「養育費を請求したいんです。でも、相手が怖くて…。もう何年も動けずにいます。」
DV(暴力)やモラハラ(精神的な支配)を受けた経験があると、養育費の請求によって相手との接点が生じることに不安を感じる場合があります。その不安を前提に、安全を優先した進め方を検討する必要があります。
「怖い」の中身は、人によって違う
「怖い」と一言で言っても、その中身は一人ひとり違います。不安として考えられるものには、次のようなものがあります。
- 「連絡したら、また怒鳴られるのではないか」
- 「今の住所を知られたら、押しかけてくるのではないか」
- 「子どもに何かされるのではないか」
- 「職場に来られたらどうしよう」
- 「養育費を請求したら、逆に訴えると言われるのではないか」
- 「また支配される関係に戻ってしまうのではないか」
過去の経験から、連絡や接触に強い不安を感じることがあります。自分を責めている場合でも、まずは安全を優先し、対応方法を整理してください。
相手と直接やり取りせずに養育費を請求する方法
弁護士が代理人になれば、相手への連絡や交渉を弁護士に任せ、直接のやり取りを避けて進められる場合があります。必要な対応は事案により異なるため、希望する接触範囲も含めて事前に確認します。
具体的にどこまで弁護士が代わりにやるのか、整理します。
| あなたが心配していること |
実際にどうなるか |
| 相手に連絡を取らないといけない? |
原則として弁護士が窓口となり、直接の連絡を避けて進めます |
| 相手に今の住所を知られる? |
書類上の住所の扱いを弁護士や裁判所へ事前に確認します |
| 調停で相手と顔を合わせる? |
裁判所に相談し、別室対応や時間差入退室を検討してもらいます |
| 相手が逆上して何かしてくる? |
必要に応じて保護命令や警察への相談を検討します |
| 相手から逆に訴えると言われた |
発言の内容を記録し、対応方法を弁護士へ確認します |
安全を守るための制度
「怖い」と感じている方のために、法律にはいくつかの安全を守る仕組みがあります。
保護命令
裁判所が相手に対して「近づくな」「連絡するな」と命じる制度です。違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事罰の対象になります。
身体的な暴力だけでなく、生命・身体に対する脅迫でも申立てが可能です。2024年の法改正により、精神的な暴力(モラハラ)も保護命令の対象に拡大されました。
保護命令には以下の種類があります。
| 種類 |
内容 |
| 接近禁止命令 |
相手があなたに近づくことを禁止(6か月間) |
| 退去命令 |
相手に自宅からの退去を命じる(2か月間) |
| 電話等禁止命令 |
電話・メール・SNS等での連絡を禁止 |
| 子への接近禁止命令 |
相手がお子さまに近づくことを禁止 |
住民票の閲覧制限
市区町村の窓口で「DV等支援措置」を申し出て、支援の必要性が確認された場合には、住民票や戸籍の附票の交付を制限する措置を受けられることがあります。
手続きには、配偶者暴力相談支援センターや警察への相談実績が必要ですが、弁護士が手続きをサポートすることもできます。
弁護士が全ての窓口になる
弁護士が代理人になれば、相手との連絡窓口を弁護士にまとめられる場合があります。連絡方法や個人情報の扱いは、依頼時に確認します。
調停で安全に配慮してもらうために
DV被害がある場合、裁判所に事情を伝えることで、別室待機や時間差入退室などの配慮が検討されることがあります。運用は裁判所や事案により異なるため、申立て前に確認が必要です。
- 相手とは別室で待機し、顔を合わせない
- 入退室の時間をずらす
- 調停委員が交互に話を聞く(同席しない)
- 住所や勤務先などの個人情報を相手に伝えない
調停の申立てや期日への対応を弁護士へ依頼できる場合もあります。出席方法や必要な対応は、裁判所と弁護士へ事前に確認します。
あなたの状況に近いものはありますか?
離婚から何年も経っている
離婚してから何年も経っている場合でも、養育費の取り決めがなければ、今から請求を始めることができます。「もう遅い」ということはありません。
弁護士が代理人になれば、あなたが相手に連絡する必要はありません。全てのやり取りを弁護士が行い、調停で養育費の金額を決めることができます。
子どもへの影響が心配
「養育費を請求したら、相手が子どもに何か言うのではないか」という心配はよくあります。
調停では、面会交流のルールも含めて取り決めることができます。「子どもの前で養育費のことを話さない」という条件を盛り込むことも可能です。お子さまへの影響を最小限にしながら、養育費を受け取る方法はあります。
住所を知られたくない
引っ越して新しい生活を始めている場合、「住所を知られたら終わりだ」という恐怖があると思います。
弁護士が代理人になれば、書類の連絡先は全て弁護士事務所の住所になります。住民票の閲覧制限と合わせれば、相手に現住所を知られることなく、養育費の請求から差押えまで進めることができます。
動けなかったのは、あなたのせいではありません
何年も動けずにいると、「もっと早く動けばよかった」と後悔するかもしれません。
でも、「動けなかった」のは、あなたが弱いからではありません。それだけのことをされてきたからです。
今、この文章を読んでいるということは、少しだけ気持ちが動いているということだと思います。
その「少しだけ」で十分です。
LINEで「DV被害があって、養育費のことで相談したい」と一言だけ送ってください。それだけで大丈夫です。そこから先は、一緒に考えていきます。あなたの安全を最優先に、進め方を一緒に考えていきます。