養育費の支払日を過ぎても入金がないときは、未払いの養育費とは別に、遅れた日数に応じた遅延損害金を相手へ請求できます。取り決めに「遅延損害金を支払う」と書いていない場合でも、金銭の支払いが遅れたときは民法上の遅延損害金が発生します。
ただし、未払い額へ年3%を一度掛けるだけでは正しく計算できません。計算するときに重要なのは、次の3点です。
- ✓ 支払期限の翌日を、遅延日数の1日目とする
- ✓ 取り決めた年率または法定利率のうち、適用される年率を使う
- ✓ 複数月の未払いは、1か月分ずつ計算して最後に合計する
養育費の遅延損害金はいつから請求できる?
毎月末日や毎月25日など、支払期限が決まっている場合は、支払期限の翌日から遅延損害金を計算します。期限当日はまだ遅れていないため、日数には含めません。
たとえば、8月31日が支払期限で、9月30日を計算日とする場合、遅延日数は9月1日から9月30日までの30日です。9月10日に支払われた場合は、9月1日から9月10日までの10日分を計算します。
支払期限を決めていない場合は、相手へ支払いを請求し、その請求が届いた時から遅延損害金が発生します。いつ請求が届いたのか分かるように、LINEやメールの送信日と相手の返信、書面の配達日などを確認してください。
| 養育費の取り決め |
遅延損害金を計算し始める日 |
| 毎月の支払期限が決まっている |
支払期限の翌日 |
| 支払期限を決めていない |
相手に支払いを求め、その請求が届いた日 |
遅延損害金は何%で計算する?
公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書、養育費合意書に遅延損害金の年率が書かれている場合は、その年率と法定利率を比べます。
取り決めた年率が、遅延損害金の発生時点における法定利率を上回る場合は、取り決めた年率を使います。取り決めた年率が法定利率以下の場合や、年率を決めていない場合は、法定利率を使います。2026年4月1日から2029年3月31日までの法定利率は年3%です。
| 遅延損害金が発生し始めた時期 |
法定利率を使う場合 |
| 2020年3月31日まで |
年5% |
| 2020年4月1日から2029年3月31日まで |
年3% |
| 2029年4月1日以後 |
その時点の法定利率を確認 |
法定利率は3年ごとに見直されます。2029年4月以後に支払期限を迎える養育費は、その時点の法定利率を確認してください。
養育費の遅延損害金を計算する方法
1年未満の遅延損害金は、次の式で概算できます。
未払いの養育費 × 年率 × 遅延日数 ÷ 365日
この式に入れるのは、その月に支払われていない養育費、適用する年率、支払期限の翌日から数えた日数です。
うるう年に当たる期間は366日で日割りします。1年以上遅れている場合は、年単位の金額と1年に満たない期間の日割額を足し、最後に1円未満を切り捨てます。
5万円の養育費が30日遅れた場合
年率3%なら、次の計算になります。
50,000円 × 0.03 × 30日 ÷ 365日 = 123.28円
1円未満を切り捨てるため、遅延損害金は123円です。未払いの養育費と合わせて50,123円になります。
遅延損害金を自分で計算する
下のシミュレーターへ、1か月分の未払額、支払期限、支払日または計算日、年率を入力してください。支払期限の翌日からの日数と遅延損害金の概算が表示されます。
シミュレーターは1か月分ずつ使ってください。
複数月の未払いを合計して一度に入力してはいけません。 支払期限が異なる月まで同じ日数で計算され、金額がずれます。
複数月の未払いは月ごとに計算する
養育費は毎月支払うため、1月分と2月分では支払期限が違います。古い月ほど遅延日数が長くなるので、月ごとに次の項目を分けて計算し、最後に合計します。
- ✓ 何月分の養育費か
- ✓ その月の未払額はいくらか
- ✓ 支払期限はいつか
- ✓ 支払日または計算日はいつか
- ✓ 適用する年率は何%か
- ✓ 遅延日数は何日か
- ✓ その月分の遅延損害金はいくらか
たとえば、1月分と2月分が未払いなら、1月分を支払期限の翌日から計算し、2月分も別に支払期限の翌日から計算します。最後に2か月分の遅延損害金を足してください。
一部だけ支払われた場合は、何の支払いかを確認する
5万円のうち2万円だけ支払われた場合でも、2万円の全額を養育費の元金から差し引けるとは限りません。振込時の連絡や父母の合意で「○月分の養育費」と分かる場合は、その内容に従います。
何の支払いか決めておらず、養育費の元金と遅延損害金の合計に足りない場合は、民法上の充当の順序が問題になります。費用、遅延損害金、養育費の元金のどこへ、いくら充てるかを確認してから、残った元金の遅延損害金を計算してください。
2万円を養育費の元金へ充てることが明確な場合は、支払期限の翌日から2万円が支払われた日までを5万円で計算し、その翌日から残りの3万円で計算します。最後に2つの計算結果を足します。
相手と「支払日を延ばす」「分割で支払う」と合意した場合は、新しい支払期限が分かるLINE、メール、合意書なども確認してください。支払期限が変われば、遅延日数の数え方も変わります。
計算した遅延損害金を相手へ伝えるときの書き方
計算結果だけを示すのではなく、対象となる養育費、支払期限、計算日、年率、遅延日数、計算式を一緒に伝えると、金額の根拠が分かります。
複数月分を伝える場合は、月ごとの計算を並べ、最後に未払い養育費の合計、遅延損害金の合計、両方を足した請求額を記載してください。
遅延損害金の計算で間違いやすい点
未払い総額へ同じ遅延日数を掛けない
毎月の支払期限は異なります。複数月分をまとめて計算せず、各月の支払期限の翌日から別々に計算してください。
年3%を掛けただけでは1年分になる
「未払い額 × 3%」は1年間の遅延損害金です。30日、60日など1年未満の遅れは、さらに遅延日数を掛けて365日または366日で割ります。
支払期限当日は遅延日数に入れない
支払期限の翌日が1日目です。実際に支払われた日は遅延日数へ含めます。
古い未払いもすべて年3%とは限らない
年率を決めていない場合、2020年3月31日までに遅延損害金が発生し始めた分は年5%です。遅れ始めた時期が異なる月は、年率も月ごとに確認してください。
計算前に確認する資料
正しい金額を出すには、次の資料から支払期限、入金日、年率を確認します。
- ✓ 公正証書、調停調書、審判書、離婚協議書、養育費合意書
- ✓ 通帳やネットバンキングの入出金明細
- ✓ 支払日の変更や分割払いについて話したLINE・メール
- ✓ 一部入金があった日と金額が分かる記録
書面に「1年を365日として日割りする」など独自の計算方法が書かれている場合は、その記載を優先して計算してください。
養育費の遅延損害金は月ごとの支払期限から計算します
支払期限の翌日から支払日または計算日までを数え、未払いの養育費、年率、遅延日数を使って月ごとに計算します。
1か月分が5万円、年率3%、遅延日数30日なら、遅延損害金は123円です。複数月の未払い、一部入金、年率が変わる時期を含む場合は、一つの金額へまとめず、期間を分けて計算してください。