延損害金を請求するときは元金と計算内訳を分けます
相手へ請求するときは、「遅延損害金を支払ってください」だけではなく、未払い養育費と遅延損害金を分けて示します。
請求書面には、対象月、未払元金、各月の支払期日、適用利率、計算基準日、遅延損害金、合計額、支払期限を記載すると、金額の根拠を伝えやすくなります。
書面に遅延損害金の記載がない場合も手続は別に確認します
取り決めに遅延損害金の記載がなくても、金銭債務の支払いが遅れた場合の遅延損害金を請求できることがあります。ただし、現在持っている公正証書や調停調書などを使って、未払い養育費と遅延損害金をそのまま一緒に強制執行できるかは別の問題です。
手元の書面に強制執行認諾文言や遅延損害金の記載があるか、請求する期間と金額が特定できるかを見て、任意の請求、裁判所の手続、差押えのどれを使えるかを選びます。
遅延損害金にも消滅時効があります
遅延損害金も、いつまでも同じ条件で請求できるとは限りません。各月の養育費について権利を行使できる時期、取り決めや債務名義の種類、裁判上の請求や相手の承認などによって確認点が変わります。
「未払い養育費は各月の支払期日から5年」「債務名義があればすべて10年」とだけ判断せず、古い未払いから月ごとに整理してください。
時効の期間や起算点は、支払日の定め、債務名義の種類、相手へ請求した時期や相手が支払義務を認めた経緯などによって変わります。古い未払いがあり、時効が完成している可能性や期限が近い可能性があるときは、月別の明細と手元の書面を持って、早めに弁護士へ相談してください。
現在から取れる請求方法と、時効の完成猶予・更新に当たる手続があるかを個別に確認する必要があります。
遅延損害金は期日・利率・日数を分けて確かめます
養育費の支払いが遅れたときは、未払い元金に加えて遅延損害金を請求できることがあります。しかし、年3%を未払い総額へ一律に掛ければよいわけではありません。
まず、取り決め書面と入金記録から、各月の未払額、支払期日、実際の入金日、合意した利率の有無を整理してください。次に、各月分へ適用される利率と遅延日数を分けて計算します。
請求や強制執行へ進む場合は、未払い養育費と遅延損害金を分けた明細を用意し、手元の書面で利用できる手続を確認することが大切です。